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トオルの受難、ふたたび ~10~

 トオルが帰って時計を見るとちょうど夕食時で、ハルトが部屋から出ていく。


「ユウリ?」

 リビングに姿が見当たらなくて呼びかけると、まるで返事のようにユウリが寝室として使っている部屋から「コンコン」とノックが聞こえる。


「なんや? もう寝てまうんか?」

「ちゃう」

 なんとなく不機嫌そうな返事にドアノブを回すと、カチっと止まってしまう。どうやら鍵をかけてしまっているらしく、中に入ることが出来ない。


「どないしたん? なんで鍵、かけとるん?」

「やって、ハルト、いっつもそうするやん。真似(まね)っこや」

 やっぱり何かしらでご機嫌斜めになってしまっているらしいユウリに、ハルトは根気よく話しかける。


「夕食、どないするん?」

「別に俺は、ごはん食べへんでも平気やもん。機械やし。ハルトとちゃうもん」

「でも食べれるやんけ。俺、おまえと一緒にごはん食べるん、結構好きやで?」

「……好き、……なん?」

「うん。美味しそうに食べてくれたときは嬉しくなるし、まずそうに食べてても、可愛いな思うで」


 味覚があるのかどうかは、はっきり言ってよくわからないけれど、面倒くさい機能満載なユウリの設定を考えると、きっとそれくらいの機能は取り付けてあるんじゃないかとハルトは思っていた。父が好きそうな機能だし。


「おまえが、美味しい! って言うん、好きやよ」

「……まずいもんはまずいやん。なんでもかんでも美味しいなんて、言えへん」

「やったらまずいもんは俺に教えとき。俺が食ったるから」


 何気なく放った一言に、鍵が掛かっていたはずのドアが勢いよくバンと開けられる。

 危うく鼻を打ちつけそうになったハルトがぎりぎりでよけると、眉を八の字にしたユウリがハルトに顔を近づけてくる。


「なに言ってるん? まずいもんはまずいやん。まずいもんは、ハルトが食うてもまずいやろ? それをハルトが食うって、おかしない?」


 なんでもかんでも自分と同じにしようとするユウリを愛しいと思う反面、こんなよくわからない質問をぶつけてくる時は、ハルトは小さく笑ってしまう。


「あんなぁ、ユウリ」

 八の字眉のまま、ユウリはひたむきにハルトの瞳を見つめてくる。

「好き嫌いは一人ひとり違うんよ。おまえが好きなもんでも、俺が嫌いな場合があるし、おまえが嫌いなもんでも、俺が好きな場合もあるんよ」

「……一緒や、ないん?」

 その事実に納得がいかないらしく、ユウリは同じ質問を繰り返す。


「一緒やない時もある」

「嫌や」

「必ずしも一緒やないんよ、俺とおまえは。違うもんやから……」

「ハルトは人間で、俺は機械やから? そういうこと?」


 ハルトの言葉尻を待たずに、なんとも哀しそうな瞳でそんなことを言うものだから、ハルトは思わずユウリを抱き寄せようと手を伸ばす。けれど、パシンとその手を振り落とされてしまってハルトの眉根がよる。

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