01
ようやく日が沈もうという頃。山間にある渓谷の上空を、一層止まぬ太陽の光を浴びて進んでいくものがあった。
「もう夕方なのに、太陽がまだ出ているとはどういうことにゃ?」
炎のように真っ赤な外見をした不死鳥のアーリアはそう言った。
「この辺りは一日中太陽が沈まないことで有名らしいよ。そんな場所にあるからか、今向かっている国は太陽の国と呼ばれているみたいだね」
アーリアの背に乗り、そう返すのはハヤト。
「太陽が沈まないということは、夜が来ないということにゃ?」
「そうだね。今まで旅をしてきた中でもそんな国は見たことがないから、少し楽しみにしてるんだ」
「夜が来ないならお店も一日中やってたりするのかにゃ? 面白そうにゃ」
これから訪れる国に期待を寄せつつ進んでいく。けれど、国に向かって進むにつれ、次第に辺りが薄暗くなってきた。
「どうしたんだろう? 何やら急に雲が出てきたけど……」
「今にも雨が降りそうな感じにゃ……」
二人は雲で覆われた空模様に不安を感じながら進んでいくと、山岳地帯を超えたところで城塞に囲まれた国があるのを見つけた。
「あれが太陽の国なのかな?」
「太陽っていう感じには見えないにゃ……」
二人は国から少し離れた平坦な場所に着地する。アーリアが少女姿へと変わったところで隠蔽魔法を解き、そこから国の門まで向かっていった。
「太陽の国へようこそ」
周りを山々に囲まれる場所に立地し、高い城塞に守られた国の門には、門兵と思わしき人物が立っていた。彼は伏し目がちで、覇気のない様子をしていた。
「ここが太陽の国であってるらしい」
「雲に隠れて太陽が全く見えないにゃ……」
アーリアと小声で話し合う。
「うーん……。話を聞いた人によると、太陽が常に出ていて暑いから、熱中症に気を付けるよう言われてたんだけど……」
「むしろ丁度いい温度だにゃ」
噂と全く異なる状況に、二人は困惑していた。
「ここにいても何かわかることでもないし、とりあえず中に入ろうか」
「了解にゃ」
ひとまず、国の中を見てから判断しようとの結論になった。
門兵に許可を貰い、城門をくぐって中へと入る。
城門からは、土で出来た大通りが国の中央に向かって続いていた。道の両端には、石造りの平坦な建物がいくつも立ち並んでいるものの、人通りはなく、空模様と相まって重苦しい雰囲気を醸しだしていた。そして、大通りの先にある国の中心部。そこには、ひと際高い塔らしきものが建っているのが見えた。
「塔みたいな建物もあるし、面白そうで興味深い国だとは思うんだけどね……」
「人が全然いないにゃ……」
「太陽に照らされて、明るい雰囲気だと思ってたんだけどなぁ……」
どんな国かと期待していたにもかかわらず、想像していた国とはあまりにも異なっていて、二人は拍子抜けしていた。
「とりあえずこの国の感想は置いといて、まずは宿を探しに行こうか」
「わかったにゃ」
人の気配がしない中、二人は宿を探すため歩き出した。
「それにしても、ほんとに誰も見かけない……」
大通りを進んでいたが、今のところ誰とも遭遇することはなかった。周りの建物を見ると、所々ヒビが入っていたり、中には崩れているものもあった。
「建物や看板も傷んでいるようだし、誰も手入れをしていないように見えるね」
「すごく趣を感じるにゃ」
「物は言いようだね」
少し歩いていると、看板は少し削られていて読みづらいが、宿と書かれている場所を見つけた。
「多分ここが宿だと思うけど……」
「大分寂れているにゃ」
二人は不安に感じながらも、宿の中に入る。外と比べると年月の経過を感じさせなかったが、あまり人が来ないのか少し埃っぽい感じがした。
「すみません。二人ほど宿泊したいのですが……」
受付にいた三十前半ぐらいに見える宿の女将にそう尋ねる。
「宿泊ですか? なら空いてる部屋を使ってくれていいですよ」
女将は門番みたく、元気のない様子でそう答えた。
ハヤトは料金を払うついでに、気になっていたことを質問した。
「この宿に来るまで、誰とも会わなかったんですけど、他の皆さんはどうされてるのでしょうか?」
「他の人ですか? 皆、普通に生活してると思いますけど……」
すると、女将からは要領を得ない言葉が出てきた。
「皆建物の中にいるってことでしょうか?」
「建物の中ですか? 外にも人はいると思いますが……」
女将に聞いても、結局堂々巡りになってしまったので、諦めて会話を切ることにした。
「お話ありがとうございます。では、空いてる部屋に泊まらせてもらいますね」
二人は受付を離れ、二階の空いてる部屋を見つけて中に入った。
「それにしても、太陽の国と聞いてたのにこんな薄暗いし……。何があったんだろう?」
「門の人もさっきの女将も、会う人皆様子がおかしいにゃ」
部屋の中で、二人は出会った人たちの様子について話していた。
「女将との会話も意味がわからなかったし……」
「女将は皆がいつも通り生活していると思っているようだったにゃ」
女将はむしろハヤトたちの言葉を理解できていない様子だった。
「建物も古いまま放置されてる感じだったし……。この宿も少し埃っぽいから、人の往来がないように感じるんだけど……」
「でも、それならどうやって生活しているにゃ?」
「わからない……」
二人は解けない謎を突き付けられたかのように、うーんと唸っていた。
「今ここで考えても仕方がない。明日、何か情報がありそうな場所を探そうか」
「場所にゃ? 他の人は探さないのかにゃ?」
「さっきの会話を見ればね。他の人を探すよりかは、何か資料でも調べた方がいいと思う」
「なるほどにゃ。了解したにゃ」
こうして、明日はこの国の情報を求めて探し回ることに決まった。




