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第43話:天使の翼を急速充電、羽毛の先まで蕩けました

「あ……ぁぁぁぁ……っ! 熱い……っ、翼の芯まで……灼けちゃう……っ!」


 少女の四枚の翼が、バサリと大きく見開かれた。

 エドガーの手のひらから注ぎ込まれる黄金の魔力奔流は、少女のボロボロだった翼の血管を瞬時に駆け巡り、炭のように黒ずんでいた羽毛の先端を、目にも鮮やかな純白の輝きへと塗り替えていく。


 シュララララララララッ……!


 まるで早回しの植物の成長のように、抜け落ちていた羽毛が猛烈な勢いで再生していく。

 一枚一枚の羽がダイヤモンドダストのような光の粉を撒き散らし、神々しいまでの神聖な光彩を帯びていく。

 そして――。


「ふあぁ……っ……なに、これぇ……っ! 頭が……ぽわぽわして……蕩けちゃいそう……っ!」


 少女の瞳がとろんと潤み、白い肌が桜色に染まり上がっていく。

 エドガーの規格外の超純度魔力は、数千年間飢餓状態にあった有翼族の細胞にとって、極上の美酒と甘い蜜を一度に流し込まれたような衝撃だった。

 羽毛の一本一本が快楽にピクピクと震え、少女は涎を垂らしそうなほど恍惚とした表情で、エドガーの腕の中にぐったりと身を預けた。


「ふぅ……これで心拍数も体温も正常値だな。羽毛の再生も完了した」

 エドガーが指を離し、額の汗を拭う。


「マスター。急速充電完了に伴い、対象の覚醒を確認いたしました」

 アイリスの報告と同時に、少女の大きな金色の瞳が、ぱちりと開かれた。

 目の前にいるエドガーの顔を至近距離で見つめた瞬間、少女は顔から火が出るほど真っ赤になり、バタバタと四枚の翼を慌ただしく羽ばたかせた。


「ひゃぅぅぅっ!? あ、あなた様は……ど、どなた様ですか!? 私、死んで天界の御神座に召されたのでしょうか……!?」

「死んでないよ。ここは地上のシルフィア領だ。君が空から落ちてきたんだよ」


「ち、地上……!? そ、そんな……地上は泥と瘴気にまみれた地獄だと教わっていたのに……こんなに美しい果樹園で、しかもこんなに温かい魔力で私を救ってくださるなんて……!」


 少女はベンチから滑り落ちると、純白の翼を畳み、エドガーの足元に恭しく両膝をついて額づいた。


「お救いいただき、心より感謝申し上げます、大御神様……! 私は天空回廊アガルタの筆頭巫女姫――フィリアと申します!」


「大御神じゃないよ。俺はエドガー、ただの技術者だ」

「技術者様……!? 信じられません……我が国の神官長様ですら、こんな奇跡の魔力を放つことはできませんのに……!」

 フィリアは潤んだ瞳でエドガーの手を取り、頬をすりすりと擦り寄せた。

「エドガー様……どうか、我がアガルタをお救いください! 天空都市を浮遊させている【古代浮遊炉心(アエロ・リアクター)】の魔力が完全に底をつき、アガルタは徐々に高度を下げております……! あと二週間もすれば、大陸へ激突して木っ端微塵に砕け散ってしまいます……!」


「高度低下による地上激突……なるほど、そういうことか」

 エドガーは顎に手を当てて納得した。

「どうりで、最近上空の浮遊大陸の影が大きく見えていたわけだ」


「エドガーさん、どうなさいますか?」

 セレーナが真剣な面持ちで尋ねる。


「決まっているでしょう」

 エドガーは作業着の胸ポケットからレンチを取り出し、ニヤリと笑った。


「落ちてくるなら、こっちから迎えに行くだけです。――昇降カプセルの試運転、前倒しでいくぞ」

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