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魔王勇者と不死鳥少女  作者: 竹内優斗
太陽の国
33/38

08

「お前の力は死を操るものと言ったな? お前の能力で死者を生き返らせることは可能か?」


 ハヤトが問いかける。すると、大して間もおかず、その魔族ははっきりと答えた。


「いいえ、不可能です。私めの能力は、あくまで死を与え操るものとなります。そのため、死者を生者に変える力とは全く異なります」


 ハヤトはその答えを聞き、内心で意気消沈した。


「では、お前に無理だったとしても、例えば死者を蘇らせる秘術などを知っていたりはするか?」


「秘術ですか? 魔王様は誰か生き返らせたい者がおられるのですか?」


「そんなことはどうでもいい」


 魔族に問われるが、すぐに一蹴する。


「も、申し訳ございません。私めにはそのような方法があるなど、聞いたことはありません」


 焦った様子で答えていたようだが、ハヤトは何の手がかりも得られなかったことに落胆していた。


「そうか。これで聞きたかったことは聞けた。邪魔をしたな」


 扉の方へ振り返り、ゆっくり歩いていく。途中アーリアに、目線でもういいのかと聞かれたので軽く頷いておく。


「お、お待ちください!」


 突如呼び止められ、魔族の方を振り向く。


「何か用か?」


「出来れば私めを配下にしていただけないでしょうか? もちろん、この国の兵たちも魔王様の手足として使っていただいて構いません」


 魔族はハヤトの下につきたいと申し出てきた。


「何故だ?」


「私めの目的は今よりもっと力を得ること。魔王様の配下にしていただき、そのお力を分けていただければ、さらに強大になることが出来ます。それに、魔王様も手足となる兵を手に入れれば、より勢力を拡大できると思われますがいかがでしょう?」


 魔族は力を得るため、配下になろうと必死だった。けれど……。


「悪いが誰も配下にするつもりはない」


「何故ですか!?」


「俺には目的がある。一つの所に留まるつもりはない」


 そう言って、アーリアと共に扉の外へ出ようとする。


「そういえば、この国以外でも死の雨を降らせたそうだな。どのくらいの国を滅ぼしたんだ?」


 ふと思い出したように、魔族へ問いかけた。


「滅ぼした数ですか? その時に見つけた国を気の向くままに滅ぼしていましたので、数など覚えておりません。十や二十ではなかったと思いますが……」


 何故そんなことを聞くのかと、魔族は困惑していた。


「そうか、わかった。なに、少し気になっただけだ。ではな」


 そう言い残し、アーリアと共に扉を出て、廊下の突き当りへと向かう。壁を前にしてアーリアの方を見ると、意図が伝わったのか、こちらの目を真っすぐ見て頷いた。

 ハヤトは無言のまま壁に手をかざし、体内で練った魔力を手のひらから放出する。すると、壁は轟音を立てて崩れ落ちていき、その一角だけ吹き通しのいい空間が出来上がっていた。


 アーリアはその開いた穴から外へと飛び降り、その後をハヤトも続いた。


 そして残された魔族は、彼方に飛び去る不死鳥とその背に乗る魔王の姿を、ただ呆然と見ているだけだった。



「それにしても、本当に主様は何もしなかったにゃ」


 太陽の国に背を向けて飛びながら、アーリアは約束を守らないと思っていたのか、そんなことを言ってきた。


「そう最初に言ったじゃないか。倒す理由もないしね」


「でも、攻撃されたときはどうなるかと思ったにゃ」


「アーリアがいたから攻撃を防いだけど、どうせ効かない攻撃だしね。怒る理由もないかな」


 そうアーリアへ説明する。


「あの魔族、そのうち別の国も滅ぼすんじゃないかにゃ?」


「あの答えを聞く限りはそうなるかもね」


「本当によかったのかにゃ?」


「さっきも言ったけど、何かされたわけでもないし、倒す理由はないよ。…………『僕には』、ね」


 アーリアが意味深な言葉の理由を聞こうとした時、突如背後から辺りに響き渡るような轟音が響いてきた。


「一体何にゃ?」


 アーリアは進むのをやめ、背後へと向き直った。すると国の、恐らく城がある場所で、白い光が空へと立ち昇る様子が見えた。


「あれは聖剣の光だよ」


 アーリアの疑問を解消するため、答えを告げる。


「あのユーリと言った少女。あれは勇者だよ。さすがに城を壊して大きな音を出せば、きっと駆けつけてくると思ったからね」


 その言葉を聞き、アーリアは謎が解けたようだった。


「だから主様は、あの時嫌そうにしていたのかにゃ」


 彼女が言っているのは、勇者と顔を合わせていた時のことだろう。


「そりゃあ顔を知られていたら、少し面倒くさいことになっていただろうからね」


「あれにうんざりしているだけだと思っていたにゃ」


「……確かにそれもあるけど」


 いくらハヤトといえど、勇者の性格までは把握できなかった。


「あれだけ大きな音だと、恐らく老人も気付いただろう。そして、神官をしてるなら、あの光が聖剣のものだと知ってるはずだ。なら、住民を操ってた元凶がいて、それが倒されたことも必然的に知ることになる」


「おじいさん、苦しそうだったにゃ」


「自責の念に(さいな)まれてたからね。きっと解放されるだろう」


 これでわざわざ国の外れで隠れ住む理由はなくなった。


「後は、この国をどうするかはあの人次第。僕たちには関係ないことだよ」


「相変わらずドライだにゃ」


 あの国が今後どうなろうと、立ち去る自分たちにはどうでもいいことだ。けれど、人としての感情は、あの人に救われてほしい。そう思っているハヤトだった。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この作品は続けようと思えば、どこまでも続けれてしまうので、

ここでひとまず完結とさせていただきます。

機会があれば、また続きを書こうと思います。

今までありがとうございました。

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