煌めく半月の刃
その巨体に似合わず、オークの動きは驚異的に速かった。両手で構えた巨大なチェーンソーを真上から振り下ろす。ハジメはそれを右へと躱すが、オークはすぐさま右への薙ぎ払いに軌道を変えた。
ハジメは後方へバク宙をして刃をやり過ごすと、着地と同時に身を反転させ、オークの脚に浅い斬り傷を負わせた。
さらに二太刀、三太刀と素早い連撃を浴びせてから身を低くする。オークが地面を砕くほどの強烈な踏みつけ(ストンプ)を放つが、ハジメはその股下をスライディングで抜けながら、同時に斬撃を見舞って回避した。
オークが振り返りざまに水平斬りを放つ。ハジメは跳躍してオークの太い腕を蹴って駆け上がり、顔面めがけて太刀を突き出した。
「ウォオオオオオッ!!」
刃がオークの片目を貫き、ボスは怒りと激痛に咆哮した。
オークは『激怒』状態に突入した。筋肉がさらに膨張し、威圧感が増す。チェーンソーを右腕一本で軽々と振り回し、左腕は防御や殴打に使い始めた。
巨大な左拳が突き出される。ハジメは左へ躱そうとしたが、オークはそれを読んでおり、右のチェーンソーで横薙ぎの追撃を放ってきた。
ハジメは前方へ前方宙返り(フロントフリップ)をしてチェーンソーを回避しつつ、空中で強烈な蹴りを放ち、チェーンソーを持つオークの右手を前方へ弾き飛ばした。その勢いで、オーク自身のチェーンソーの刃が、オークの左腕と胸を浅く切り裂く!
「ウォルルラァァァァッ!!」
オークが憎悪に満ちた叫びを上げる。
「そいつはアンタの武器だろ、お返しするぜ相棒!」
(スタミナとHPは『体力』のステータスに依存している。ここで初めて、俺のスタミナゲージが目に見えて減ったぞ……!)
ハジメは猛攻を躱しながら、内心でシステムを分析していた。
(なるほど、スタミナは通常の攻撃では減らず、強力なアクションやスキルの使用でのみ激しく消費される仕様か! HPと違ってゆっくり自動回復する。これまで魔法も使ってなかったから、ゲージが減ることはなかったんだ)
ハジメは激昂するオークを見据えながら、夕闇が迫る空を見上げてニヤリと笑った。
彼は太刀を鞘に納め、居合の構えをとる。
オークが右手一本でチェーンソーを真っ向から振り下ろしてくる。
ハジメは精神を研ぎ澄ませた。彼のスタミナゲージが急激に減少し、ほぼゼロになる。
――閃刃。
次の瞬間、ボスの太い右腕が宙を舞っていた。
ハジメの速く、そして完璧に洗練された一閃が、オークの腕を根元から切断したのだ。手首とチェーンソーが重い音を立てて地面に落ちる。
ハジメは笑みを浮かべながらゆっくりと太刀を鞘に納め、空を指差した。
「今日は『半月』の夜だ。そして、お前は『半腕』のボスってわけだ!」
夜空に半月が昇り、【鋭利なる半月の太刀】の武器ボーナスが起動した。
刃が青白い光を帯びる中、ハジメは真のフィニッシュブローへ向けて一気に踏み込んだ。




