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魔王勇者と不死鳥少女  作者: 竹内優斗
断章 セントライト王国
20/38

04

 翌日。勇者たちの目の前には、禍々しい雰囲気を放つ魔王城があった。今までの敵とは明らかに違うとわかる程に、そこからは邪悪な気配が感じられた。


「相手がどんなのだろうと、人類の平和を取り戻すため、僕たちのやることは変わらない……。行くぞ」


 城の雰囲気に気圧されている皆を鼓舞するかのように、ユウヤはそう言って魔王城へと向かう。


 その言葉で自分たちの使命を思い出したのか、そこにはもう気後れした様子もなく、三人は確かな足取りでユウヤの後を続いていった。



 魔王城の中を四人は駆けていく。敵の本拠地というだけあって、多数の魔族がお出迎えをしてくるのかと思っていた。しかし、予想とは裏腹にその数は少なかった。

 恐らくだが、旅の先々で魔王軍を倒してきたことが功を奏したのだろう。四天王も撃破済みのため、いわゆる幹部クラスと呼ばれる強さの者はおらず、ほとんどが一兵卒程度のものだったので、力を節約して進むことができた。


 そして、道なりに進んでいけば、特に迷うこともなく魔王がいると思われる場所に辿りついた。巨大な扉の向こうからは、ここからでも異質で禍々しい力を感じることができた。


「この先にいるね……。開けるよ」


 ユウヤがゆっくりと扉を開けると、その先にいた。玉座に座りながら禍々しい力を放つ、退屈そうな目でこちらを見る魔王が。


「ようやく来たか。待ちくたびれていたぞ」


 そう言い放つ魔王は、自分たちとあまり変わらないような姿をしていた。


「待っていただと?」


「ああ。我が軍をこれ程まで壊滅させてくれて、いつかお礼をしようと思っていたのだ」


 魔王は立ち上がり、こちらへゆっくりと歩いてくる。


「お礼とはふざけたことを言いやがって!」


「あんたたちこそ、人々をたくさん殺してきたじゃない!」


「あ、あなたを倒します」


 そして、最後にユウヤが告げる。


「今まで魔王軍によって虐げられてきた人々の悲願。お前を倒すことで人類に平和を取り戻させてもらう!」


 かくして、魔王との戦いが始まった。



 魔王との戦いは熾烈を極めていた。魔王というだけあって、魔法による激しい攻撃が繰り出されてくる。

 特に闇魔法。この属性は相手の状態を狂わしたり、生命エネルギーを直接奪うことができる恐ろしい属性だ。勇者に対しては効かないものの、他のメンバーには有効であるため、防ぐことが出来ないと一瞬でパーティが壊滅してしまう。

 そのため今は、僧侶のケイトに補助魔法をかけてもらうことで防いでいた。けれど、この魔法は定期的にかけ続けなければ効果が切れてしまう。

 そのことを魔王もわかっていて、執拗にケイトへの攻撃を止めなかった。


 その結果、彼女は襲い来る魔王の魔法を防ぎながら仲間への補助魔法をかけ続けるという、この上なく困難なことを強いられていた。


 魔王に好き放題させていると、彼女の体力がその内切れてしまう。そうなれば、補助魔法が切れ、魔王の闇魔法で一網打尽にされる。

 それを防ぐ意味もあり、先ほどから攻撃を仕掛けているが、全くダメージは与えられていなかった。


 ニーナは遠距離から魔法による攻撃を、ユウヤとルイスは近接で剣よる攻撃を繰り出していた。けれど、魔王はそれらの攻撃を障壁で防いだり、時には躱したりと器用なことをしていて、こちらの攻撃は意に介していなかった。


 攻撃を続けていればその内魔力が尽きて攻撃を防ぐことも出来なくなる。

 ユウヤはそんなことを思いながら攻撃を繰り返していたが、長時間戦っているにも関わらず、魔王には一切そういう素振りが見えなかった。

 むしろ、ニーナとケイトの方が明らかに苦しそうにしており、このままでは魔王より先にこちら側の魔力が尽きてしまうだろう。


「そろそろ頃合いか……」


 急に呟いたかと思うと、魔王の目が突如金色へと変わった。それを見て何かが来ると身構えたが、何か起こった様子はない。けれど、周りを見回せばルイス、ニーナ、ケイトの三人が動きを止めて苦しそうにしていた。


「ふむ。やはり勇者には効かないか……」


 見たところ、三人を止めたのは魔眼の力だろう。恐らく魔王固有の力だと思われる。このままでは一方的に攻撃を食らうどころか、ケイトの補助魔法が切れ、闇魔法で全員一網打尽にされてしまう。


 放っておくのはまずいと考え、ユウヤはここで聖剣の力を解放することを決意した。


「聖剣よ! その力を解放せよ!」


 言葉を紡ぎ、聖剣を解放する。輝く聖剣を携え、ユウヤは魔王への攻撃を再開した。


 魔王は今までと同じように障壁で攻撃を防ごうとした。けれど聖剣は、障壁などそこには無いように魔王を切り裂こうとした。それを瞬時に把握した魔王は、その場から素早く後ろに後退する。


「それが聖剣か。我の障壁をものともしないとは厄介だな」


 忌々しいといった顔でこちらを見てくる魔王。


「だが、今まで使ってこなかったということは何か制限があるのだろう? そんな力がいつまでも続く訳がない」


 当然ながら、魔王にも見透かされていた。魔王に攻撃させては終わってしまう。必ずここで決めきる。そう不退転の意志を決め、ユウヤは魔王へと肉薄していった。


 魔王は向かってくる勇者を見て、聖剣に対処するため、他へと気を回している余裕はないと思ったようだ。

 そのため、やっかいな僧侶へ攻撃することを諦め、迫りくる勇者の対応に本気で専念しなければいけない。そう考えたのだろう。闇の魔法による強化を自身に施し、勇者を迎え撃たんとしていた。


 魔眼で止められているため、その戦いを他の三人はただ見ているだけしか出来なかった。

 高速で移動しながら聖剣で斬りつけ攻撃する勇者。それを己の魔法と、何処からか取り出したであろう魔力の籠もった剣で防ぐ魔王。

 まるで人知を超えた、おとぎ話のような戦いがそこには広がっていた。


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