変わらない心と誓い ~3~
「あんな、親父……」
言い難そうに言葉をとぎらせるハルトに、父が優しく問いかける。
「どうしたんですか?」
「……ユウリ、な。試作品、なんやろ?」
「あぁ、最初はね。今はもうほとんど完成してますよ」
「せやったら、もう、俺んとこから、連れて行ってしまうんか?」
「は?」
「やって、育ててって、そう言うたやん。俺と同い年やから、俺に任せたいって。試作品やなくなったんなら、もう、此処に居る必要、ないんちゃう?」
最後の方はもう、涙声になってしまっていた。
「ハルト? なんで……」
父の問いかけをかき消して、ハルトが叫ぶように言う。
「やって、おとん! 前に、俺が可愛がってたトム、スクラップにしたやん!」
もう長いこと、そんなふうに呼びかけてはいなかった幼い呼び方で、父を呼んだ。
それはハルトにとって、思い出したくもない、苦い記憶だった。
球形の、ころころと転がる、子供の遊び相手として開発されたというトムは、ハルトにとって初めての、ハルト専用ロボットだった。遊び相手としてだけではなく、子供を保護し、ちょっとした教育まで出来る。そんな多角的な仕様のトムは、ある日突然ハルトの前から姿を消した。「初期不良」だなんて、幼いハルトには納得できない理由で。
そして、トムとよく似た球形のロボットは、今は普通に普及していて、あちらこちらで見かけるようになっていた。ピポピポと機械音声でしか喋れなかったトムは、今もハルトに話しかけていた時とそっくりな声で、子供たちに話しかけている。それでも、一緒に遊んだトムとは違う。トムには、もう二度と会えない。名前だって、トムじゃない。なのに、そっくりな視線は、ハルトを見てもなんの反応も示さない。
それは、ハルトにとって耐えがたい喪失だった。
だからハルトはずっと、ずっと、ユウリがいつかトムと同じように消えてしまうような気がしていた。
「おとんは、ユウリの成長データが欲しいだけなんやろ? それが済んだら、もう、ユウリは……」
最後までは言いきれず、言葉を飲み込んでしまったハルトの耳に「ふーっ」と小さなため息が聞こえた。
「ハルト、なにか勘違いしてませんか?」
「えっ?」
「ユウリは、ハルトへのプレゼントだって、そう言いましたよね?」
「……それって、「嘘も方便」っていうやつやないの?」
「違いますよ! ユウリはね、一人暮らしをするハルトのために創ったんです!」
「……ほんま、に……?」
「もう……、そんなふうに思っていたなんて、全然知りませんでしたよ」
今までの自分の素行を棚に上げ、ハルトの父が呆れたように言う。
「じゃ、ユウリは、もうずっと、俺のとこに、居てくれるん?」
「ハルトが望むなら一生だって、ユウリはハルトの傍にいますよ」




