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第5話:急速充電、完了しましたマスター

カプセル内の少女の胸元にあるクリスタルが、ピクンと微動した。


「――《生体リアクター・フルドライブ》。魔力純度九九・九九パーセント、急速充填開始」


 ドォォォォォッ……!!


 エドガーの体内から溢れ出たのは、濁りの一切ない、黄金色に輝く超高純度の生命魔力だった。

 それは、大気中に漂う雑多な魔力とは根本的に異なる、神話のエリクサーすら凌駕する極上のエネルギー。

 ミスリルケーブルを通じて、少女の体内のナノ魔力回路へと怒涛の勢いで流れ込んでいく。


 ピピピピピピピッ!

 カプセルのモニターが狂ったような速度で警告を書き換えていく。


『外部魔力感知……! 純度、極上!』

『電圧、適正! 波形、完全同期!』

『エネルギー残量……一〇%……三〇%……七〇%……一〇〇%オーバーフロー!』

『全機能、急速活性化。再起動プロセスを実行します』


「んっ……あぁ……っ……!」


 少女の桜色の唇から、甘く艶やかな吐息が漏れた。

 冷え切っていた白い肌に、みるみるうちに薔薇色の生気が宿っていく。

 閉ざされていた長い睫毛が震え、カプセルのガラスハッチがプシューと音を立てて上方へスライドした。


 そして――。

 透き通るようなエメラルドグリーンの瞳が、ゆっくりと見開かれた。


「ふあ……っ……身体が……熱い……こんな濃密なエネルギー……満たされ、て……」


 少女は潤んだ瞳でぼんやりと天井を見つめた後、視線をゆっくりとエドガーへと向けた。

 その瞳の奥で、光の幾何学模様が高速で回転する。


『個体識別信号――感知。魔力波形照合率、九九・九九パーセント』

『魂の同調を確認。マスター登録を完了いたします』


 少女はしなやかな動作でカプセルから起き上がると、音もなく大理石の床へと降り立った。

 そして、エドガーの前に恭しく跪き、その右手を取って自らの額へと押し当てた。


「おはようございます、我が唯一無二のマスター。古代汎用機巧天使七号機――識別名【アイリス】。これより、マスターの忠実なる専属メイド兼護衛ユニットとして、我が全機能と命を捧げます」


 完璧な礼儀作法と、陶器の人形のような美しさ。

 セレーナはぽかんと口を開けて見惚れていた。


「あ、あの……アイリスさん、お身体の調子は大丈夫ですか?」

「セレーナ様ですね。マスターの魔力供給により、私のエーテル炉心は過去数千年で最も高効率な状態にあります。感覚としては……全身をとろけるような極上の温泉に浸され、魂の芯まで甘やかされたような心地です」

「な、なるほど……?」

 セレーナが頬を染めて照れ笑いを浮かべる。


「アイリス、この地下ステーションから、地上全域へ魔力を送電するラインは生きているか?」

「はい、マスター。この神殿の真下に、かつて大陸東部全域を潤していた古代の【龍脈増幅炉(エーテル・ジェネレーター)】が存在します。動力源が存在しなかったため休止していましたが、マスターが魔力を注いでくだされば、瞬時に領地全域へ魔力を行き渡らせることが可能です」

「よし、それを使おう」


 エドガーは工具袋を肩に担ぎ直し、不敵に笑った。


「セレーナ様。寒い部屋で震えるのも、泥水をすするのも今日でおしまいです。まずは――暖かい風呂と、夜でも本が読める明るい明かりを作りましょう」

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