03
二人は底へとゆっくり潜っていく。視界は悪くなかったが、水底までは見渡すことは出来なかった。
ハヤトは探知魔法で、指輪の場所を探る。すると、魔力反応が二つあった。
「小さい反応が多分指輪だね。それで、こっちの大きいのがヌシとやらかな」
「ヌシが魔力を持っているにゃ?」
「そうみたいだ。何か特別な個体なのかもね」
暫く潜っていると、ようやく湖の底へと到着した。
「あった。多分これだね」
底に沈んでいた指輪を手に持って見る。そこには、小さいながらも魔力の籠もった宝石がはめられていた。
「これで目的は達成したけど、少しヌシとやらを見ていかない?」
「それはいいにゃ。一度姿を拝みに行くにゃ」
帰る前に姿くらいは見ていこう、という話になった。そして、この場から大きな魔力の元へと向かう。
「ヌシってどんなのかにゃ?」
「確か、あの人は巨大な蛇とか言ってたっけ?」
「気持ち悪いのだけは勘弁してほしいにゃー」
そんなことを話していると、反応が徐々に近くなってきた。
「この近くみたいだけど……」
「主様、下を見るにゃ!」
アーリアに言われた通り下を見れば、湖の底がさらに深くなっていた。そして、その水底にはヌシと思われる巨体があった。
どうやらヌシは眠っているようで、その姿は女性が言っていたように、巨大な蛇のような姿をしていた。しかし、その顔からは二本の髭が生えており、頭には一対の角が生えていた。
「これは蛇というか……」
「龍だにゃ……」
そう。これは蛇ではなく龍だった。それも、恐らく海龍と呼ばれる種類。
「海龍といえば海に生息していると思っていたけど、どうしてこんなところに?」
「ここは湖なのに、何でいるのかにゃ?」
ハヤトたちは、二人して疑問を呈していた。そして、よく目を凝らせば、背後に何か洞窟のようなものがあり、海龍はそれを守っているように見えた。
「もしかして、海龍はあの洞窟を守っているのかも」
海龍の背後を差し、アーリアへと教える。
「確かに何かあるにゃ。一体何なのかにゃ?」
「海龍が守っているもの、ってだけで興味あるね。ちょっと行けるか試してみようか」
ハヤトは隠蔽魔法を二人にかける。その状態で海龍へと近づいたが、何の反応も示さなかったため、これは問題なさそうだと確信した。
「よかった。海龍ともなれば、何か感知する方法とか持ってるかもと思ったけど、特に問題はなさそうだ」
「なら、早速行くにゃ」
二人は静かに海龍の横を通り過ぎ、何事もなく洞窟の入り口に到着した。それは、自然に出来たものではなく、人の手によって壁の一部がくり抜かれたような、人工的なものに感じられた。
「見たところ、自然に出来たってわけじゃなそうだけど……」
「何でわざわざこんなところに作ってるのかにゃ?」
「確かに謎だね」
二人で洞窟の中に入り、奥へと進む。道中の壁を見れば淡く光る素材で作られており、洞窟内部にも関わらず暗くはなかった。
そして、暫く道なりに進むと、前方に上から光が溢れていたため、上方に水面があるのがわかった。
水面に向かい、そこから顔を出して見れば、地上にまだ道が続いていることが確認できた。
「空気があるとは、不思議な空間にゃ」
「一体どこから入ってきてるんだろう……」
辺りには、洞窟と違い小さな球のような物が壁に取り付けられており、そこから白い光が発生していた。水から上がると呼吸が出来ることを確認し、身に纏っていた魔法を解いた。
そして、周囲を軽く観察した後、先へ続く道を歩いていく。少しばかり歩くと両開きの扉があったため開くか試したところ、鍵などはかかってないようだった。ハヤトは扉を開けて、部屋の中へと入る。
中には広大な空間が広がっていて、周囲の壁などは大理石のようなもので出来ていた。
そして奥を見れば、壁の窪みに像が置かれていた。その像は、下半身が魚、上半身が人の形をしていて、手には槍のようなものが握られている。
「この像は何かにゃ?」
「何だろう? 見た目からは海人族に関係がありそうな気もするけど……」
この場所の第一感として、まるで礼拝堂のようだと感じた。別の国で見たような、祈りを捧げるための台や、民衆が座るための椅子などはなく、あまりに似ても似つかない。
けれど、その場所の雰囲気というか、神へ祈りを捧げる場所特有の空気感がここからは感じられた。
「少なくとも、何かへ祈りを捧げるための場所に思えるね」
「神にゃ? 水の神かにゃ?」
「それはわからないけど……」
部屋の中を見て回ったが、奥にある像のみで、他には何も見つからなかった。
「やっぱりここにはあの像しかないみたいだし、とりあえず戻ろうか」
「わかったにゃ」
二人で来た道を戻る。洞窟を出れば、相変わらず海龍はそこにいたが、やはり存在を感知されることはなかった。
湖から上がると、地上は既に日が沈もうとしていた。女性のいる家へと向かい、家の中へ入ると、女性は丁度夕飯を調理しているところだった。
「あら遅かったじゃない? 何かあったの?」
調理をしながら女性が話しかけてきた。
「邪魔をしては悪いですから、終わってからゆっくり話します」
そう言うと、女性はわかったと言い、調理場の方へと戻っていった。




