一体なんて騒動に巻き込まれちまったんだ(前編)
「待てっ!」
ハジメは手を伸ばしたが、ゴエモンはすでにヴォルペ家の館に向かって猛スピードで突進していた。
ゴエモンは走り抜けざまに一本の刀を抜き放ち、一撃で館の堅牢な門を粉砕した。そしてそのまま、もう一方の手に握った二本目の刀も鞘から引き抜く。
『特殊武器:無尽』
『特殊武器:極炎刃』
ハジメはゴエモンの様子を窺うために少し近づきかけたが、すぐに事の重大さを悟り、きびすを返して全力で逃げ出した。
(くそっ! 誰にもあいつと一緒にいたところを見られてませんように!)
ハジメは極度の焦燥感の中でそう祈った。
「おい! 待て!」
そこへ一人の衛兵が立ち塞がった。革の鎧を身にまとい、街のシンボルカラーと紋章があしらわれた服を着ている。その手にある盾には、帝国の国章が刻まれていた。
「どこへ行くつもりだ、泥棒め!」
「ど、泥棒!? 俺は何もしてないぞ!」
ハジメは衛兵に向かって必死に弁解した。
「行くぜ、相棒!」
いつの間にか二本の刀を鞘に収めていたゴエモンが、左手でハジメの右腕をガシッと掴み上げた。彼の右脇には、すでにワインの入った木箱がしっかりと抱えられている。
そのままゴエモンは、ハジメを引きずるようにして猛ダッシュを始めた。
「泥棒を捕らえろ!」
衛兵が指を差して叫ぶと、周囲からさらに多くの衛兵たちがわらわらと湧いて出た。
彼らは弓から矢を放ち、クロスボウ(石弓)からボルト(太矢)を次々と撃ち放ってくる。
だが、ゴエモンはいとも容易くそれを回避していく。
彼はさらに速度を上げ、前方から次々と現れる衛兵たちの斬撃や飛び道具を、信じられない身のこなしで次々と躱していった。ワイン箱とハジメを抱えた状態のまま、アクロバティックな動きで攻撃の雨をすり抜けていく。
「次から次へと湧いて出やがって、クソッ!」
「おい、降ろしてくれ! 俺は全く関係ないだろ!!」
ゴエモンに引きずられながら、ハジメは必死にジタバタと暴れた。
すると、ゴエモンがピタッと足を止めた。
「ああ、なるほど! そういうことか、我が友ハジマックス!」
「分かってくれたか!」
「お前も戦いたいんだな?」
「そう、いや違う!!」
ハジメは思わず肯定しそうになり、慌てて全力で否定した。
「最高だぜ!」
ゴエモンはハジメの言葉など全く耳に入れず、再び二本の刀を抜き放った。
衛兵たちが彼らをぐるりと取り囲み、包囲網を形成した。一斉に矢とボルトが射出される。ハジメは必死に身を捩ってそれらを躱し、ゴエモンも余裕で回避しながら衛兵たちに接近すると、その刃で次々と斬り伏せ始めた。
そして――
「——『極炎刃』」
ゴエモンが自らの刃の名を口にした。
右手に握られた、空のように青い柄と鞘を持つその刀が、眩い『青い炎』を纏い始める。
ゴエモンが横薙ぎの一閃を放つと、青い炎が爆発的に広がり、斬られた衛兵たちは赤いポリゴンのデータとなって血を散らしながら次々と倒れていった。
「マジかよ……これで俺のプレイヤーとしての評判はガタ落ちだ……」
ハジメは頭を抱えて絶望した。もし彼のアバター(キャラクターモデル)に発汗機能が実装されていたなら、今頃は滝のように冷や汗を流していただろう。
まだ今日中に第2部を投稿する予定です。
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