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第28話:帝国の終焉と新時代の夜明け

帝都地下炉心の暴走鎮圧と、全土送電の完全復旧から三日が経過した。

 帝都の中央皇宮大広間には、歴史の転換点に立ち会うため、数千人の市民代表、各都市の自治領主、そして諸外国の特使たちが隙間なく詰めかけていた。

 かつて薄暗く煤けていた大広間は、エドガーの設計した高効率ミスリルシャンデリアによって太陽のように明るく照らされ、温風循環システムが心地よい春のぬくもりを届けている。


 大広間の正面壇上に立ったのは、銀髪を靡かせたアステリア皇女だった。

 その隣には、病気療養のため正式に退位を表明した老皇帝が、憑き物が落ちたような穏やかな表情で座している。


「これより、帝国最後の勅令を布告いたします」


 アステリアの凛とした澄んだ声が、エドガーの設計した全方位音響システムによって、静まり返った広間の隅々にまで染み渡る。


「専制帝国ルミナスは本日をもって統治権を返上し、完全なる解体を宣言いたします。今後、我が国はエドガー技師長、ならびにセレーナ大公が率いる【新星魔導国家シルフィア】との全面合邦を受け入れ、平和と英知の共生圏――【シルフィア自由連邦】へと合流いたします!」


 ウォォォォォォォォォッ!!

 地鳴りのような嵐の歓声と拍手が広間を揺るがした。

 市民たちの瞳には、圧政と飢えから解放された歓喜の涙が光っていた。


 一方――。

 エドガーを陥れ、私利私欲のために国家を破滅の淵へ追い込んだ元凶たちには、容赦のない法と正義の鉄槌が下された。


「元宮廷魔導士団長ギルバート、ならびに元聖女エレナ、前宮廷魔導士長アルマン!」

 最高裁判長官の冷徹な宣告が響き渡る。

「貴様らの国家反逆、職務放棄、重大インフラ破壊扇動、ならびに横領の罪状は明白である! 全財産の没収、ならびに北の極寒氷結鉱山における【生涯無期限強制労働刑】に処す!」


「ひ、ヒィィィィッ! お許しを! 俺は勇者なんです! エドガー! エドガー助けてくれぇぇぇっ! 俺とお前は親友だっただろぉぉっ!」

「嫌よ! 私が鉱山で泥まみれになって石を掘るなんて嫌ぁぁぁっ! エドガー様、私を愛人にしてぇぇぇっ! あなたの身の回りのお世話でも何でもしますからぁぁっ!」


 見苦しく喚き散らすギルバートとエレナの首には、エドガーが設計した【魔力遮断チョーカー】がカチリと嵌められ、屈強な衛兵たちによって引きずられていった。

 広場の群衆から浴びせられるのは、冷酷な嘲笑と腐った野菜の嵐。

 他者の尊厳を踏みにじり、社会を支えるインフラを軽んじた者たちの、あまりにも当然の末路だった。


 そして――。

 この歴史的な式典の最大の主役であるはずのエドガーはというと。


「……ふう。堅苦しい挨拶から逃げ出せて助かったよ」


 皇宮の裏庭の片隅、日当たりのいい木製ベンチで、いつもの作業着姿のまま、のんびりと特製ホットドッグを頬張っていた。

 パリッと弾けるジューシーなソーセージと、マスタードの爽やかな酸味が口いっぱいに広がる。

 そこへ、純白のドレスの裾を摘み、パタパタと小走りで駆け寄ってくる人影があった。


「エドガー様! こんなところにいらっしゃったのですね!」

「アステリア様。立派な演説でしたね」

「もう……他人行儀はおやめください……!」


 アステリアは頬を林檎のように赤く染め、エドガーの隣のスペースにちょこんと腰を下ろした。


「私も、これからは連邦の一員……いいえ、エドガー様の技術と心を一番近くでお支えする、ただのアステリアです。どうか、一生お傍に置いていただけますか?」

「ええ、もちろん歓迎しますよ。ただし、うちの工房は朝から晩まで賑やかで、退屈する暇はありませんがね」


 エドガーが笑いかけると、アステリアは嬉しそうに目を細め、その温かい肩にそっと頭を預けた。

 春の柔らかな木漏れ日が、二人を優しく包み込んでいた。

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