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永遠の少年 ~1~

 ちゃりん、ちゃりん。

 いつものように、トオルが鍵の束から一本の鍵を取り出す。


 でも、今日選びとったのは、いつもの鍵とは違っていた。ハルトのマンションの鍵ではなく、一本増えた真新しい鍵だった。そして、カチャリとドアを開け、遠慮気味に声をかける。


「こんにちはぁ」

「あぁ、トオル君。いらっしゃい」

 迎えたのは、ハルトの父だった。

「にゃ~ん」

「おお、タマ。今日も元気そうやな」

 そう言ってしゃがみ込むトオルの膝がしらに、ぐりぐりと頭をこすりつけながら、タマがごろごろと喉を鳴らす。


 いつもハルトの部屋にいたタマは、トオルにもよく懐いていた。ひとしきり撫でてやると、満足したようにシッポをピンとたてて、お気に入りの籠に戻っていく。



 トオルが、ハルトの父の部屋に来るようになって、一か月が過ぎようとしていた。

 夏休みの終わりに連絡をもらって、それからは二日とあけずにこの部屋に通っている。

 ハルトの父は、ちょうどハルトとユウリの映像を見ている最中だった。言わばふたりの観察日記だ。



「あの子が生まれてから、もう半年です」

 画面を見つめたままの言葉は、返事を欲しがっているようには思えなくて、トオルは無言でハルトの父の隣に腰掛ける。

「私は、よかれと思って、創ったんですけどねぇ……」

 映像には五月頃の、咲いたばかりの薔薇をちょんちょんと指でつっつくユウリが映っている。


「……なんで生み出したのかって言われたら、ハルトのためにとか綺麗事も言えるけれど、突き詰めれば結局は、私の独断……、我儘でしかない。でもそれは、彼らにとっては酷なことですよね」

 画面にはハルトの背中が映って、振り返ったユウリが、なんとも幸せそうに笑った。


「僕は、……酷なことばっかりやない、思いますよ」

 トオルの言葉に、ハルトの父が静かに視線を向ける。

「僕から見て、ふたりはほんまに幸せそうや、思いますもん。ユウリがおらへんかったら、ハルトはこんな優しい顔しません。ユウリやって、きっと、あんなふうに笑うことはなかったって、思いますよ」


 ハルトが、優しい人だとは知っていた。

 でも、照れ屋で不器用なハルトは、あからさまな優しさを見せることがなかった。だから、ハルトのユウリに対する底抜けの優しさは、時々トオルを驚かせる。これこそがハルトの本質なんだろうかと、知らなかったことを寂しく思ったりもした。


「トオルくんは優しいですね」

 ハルトの父が苦笑交じりに言って、画像を切り替える。新しい画像は、今現在の二人の部屋だった。

「みんな、私のこと、甘やかしすぎなんですよ。私がしていることを、誰か叱ってくれてもいいんじゃないかと、そう、思うんですけどね……」

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