表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/56

トオルの受難、ふたたび ~6~

 三人でのどかな昼食を終え、今度こそゆっくりと本を読むつもりだったトオルのもとに、今度はひょっこりとユウリが顔を出す。

 いったい、今日は何の厄日だ? とひとりごちて顔をあげれば、閉じたドアの向こう側を不満そうに見つめるユウリがいる。


「ハルトは?」

「ん、今な、勉強中札がかかっとる」


 昼食前の会話を思い出して「頭冷やしとるんやろな」なんて心で思いながら、ちろりとユウリに目をやれば、ハルトの「部屋に入っては駄目!」な札を思い返しているのか、唇を尖らせている。

 その寂しそうな、拗ねたような表情はやっぱり可愛いくて、面倒事ばかり持ってくるふたりはけれど、トオルにとって決して嫌な存在ではなくて、むしろ「噛ませ犬」でもふたりの間にかかわらせてもらえるだけ楽しいかも、なんて馬鹿なことを思ったりもする。


「新しい本、選ぶんやっけ?」

「あっ、うん」

「今度は、どんなんが知りたいん?」

 さっきと同じように問いかけると、小首をかしげながら「俺、あとなに覚えなあかんのやろ?」と本棚に向かって歩き出す。


 そこでまた、トオルに「ピン」と悪魔のひらめきが起きる。


 本棚の前に立つユウリにそっと近づいて、こそこそっと「小説、読みとうない?」と聞いてみる。トオルが声を潜めるので、ユウリもつられて声を潜める。

「小説って、嘘っこの話?」

「うん。そう」

「……でも、嘘の話って、読む必要あるん?」

「あんな、人間には、脳があるやろ?」

 とうとうと話し出すトオルに、ユウリは真剣に聞き入る。


 小説の登場人物がある出来事に遭遇する場面を読んだ時と、その出来事が実際に自分の身に起こった時に、人の脳は同じ部位が反応する。だから、架空の話しであってもそれを読むことで、人間は自分の経験値をあげることが出来る。


 トオルの説明を、うんうんと素直に聞いていたユウリがぽつんと問う。

「俺も、人間と同じように、経験値? あげること出来るんかなぁ?」

「ユウリは多分、俺らより上がるのは早い、思うで」

「ほんま?」

「あぁ」


 もともと、人間よりはるかに物覚えの良い機械だ。経験値だって多分、あっという間に上昇するだろう。そして、その架空の物語は、……たくらみ心満載のトオルが本棚を物色し始める。すると、

「やったら、今、悩んでることも、解決出来るんかなぁ……」

 ユウリがぽつんと、そんなことを言う。


「ん? なんか悩んどんの?」

 悪魔のささやきはさておき、ユウリの頼りない一言が引っ掛かって、トオルがユウリをふりかえる。ユウリはというと、めずらしくもじもじと言い淀んでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ