第27話:神話級機巧要塞の完全同期
「アイリス、耐えられるのか!?」
「問題ありません、マスター。マスターの濃厚なエネルギーを全身で受け止めることこそが、私の設計された至上の歓びです!」
アイリスが自ら胸元の純白の装甲を左右にスライドさせ、胸の奥深くに埋め込まれた古代の神話遺物――【主動力炉】を白日の下に晒した。
青白く脈打つコアの中心部。エドガーは迷うことなく、右手に握りしめた極太の超伝導ミスリルコネクタを、アイリスのコアへと力強く直結した。
カチリ、ドォォォォォォォォンッ!!
「あああああああああっ……!!」
アイリスの陶器のような肢体が宙へとふわりと浮遊した。
その背中から、神々しい十六枚の黄金の光翼が扇状に展開される。
光翼の先端から放たれたメガワット級のエネルギービームが、地下研究所の分厚い岩盤天井を容易く蒸発させ、帝都の真上へ向けて天を貫く一本の巨大な光の柱となった。
地上では――猛吹雪が吹き荒れる中、セレーナ、フロリア、そしてアステリアが天を仰ぎ、祈りを捧げていた。
「エドガー……わたくしの愛しいマスター……! わたくしの生命力も、世界樹の葉の一枚に至るまで、すべてお使いになって!」
フロリアが胸元に抱いた世界樹の核を輝かせ、大地へ豊かなエメラルドグリーンの生命力を注ぎ込む。
「エドガーさん! シルフィアの大地と、すべての民の信頼と祈りを、あなたへ捧げます!」
セレーナが大公の剣を天高く掲げ、領主としての統率魔力を同調させる。
「エドガー様……どうか、我が愛する帝都の民を、未来をお救いください……!」
アステリアが両手を胸の前で固く組み、皇族の血脈に眠る無垢な聖光を解き放つ。
三人のヒロインたちの純粋な魔力と祈りが、地下のエドガーとアイリスの波長と、完全にゼロミリ秒で共鳴した。
『全回線同期――大陸魔力グリッド、完全リンク完了』
アイリスの電子音声が、天上のパイプオルガンのように帝都中に響き渡った。
「過剰エネルギーの排出先を固定。――大陸横断超伝導リニアレール、およびシルフィア大送電網へ、全量バイパス送電を開始します!」
ビシュゥゥゥゥゥゥゥッ!!
帝都の地下に滞留していた数百億キロワット時の破滅的な過剰エネルギーが、白銀のリニアレールを通じて、大陸全土に張り巡らされた送電グリッドへと一気に流し込まれた。
青白い閃光がレールを駆け抜け、雪原を眩く照らし出す。
大地を引き裂こうとしていた狂暴な震動が、まるで幻であったかのようにピタリと鎮火した。
そして――。
帝都中のすべての魔導街灯が、消え果てていた家庭の暖房が、病院の医療魔導具が、凍りついていた噴水が、澄み渡る黄金色の柔らかな光を宿して一斉に再起動した。
完全なる魔力停電の終焉。
大陸全土のインフラが、エドガーという唯一無二の主電源によって、かつてないほど清らかな高純度エネルギーで満たされた瞬間だった。




