07
翌日、二人は再び城へと向かっていた。
「今日こそは邪魔されませんように……」
ハヤトがそう考えるのとは裏腹に何か起きることもなく、丘の上にあるこの国の城へと到着した。
周囲を緑に囲まれた石造りの城は、本来なら壮大な雰囲気を感じさせただろう。今となっては、薄暗い中に佇む建物として、不安を感じさせるような雰囲気を醸し出していた。
「これがこの国の城か……」
「本来なら、周囲の緑と相まって素晴らしい風景だったのでしょうが……」
「元凶がいる場所として見れば、まさにピッタリに感じるよ」
二人は城を前にして、お互いに感想を言い合っていた。
「門には兵がいるようですけど、どうするのですか?」
「そりゃあもちろん。いつものように姿を隠して潜入するだけだよ」
慣れた手つきで、自分とアーリアに隠蔽魔法をかけた。
「それじゃあ、お邪魔させてもらいますか」
二人は門を飛び越え、城の敷地内に潜入する。
「魔力反応はどこからするのですか?」
「この位置は恐らく三階あたりかな」
「では、上へ向かえばいいのですね」
「そうだね。一応、罠とかには注意してね」
「承知しました」
一応アーリアにはそう言ったが、反応を見る限り魔力的な罠はないだろう。もしかしたら、物理的な罠はあるかもしれないが、自分とアーリアの身体能力では大した問題にはならないはずだ。
そういったこともあり、ハヤトは散歩をするような気分で城内を探索していた。確かに、ここの元凶が城に何か仕掛けている可能性を少し考えてはいた。けれど、実際には何が起きるといったこともなく、元凶の待つ場所へと辿りついた。
「玉座の間だね」
「国民を殺しておいて、王様気分なのでしょうか?」
「そうかもね。まぁ、本人に聞いてみればわかるさ」
そして、玉座の間とを隔てる巨大な扉を押し開き、中へと入る。中には広い空間が広がっていて、その奥にただ一つ玉座があった。
玉座の上には、全身に黒いローブを纏い、右手に杖を持った者が座っている。そして、ローブからわずかに見えた顔は髑髏となっていて、見るからに魔族、それも不死者と呼ばれる種族であることがわかった。
魔力反応もこの者から出ていることから、探していた者であることは間違いなさそうだ。
「この国の住民をあんな風にしたのはお前で間違いはないか?」
ほぼ確信しているが、相手の出方を探る意味も含めて問いかける。
「貴様、人のくせに無礼だな。……死ね!」
口を開いたかと思えば、杖に力を込め、闇の魔力の奔流をこちらに向けてきた。恐らく、一瞬で生命エネルギーを奪って、即死させる魔法だろう。
自分たちには効かないため無視してもよかったが、アーリアに当たれば嫌な顔をされそうだったので、一応防いでおくかと思い直した。
ハヤトはアーリアより数歩前に進むと、向かってくる攻撃に手のひらを翳し、魔力を吸収することでその攻撃を防いだ。
「何!? 私の攻撃が防がれただと……」
当然すぐ死ぬと思っていたのだろう。予想していた未来が訪れず、魔族は見るからに動揺していた。
「いきなり攻撃してくるとは……。お前、死にたいのか?」
声のトーンを下げ、魔力を放出して威圧した。すると相手は小刻みに体を震わせ、自分より強大な何かが現れたことを悟ったようだ。
「きさ…………。いえ、あなた様は一体どちら様でしょうか?」
自分には敵わないとみた魔族は、こちらの様子を窺うようにそう聞いてきた。
「お前はその程度もわからないような愚か者なのか?」
そう言われて少し考えていたようだが、自分を恐れさせるような魔力を持つ存在にようやく思い至ったのか、こちらに確認するように聞いてきた。
「も、もしや、魔王様であらせられるでしょうか?」
ハヤトは口元に笑みを浮かべた。
「そうとはつゆ知らず、申し訳ありません。どうかお許しください」
魔族は玉座から立ち上がり、杖を手放してしゃがみ込むと、頭を地につけるようにしてこちらに懇願してきた。
「そんなことはしなくていい。それよりいくつか聞きたいことがある」
「はい。何でもお聞きください」
魔族は地に頭をつけるのをやめ、こちらに顔を向けながらそう言った。
「この国の住民がああなったのは、お前が原因か?」
「はい、私めがやりました。近くを通りかかった際、自分の兵にするのにちょうどいい国がありましたので……」
魔族は恐る恐る答えた。
「お前の力はどういうものなのだ?」
ハヤトは威厳を出しつつも、内心では情報が得られることに期待をしていた。
「私めの力は死を操るものです」
そう言って、魔族は続けた。
「魔力を介して死を与え、その者を自由に操ることが出来ます。通常は兵にしたものをこちらの命令で動かすのですが、この国の場合だと、訪れた旅人も勝手に兵に加わるため、配下は自動で動くようにしています」
「そういう割には、効いていない者もいるようだが?」
「当然効かないものもおります。魔王様のように魔力が多かったり、闇魔法に耐性がある者などです。けれど、大半の者には通用しますので、大して気になることではありません」
魔族は自身の能力をそう説明した。
「なるほど。それでは、一つ聞きたいことがある」
「なんでしょうか?」
「お前の力は死を操るものと言ったな? お前の能力で死者を生き返らせることは可能か?」




