変わらない心と誓い ~4~
だから今やっと、この言葉を、迷いなく言える。
「せやったら、一生、俺とおる?」
「えっ?」
「約束してええか? 一生俺とおるって」
ユウリの返事を待たずに、ハルトが続ける。
「一生、俺から離れたら、あかんねんで」
ハルトの言葉が、ユウリの胸の中に、甘く転がる。
転がりながら甘酸っぱく膨らんでいく言葉が、ユウリの心をきゅーっと締め付ける。心から、何かが絞り出されるような感覚が怖くて、ユウリは奥歯をかみしめた。
すると、ユウリの頬に、ほろりと涙が一粒こぼれおちた。
「ハルト!」
「ん?」
「俺、なんで泣いてんの?」
腕の中を見下ろせば、ビックリしたように目を瞠ったまま、ほろほろと涙をこぼすユウリが、必死になって涙をぬぐっている。
「俺、今、哀しいわけやないで! ハルトの言ったこと、嫌なわけやないで! めっちゃ嬉しい思うんに、なんで涙が出てくるん?」
本当に、意味がわからないと言うように涙をぬぐい続けるユウリに、ハルトが泣き笑いみたいな表情になる。だから、
「あかん。俺も、泣きそうや」
笑って言えば、
「えっ? なんで? 俺、なんかしたん? 俺、なんかハルトが嫌がること、したん?」
泣き顔のまま焦って聞いてくるユウリは、本当に天使みたいだから、
「ちゃうよ」
静かに言って、
「人はな、幸せでも、涙がでるもんなんよ」
ユウリの頬に手を添える。
「幸せすぎて、胸が痛むことも、あるんよ」
ユウリの瞳が、何かに気づいたみたいに瞠られる。
「好きで、嬉しくて、哀しくなることもあるんよ」
言って、ハルトはそっとユウリの唇に唇をあわせる。
ユウリのふわりと閉じられる瞼にほっとして唇を離すと、ユウリの瞼がゆっくりと開かれる。
「……今も、痛い?」
ハルトが問いかけると、ユウリはぎゅっと胸元の布を握って俯く。答えに迷うユウリに薄く笑って、ハルトが続ける。
「俺は、痛むよ」
「ハルトも?」
「うん?」
「ほんまに?」
ハルトの言葉を信じ切れずに、不安そうに問いを重ねるユウリに、やんわりと言葉を紡ぐ。
「人はな、誰かを好きになりすぎると、胸が痛むんよ」
ぽかんと見つめるユウリに、なおも続ける。
「哀しいくらい、誰かを好きになることが、あるんよ」
とくとくとくとく……。逸る鼓動に耳を傾けて、ユウリが問う。
「ハルトは、俺のこと、好きなん?」
「うん」
「俺も、ハルトのこと、好きなん?」
「……」
「好きだから、胸が、痛ぁなるん?」
自分のことまで問いかけてくるユウリが可愛くて可笑しくて、前髪からのぞくおでこに「ちゅっ」とキスすると、ユウリはおでこに手をあてて「なん?」なんて小首を傾げる。
「今のなん? なんでおでこにするん?」
「ユウリが、可愛かったから」
「あぁ? なんなんそれ」
見た目の可愛さに反比例して、ユウリは子供扱いされるのを嫌がる。もちろん、女扱いなんてもってのほか。だから今も、泣いたばっかりの顔で頬を膨らませている。
これはもう、絶対に女の子になんかなれないだろうと苦笑する。
でも、とハルトは思う。
ハルトは、ユウリに女の子になってもらいたいと思ったことは、一度もなかった。
キスが気持よくても、抱きしめたいと思っても、ユウリには今のままでいて欲しかった。今のままのユウリが大好きで、今のままの関係がどうしようもなく心地よくて……。
恋愛の苦しさを未だ知らないハルトにとって、ユウリとのママゴトみたいな毎日は、まるで御伽噺の中に迷い込んだような日々だった。
こんな毎日が永遠に続くなら、どんなに幸せだろうと、そう思うほどに。




