EpisodeⅪ「敵襲」
『ROBOT・WORKS』が拠点としている森『カイナの深森』前には大量の兵士や冒険者が集まってテントを張っていた。
その奥の一番大きなテントの中でこの集団の指揮を執っているザナックは椅子に座り、不機嫌な顔をしていた。
「全く…シリカも父上も臆病なのだ…。たった6人と幾つかのゴーレムくらい俺が蹴散らしてやる」
「全くです。今後この国はザナック王子が背負うべきだと私は考えます」
悪態を吐くザナックの横で手もみをしているちょび髭の如何にも悪そうな顔の男『マリネット・アーカインド』はそう言いながら地図を広げた。
「情報によりますと、ここから6時間ほど歩いた先に奴らの拠点があるとか。敵の戦力は人種が6人と小さなゴーレムが複数、そして一際大きなゴーレムが6となっております。しかし、大きい方のゴーレムは稼働を確認しておらず、稼働準備なる事をしていた。という事で戦力には数えなくてよいでしょうな。それと、見た事もない道具を所持しているという事でしたな」
それを聞いてザナックは鼻で笑った。
そして、立ち上がり不敵に笑う。
「物の数ではないな。こちらの兵は500。買ったも同然だな」
この兵はザナックの持っている私兵でも国の軍でもない。
彼らはザナックを「この戦いで勝利し、彼らを配下に加える事が出来たら王になれる」と唆した貴族の私兵と金に目が眩んだ冒険者達だった。
貴族は馬鹿なザナックを王にし、傀儡とすることで自分たちが国を好き勝手出来ると考えていた。
今ある兵は所詮寄せ集めだが、それでも負ける気はしていなかった。
何せ多く見積もっても戦力の差は5倍ほど違う。
この戦力差で負ける事など今のザナックには想像できなかった。
「それにしても……」
そう言いながらザナックは苦虫を噛んだような表情をした。
それは、この森近くの街『カンザス』での事。
ザナックは街に着き、領主にこの戦いに協力するように言ったが、領主は頑なに協力を拒否した。
それは王女であるシリカが領主に『ROBOT・WORKS』には手を出さないようにと言われていたからだ。
ザナックよりもシリカの言葉を優先した領主に怒りを覚えているザナックはこの戦いが終わって、自分が王になった暁にはこの街をめちゃくちゃにしてやろうと考えていた。
お陰で食料の補給はできなかったが、街の店で王子と言う事を言いふらして安い値段で買いたたいた事で食糧事情は解消されている。
それでも、食料は有限だ。
よって早めに決着を付けるべきだとザナックは考えていた。
「よし!明日、明朝に進軍を開始する!準備させろ!」
「仰せのままに…」
***
日が昇り、皆が起き始める少し前に突如としてガレージ全体に警報が鳴り響いた。
俺は飛び起きて、すぐに会議室へと向かう。
皆も同じように急いで会議室に向かっていた。
「なんだ!?」
会議室に行きながらKEIさんが聞いてきた。
「分かりません。俺も警報が鳴って飛び起きたので…」
そうだ。
今回は俺の持っているタブレットに何の連絡も入ってこなかった。
突然の警報。
この施設にはガチの緊急事態(災害などの発生や俺達の生命の危機が近づいている時)には俺への連絡をせずにロボット自身で警報を鳴らせる事ができる。
「て事は…」
「はい。ガチな奴です」
急いで会議室に向かうとロボット達が忙しなく、動き回っていた。
モニターには鎧を着た騎士風の奴らや軽い服装で剣を持った集団が歩いている映像が流れていた。
その映像を見ていると、武神さんたちも会議室に入ってくる。
そして、席に座り状況の確認を始める。
俺はロボットから資料を受け取ると目を見開いた。
資料には所属不明の集団が此方に接近中とあった。
その数、500。
「これは…進軍されているってことか?」
SHUTさんがモニターに映っている映像を見てそう言う。
この映像は森の中に設置した監視カメラから送られてくる物で、監視カメラはここから徒歩で4時間ほどの距離に等間隔で置いている。
「それにしてもものすごい数だな…」
「数は500です」
俺がそう言うと皆は驚愕の表情をする。
それもそうだ。500というのはとても多い数だ。
俺達は6人。
ロボットを入れても100ちょっとだろう。
戦力差は5倍で、普通なら勝てるはずがない。
だが……。
「何とかなるんじゃね?」
そう言ったのは武神さんだった。
「俺達は今まで10倍近い数の相手とやってきたんだ。それに比べれば微々たるさじゃねえか」
確かにそうだが、ロボット達を抜くとこちらは6人。
いつも全力差よりも10倍違うんですが。
「それもそうだな。こっちにはカメという大元帥がいるし…」
KEIさんの言葉に皆がうんうんと頷く。
ほんと勘弁してください。
そう思っても、現状は変わらない。
俺は心の中で大きな溜息を吐いて、頭を切り替える。
「うだうだ言っていても仕方ないですね。では…防衛作戦を開始します」
俺がそう言うと皆一斉に「了解!」と言った。
さて、戦争を始めよう…。
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