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第25話:暴走する太古の龍脈「星の血栓」

吹雪の吹き荒れる帝都南門広場。

 音もなく滑り込んできた白銀の巨体【ライトニング・エクスプレス】のドアがプシューと音を立てて開いた瞬間、広場を埋め尽くしていた数万人の市民から、割れんばかりの歓声とどよめきが沸き起こった。


「配給だ! シルフィアから温かいパンとスープ、それに魔力バッテリーが届いたぞ!」

「神様だ……! エドガー様が、俺たちを見捨てずに来てくださったんだ!」


 貨物車両から自律型作業ゴーレムたちが湯気の立ち上る巨大な寸胴鍋と保温コンテナを次々と降ろし、アステリア皇女自らが手袋を脱いで、凍える市民たち一人ひとりに温かいスープとパンを手渡していく。

 数ヶ月もの間、飢えと凍死の恐怖に怯えていた帝都の街に、久しぶりの笑顔と涙の安堵が広がった。


 ――だが、その温かな奇跡を切り裂くように、異変は突如として訪れた。


 ズズズズズズズズズズッ……!!


 大地を揺るがす、内臓を素手で握り潰されるような不気味な超重低音の地鳴りが、帝都の地下深くから響き渡った。

 広場の石畳が小刻みに波打ち、噴水の割れ目から、赤黒い瘴気を帯びた魔力の蒸気がシューシューと噴き上がり始める。


「な、なんだ!? 地震か!?」

「空を見ろ! 帝都の真上の空が……真っ赤に染まっていくぞ!?」


 市民たちの悲鳴に、エドガーは即座に腰の魔力マルチアナライザーを取り出した。

 針が激しく振り切れ、赤色LEDの警告灯が狂ったように点滅している。


「……龍脈の背圧が臨界値を突破。周波数のカオス共振、計測不能領域に突入している」


「マスター、中央魔導研究所の地下主炉心より、破滅的な高エネルギー反応を検知」

 アイリスのバイザーに無数の警告ログが超高速でスクロールした。

「帝国魔導士たちがエドガー様の退職後、無理に魔力を引き出そうとして施した乱暴な直結工事が原因です。三千本の配管バランスが崩壊し、龍脈のジャンクションに生の魔力が凝固停滞――【星の血栓(エーテル・スロンボシス)】が形成されています。残余爆発限界まで、あと三十五分」


「爆発した場合の被害半径は?」

「帝都全域が半径五十キロメートルにわたり完全に消滅。さらに大陸の龍脈ネットワークが連鎖爆縮を起こし、地上文明の魔導インフラは完全に壊死します」


 アイリスの冷徹な試算に、セレーナとアステリアが顔面を蒼白にして息を呑んだ。

「そ、そんな……! せっかくエドガーさんが救ってくださったのに、街がまるごと消えてしまうなんて……!」


「エドガー、逃げましょう! このリニア列車なら、爆発範囲の外まで余裕で脱出できますわ!」

 フロリアがエドガーの腕を強く引っ張る。

 だが、エドガーは静かに、しかし断固として首を横に振った。


「逃げませんよ」

「えっ……!?」


「元を正せば、俺が五年間保守し続けてきた現場です。後任の素人どもが詰まらせたとはいえ、インフラ技術者が自分の引いたパイプの破裂を前にして、市民を見捨てて尻尾を巻いて逃げ出すわけにはいきません」


 エドガーは大型ツールバッグから、最高強度のミスリル製超大型モンキーレンチと高周波溶接トーチを取り出した。


「アイリス、バガンさん、行くぞ。世界で一番でかい『配管の詰まり抜き作業』だ」

「了解、マスター。殉職率〇パーセントのバイパス工程表を展開します」

「ガハハ! 上等だ親方! 星のケツの穴だろうが何だろうが、俺たちの槌とレンチで綺麗さっぱり貫通させてやろうじゃねえか!」

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