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本日2話目
村を出発して少し経つと、眼前に国の城塞が見えてきた。そして、開かれた国の門から、今まさに出発しようとしている兵たちが見えていた。
「アーリアの脅しも意味がなかったようだね」
「……本当に愚かです」
アーリアの努力を無にしようとするこの国を腹立たしく思っていた。どうにかするには、やはり国王を直接脅すしかないかと思い、ハヤトはアーリアにお願いする。
「アーリア。ごめんだけど、協力してもらっていいかな?」
「もちろんです。あの国には理解してもらう必要がありますから」
了承を得ると、ハヤトは国全体を炎で囲むようアーリアに頼む。アーリアもこれを承諾し、国の門前に炎を吐き出すと、門の両側から導火線が燃え進むかのように、城壁に沿って国の外周を炎で包んだ。
「これで外には出れないだろう。次は城だ」
そして、城の上空まで行く。
「脅すために、少し燃やすか……。人がいない所に炎を出せる?」
「問題ありません」
割と無茶な要望にもアーリアは応えて、城の庭、兵の訓練場など人がいない場所、ついでに城全体が燃えるよう炎を吐き出した。
「城を燃やしてるけど大丈夫?」
「大丈夫です。中の人が燃えない様には調整しておりますので」
アーリアは何てことはないと答えた。
「ちょっと行ってくるから、ここで待ってて」
アーリアに城の上空で待機するよう言い、城の屋根に向かってアーリアから飛び降りた。落ちる速度を利用して、屋根には着地せず、そのまま突き抜けていった。
そして轟音を立てながら着地した場所は、王の間だった。この炎に気づいて集まってきたのだろう、そこには国王だけでなく国の重鎮も集まっていたので、ハヤトとしては都合がよかった。
「貴様何者だ!? この炎は貴様の仕業か?」
「あんたたち、あの村に手を出すなという伝言は聞いているよな?」
国王の言葉には取り合わず、念のために確認しておく。
「伝言といい、この炎といい。貴様、あの村の関係者だな。兵士ども、こいつを捕らえよ!」
その言動から正しく伝わってはいることを把握した。話をつけるためにも、国王へ向かってゆっくりと歩いていく。
そんなハヤトに対して、周囲の兵たちが剣で攻撃を仕掛けてきた。鞘から剣を抜きつつそれらの攻撃を躱し、避けるついでにと斬りつける。
演舞のように避けては斬る、避けては斬るを繰り返していると、遂に誰も攻撃してこなくなった。立ち止まって周囲を見ると、この場の兵士全員が既に斬られており、国王までの道を阻むものは誰もいなくなっていた。
ハヤトは悠々と国王までの道を進む。
「く、来るな!」
国王は向かってくる脅威から本能的に後ずさろうとするが、椅子に座っているため当然不可能である。後ろを向きそのことに気付くも、目の前には既にハヤトがいた。
ハヤトが無言で国王の足に剣を刺すと、部屋中に響くような悲鳴が発せられた。
「せっかく忠告したのにそれを聞かないとはね。今燃やすのは城だけにしてあげているけど、この国を燃やし尽くしてあげようか?」
突き刺した剣を横に捻ると、さらに苦悶の悲鳴をあげた。
「わ、わかった。もう二度としない。だ、だから助けてくれ!」
顔中を涙で濡らして、もうやめてくれといった様子で懇願してきた。
その様子を見てハヤトは一応は留飲を下げ、国王の足から剣を抜いた。
「その言葉聞いたからね。次は、黙ってこの国を滅ぼすから」
国王はこちらを見て無言で何度も頷く。
ハヤトは目的を果たしたので、入ってきた天井に向かって跳躍し、そのまま外へと飛び出した。屋根に着地しアーリアを呼ぶと、その背に乗り事の顛末を話した。
「あそこまでやればさすがに大丈夫だと思う」
「主様、ありがとうございます」
「僕も同じ気持ちだったし、自分のためだよ。気にしないで」
唯一気がかりだったことを解消したことで、安心してこの地を去っていった。
後に噂として聞いた話だが、不死鳥の姿を見た国民がクーデターを起こしたらしい。そして王政を廃止して、代わりに不死鳥を崇める宗教国家になったそうな……。




