第47話:星を繋ぐ大送電――主電源(マスター)、全開出力!
アガルタの最深部、直径百メートルを超える巨大な空洞。
そこに鎮座していたのは、かつて神代の巨人が造り上げた超巨大重力制御機関――【古代浮遊炉心】だった。
だが、コイルは真っ赤に焼き切れ、重力反発フィールドの出力計はゼロを指している。
島の落下速度は、すでに時速四百キロメートルを突破。
地上の山々が、雲の下から巨大な牙のように迫ってきていた。地表激突まで、あと九十秒。
「マスター、激突限界高度まで、残余千五百メートル」
アイリスの警告音が鳴り響く。
「よし、スターゲイザー号から牽引してきた軌道テザーケーブルを炉心へ直結しろ!」
「接続完了! 地上シルフィアの全発電グリッド、スタンバイ!」
太さ一メートルの純白のミスリル超伝導ケーブルが、炉心のメインコネクタへとガチリとロックされた。
地上十キロメートル下にあるシルフィアの地下龍脈炉と、天空都市の心臓が、一本の線で結ばれたのだ。
エドガーは作業着の袖を破り捨て、両手を剥き出しの炉心コンデンサへと叩きつけた。
「――《生体リアクター・アンリミテッド・ギガドライブ》!!」
ドッバァァァァァァァァァァァンッ!!
エドガーの全身から放たれたのは、黄金と太陽の閃光を合わせたような、神話の創世光だった。
地上全域の龍脈エネルギーが、エドガーの体内を通過することで完璧な周波数の重力反発パルスへと変換され、天空炉心へと津波のように雪崩れ込む。
「エドガー……わたくしの世界樹の全生命力を注ぎ込みますわ〜!」
フロリアが世界樹の杖を掲げ、新緑の光をエドガーの背中へ注ぐ。
「エドガーさん! シルフィアのすべての民の祈りを、大地を通じてあなたへ!」
セレーナが大公の剣を床へと突き立てる。
「エドガー様! 海の底からも、ルルイエの全水流エネルギーを送ります!」
コーラリアが祈りを捧げる。
「エドガー様……我がアガルタの太陽よ……!」
フィリアが四枚の翼を広げ、聖なる魔力を解き放つ。
大地、深海、天空の三界の乙女たちの魔力が、エドガーという唯一無二の主電源のもとに完全融合した。
キィィィィィィィィィィィンッ!!
島全体を包み込んだのは、目も眩むような黄金の反重力フィールドだった。
ズズズズズズズズズッ……キュキュキュキュキュッ!!
地表わずか百メートルの超低空で――。
巨大な浮遊大陸アガルタは、猛烈な大気圧の衝撃波を大地へと叩きつけながら、ピタリと、完全に停止した。
地上のシルフィアの街並みが、手の届くような至近距離に見えている。
そして――。
ゴオオオオオオオオオッ!
エドガーの生体リアクターの推進力により、アガルタは再び天へと向かって滑らかに上昇を開始した。
五千メートル、八千メートル、そして――元の安定静止高度、一万メートルへ。
ポカポカポカ……ッ!
島全体を覆っていた極寒の風が、春の陽だまりのような暖かな大気へと切り替わった。
換気フィルターが蘇り、澄み切った高濃度の酸素が神殿を満たす。
息苦しさに喘いでいた有翼族の市民たちが、一斉に胸いっぱいに甘く清澄な空気を吸い込み、涙を流して空を見上げた。
「息ができる……! 身体が、暖かい……!」
「太陽が……本当の太陽の光が戻ったぞ!」
地下から地上へ戻ってきたエドガーの前に、何千人もの有翼族の民が、老若男女問わず一斉に平伏した。
その最前列で、フィリアが涙ぐみながらエドガーの手を取り、自らの胸へと強く抱きしめた。
「エドガー様……! あなた様こそ、空を、海を、大地を救いし、真の星の主電源様です……!」




