第38話:超キャビテーション魚雷、海賊船団を一掃す
「おいおい、鉄のクジラめ、びびって逃げも隠れもしねえぞ!」
旗艦タイラント号の甲板で、バルバロッサが嘲笑いながら葉巻の煙を吐き捨てた。
「とどめの大型魔導魚雷をぶち込んでやれ! あの鉄の棺桶ごと海の底へ――」
その瞬間だった。
シュバババババババッ……!!
海中から、常識外れの甲高い金属音が響き渡った。
ノーチラス号の魚雷発射管から放たれたのは、先端から微小な気泡を噴出させ、水の摩擦抵抗を完全にゼロにした――【超キャビテーション魚雷】。
通常の魚雷の十倍、時速八百キロメートルという超音速に近いスピードで、水面を純白の軌跡で切り裂いていく。
「な……なんだあの白い筋は!? 速すぎ――」
パァァァァァァンッ!!
爆発音ではない。
澄み切った高周波の共振破壊音が、海面一帯に響き渡った。
魚雷は海賊船の船底には一切触れず、船尾の「舵」と「スクリュー」の直近で起爆。超精密な衝撃波パルスによって、百二十隻の海賊船の推進装置(舵とスクリュー)だけを、まるで彫刻刀で削り取るように綺麗に切断したのだ。
カラン、コロン……。
折れた鉄の舵とプロペラが、海底へと虚しく沈んでいく。
「……え?」
バルバロッサが目を丸くした。
「ほ、報告! 全艦、操舵不能! エンジンが空回りして前に進みません!」
「風下へ流されています! 帆を張ろうにも、風が止まって……!」
「な、なんだとぉぉぉっ!? 船体には穴一つ空いてねえのに、なんで船が動かねえんだ!?」
百二十隻の大船団が、一瞬にして海上をぷかぷかと漂うだけの「ただの巨大な浮き輪」と化していた。
そこへ――。
ザバァァァァァァッ!!
海賊船団の中央を割って、ノーチラス号の漆黒の巨体が堂々と浮上した。
上部ハッチが開き、作業着姿のエドガーが、メガホンを手にして甲板へと姿を現した。
「外海海賊同盟の皆さん、こんにちは。航路交通法違反および不法投棄の罪で、全員現行犯逮捕です」
「な、なにぃぃぃっ!? ガキが一匹で何を抜かすか! 野郎ども、弓と魔法で蜂の巣にして――」
「アイリス、威嚇スタン照射」
「了解、マスター」
バチチチチチチッ!!
ノーチラス号のアンテナから放たれた指向性電磁波が、海賊たちの武器をピンポイントで加熱した。
「アチチチチッ!? 剣が焼けて持てねえ!?」
「弓が燃えたぁぁぁっ!」
武器を取り落とし、甲板で転げ回る海賊たち。
エドガーはため息をひとつ吐いて告げた。
「あなた方には、これからシルフィア連邦の海底インフラ工事の土木作業員として、たっぷり汗を流していただきます。有給休暇はありませんが、三食温かいご飯と温泉は保証しますよ」
「ひ、ひぃぃぃぃっ! た、助けてくれぇぇぇっ!」
かつて外海を恐怖に陥れた大海賊たちは、指先ひとつ触れられることなく、全員あっけなく「更生労働部隊」として捕獲されたのだった。




