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トオルの受難、ふたたび ~3~

「そういうんは、自分の遺伝子残すためにするもんやろ?」

「……やったら同性愛は意味ないんか」

「そうゆう()()()()取られても困るっちゅーねん! ちゃうわ。それは人と人の話しやろ。それはええねん」

「ええんかい」


「あのな、ハルト。ユウリはめっちゃ可愛いねんけど、機械なんやで。その辺どうすんねん!」

「やから訊いてんやろ! 俺、ロボットのこと、詳しないもん」

「……俺よかよっぽど詳しいと思うけどなぁ」


「ユウリの考えそうなこととか、行動とかやったら、そりゃトオルよりわかっとるよ。でもな、ロボットは、わからんねん」

「だからって……、俺に訊かれてもわからんよ。やってな、ハルト、機械とそんなんしようと思う人おらんもん、絶対」

「おらんかなぁ……」


「おらんよ! それな、言い方悪いけど、可愛がってるペットとやりたい言うてるんと一緒やで! そういう次元の話しや。自覚あらへん思うけど。いっくらペット可愛い思うとっても、キスどまりやろ! 普通!」

「……俺がおかしい、言うことか」


 ふっと、気温の下がる声がして、トオルがハルトに視線を寄せる。怒っているわけではなさそうだけれど、少しつかみにくい表情をしている。


「……なぁ、ハルト。……そんなに、」

 言いよどんだトオルは一度俯いて、そして意を決したように顔を上げた。

「そんなに、好きなんか?」


 そんなこと、訊くまでもないと思っていた。いまさらの愚問た。

 ただトオルは、もっと緩やかな優しい未来がこのまま続けばいいのではないかと、そう思っていた。叶わない、願いのように。


 するとハルトが、静かに笑むような表情をした。けれど、本当のところ、笑っているのか泣きそうなのか、トオルにはわからなかった。


「……そやな。こんなん言い出すくらいには、好きや」

「もっと、優しいまんまじゃ、あかんのか?」


 すぐ先にある熱を追い求めるような、そんな激しいものでなく、のんびりと笑いあうだけの仲では駄目なのだろうか。


 トオルの問いかけに、ハルトは今度こそ口許(くちもと)(ゆが)めて笑った。そして、

「結局はな、我儘なんや。俺だけのもんにしてしまいたいんやろ。早いうちに。あいつがなんも知らんうちに」

 他人(ひと)事みたいに続ける。

「ユウリは、これからもっと色んなこと知ってくやろ? そしたらもしかして、俺は必要なくなるかもしれんやん。やって、あいつの世界は、まだ狭いから。……たまに、それがすっごく、怖なってしまうんよ」

 ははは、と軽く自嘲したハルトの声音が乾いていて「ちくり」と棘のような痛みを残すから、トオルは溜息するしかなかった。


「やけど、もし。もし、やで? ハルトがユウリを手に入れたとして。……それが繋ぎとめる材料になるとは限らんやん。それは人間同士かて、ようあることやん。そんなんで繋げるもんやったら、誰も悩んだりせーへんやろ?」


 言いながら、トオルは自分の言葉に後悔する。

 こんなことを言い出す時点で、ふたりの間に流れているものが恋愛感情だと認めてしまっていることに気づいてしまう。だとしたら、好きならば、確かにその感情もありだろうとも思ってしまう。

 けれど、高すぎる温度は破綻に近いような気もする。それがなぜなのかは、わからない。トオル自身、こと「恋愛」に関しては初心者と言っても過言じゃない。


「そうやな。……俺が、我儘なんや。……キス、教えんかったらよかったなぁ……」

 それまでは沈みがちだった空気が、ハルトの一言でピンと弾けた。


 そうだ。もともとは、なんで「キス」なんて、そんなことになったのか、そもそもそこをトオルは知らない。

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