第37話:傲慢なる海賊連合の包囲網
海底都市と大陸の通信・送電ラインが開通し、ノーチラス号がシルフィアへの帰路につくため浮上を開始した、その時だった。
水深五十メートル。海面が近づいてきた頃、ソナーに無数の人工物の金属反応が捉えられた。
ピピピピピピッ!
「マスター、海面上に大規模な船団反応を探知。数、約百二十隻」
アイリスの冷徹な声が響く。
「船体構造より識別――外海海域を牛耳る武装犯罪組織【外海海賊ギルド同盟】、およびその旗艦『タイラント号』です」
「海賊か……」
エドガーが潜望鏡のモニターに目をやると、海上には黒い帆を掲げた重装甲ガレオン船が、ノーチラス号の浮上地点を取り囲むように包囲陣を敷いていた。
「ヒャッハハハ! 見ろよ野郎ども! 噂の黒い鉄のクジラが浮いてきやがったぜ!」
旗艦の甲板で、巨大な魔導バズーカを肩に担ぎ、下品な哄笑を上げていたのは、海賊同盟の頭領――『黒髭のバルバロッサ』だった。
帝国の崩壊に乗じて外海の交易路を荒らし回り、略奪の限りを尽くしてきた凶悪犯だ。
「あの奇妙な鉄の船、帝国の残党貴族どもに売り飛ばせば金貨数十万枚にはなるぞ! 水深が浅いうちに魔導爆雷をぶち込め! 沈めてから引き揚げてやるぜ!」
ドォン! ドォン! ドォン!
海賊船団から、大量の魔導機雷と爆雷が海中へと投下された。
水中で派手な爆発が起き、衝撃波がノーチラス号の船体を揺らす。
「ひぃっ……! エドガー様、海賊たちですわ!」
アステリアがサロンで悲鳴をあげる。
「あの者たちは外海の航路を不法占拠し、逆らう船をことごとく海の藻屑にしてきた冷酷な悪党たちです!」
「なるほど。海の暴走族ですね」
エドガーはマグカップを置き、のんびりと立ち上がった。
「せっかく敷いた海底ケーブルを傷つけられたら困るし、何より航海の自由を妨害する違法駐車(不法占拠)は見過ごせませんね」
「親方、ドカンと主砲で吹き飛ばしちまうかい!?」
バガンが拳を鳴らす。
「いえ、バガンさん。海をゴミだらけにする必要はありません。船体は無傷で鹵獲して、連邦の貨物船として再利用しましょう。――アイリス」
「了解、マスター。新兵器【超キャビテーション音響衝撃魚雷】の装填を完了しております」




