変わらない心と誓い ~1~
「あんな、親父。聞いておきたいことが、あるんやけど……」
その日、ハルトは目覚めてすぐ、快晴の空を眺めながら父に電話をしていた。夏の終わりが、もうそこまで来ていた。
「えーっ、眠いーっ! なんでこんな早よぉ起きなあかんねん!」
父との電話を切ってすぐ、ぐずるユウリの身支度を整えてやって、ハルトはマンションを後にした。ユウリは寝ぼけ眼をこすりこすり、ハルトに手を引かれて歩いている。
マンションを出て数分の地下鉄に着く頃に、ようやく意識がはっきりしてきたらしいユウリがポツンと呟く。
「地下鉄、乗るん?」
「うん」
「……どこ、行くん?」
「良いところ」
そんなふうに言うハルトはなんだかとても上機嫌で、ユウリもなんとなく楽しくなってくる。
「なんで、こんな早いん?」
「あんなぁ、ラッシュに巻き込まれるん、嫌やない?」
「あぁ、電車の中で、ぎゅーってなるやつ? うん。嫌やぁ」
「まぁ、遅く出るって方法もあるんやけど、……それやと暑くなってまうやろ? やから、涼しいうちに出たかったんよ」
「ふーん、そうなんや」と、ユウリはそっけなくつぶやくけれど、ハルトに手渡された切符を、大切そうに握りしめている。電車に乗ると、ふんふんと鼻歌なんかも歌い始めている。
ちょっと面倒な乗り継ぎをこなしてふたりが向かった先は、広いひろい、真っ白な砂浜だった。
「うっわー……」
思わずというように息をのんだユウリが、大きく手を広げて、砂を蹴って駆け出す。そして、
「海やぁーっ!」
本やテレビでしか知らない、生まれてはじめてみる海に歓声をあげる。
「ユウリ、海連れてったらあかん?」
「えっ? 海?」
「うん。潮風とか、大丈夫なん?」
ロボットは千差万別で、アンドロイドの中にも海は厳禁と注意書きされているものもある。多分大丈夫だろうと思いつつ、念のために、ハルトは父に確認していた。すると、
「ユウリは最新式ですから、お風呂も入れるし、食事も出来る。お酒を飲めば酔うことだって出来るんですよ。海なんて、潜水したって平気ですよ」
「そこまではせーへん」なんて笑いながら、父の太鼓判をもらってハルトは安心してユウリを連れてきた。ユウリが、海に憧れていることを知っていたから。
そしてハルトは、いままで一度も確認できずにいた大切な未来の事を、父に問いかけていた。
「あんな、親父……」




