09
本日1話目
王国の大軍がたった一人の少女によって壊滅させられた様子を見ていたドミニクは、青ざめた顔でアーリアを見ていた。
彼女の故郷にある大切なものを奪おうとした自分は、一体どういう処遇になるのかと戦々恐々としているようだ。
逆にその横で、とても神々しいお姿だったとか、さすが我らの神だ、と信仰心全開にしている族長は少しうるさかったが……。
問題も解決したため、村へと戻ることにする。
途中ドミニクがまだアーリアを恐れているようだったので、二度と村に不利益なことをしなければ彼女はどうもしませんよ、と安心させる言葉をかけた。
それを完全に信用したわけではないようだが、ひとまずは恐れることを止めたみたいだ。
村に戻り、大軍をアーリア一人で退けたことを説明すると、村は歓声に包まれた。今日は宴だと準備を進める村人を見て、昨日したばかりだけどそんな毎日するものなのかと疑問を持ちつつも、大人しく受け入れることにする。
夜、広場で再び行われた宴の場。そこには昨日とは異なり、ドミニクの姿があった。実は村に戻った後、ドミニクの処遇について一言口添えしておいた。
戦場でアーリアが大軍を壊滅させるところを見ていたので、自分も同じ目に遭いたくないから今後は同じことをしないだろうと。
その言葉を補強するかのようにアーリアも頷いていたので、村人たちは了承して彼の縄を解くことを許した。
「それにしても、今回のことは懲りました……。国を信用すると碌なことにならないですね」
そう言うのはドミニクだ。
「国からすれば商人は利用するだけの存在ですからね。利用価値がなければ切られるのは当然でしょう」
「えぇ。それが今回身に染みてわかりました」
「それで、今後はどうされるのですか?」
しみじみと語るドミニクに対し、ハヤトは今後の展望を聞いた。
「当初はあの王国で商売を続ける予定だったのですが、既に切られた身ですからね。行ったところで捕まえられるのがオチでしょう。王国を迂回する形で他の国へ行って商売をしようと思っています」
「それが賢明でしょう。一度脅して帰したものの、どうなるかはわからないですからね。下手に巻き込まれないよう、あの国は避けた方がいいでしょう」
ハヤトの言葉に、商人は頷く。
「それにしても、ハヤトさんの力は一度見せてもらってましたが、あのお嬢さんもすごい力を持っているとは……。世の中見た目じゃわからないものですね」
「今回はいい教訓になりましたね。……ちなみに僕もあれが全てではないですよ?」
と笑いながら返しておく。
「ところで、ハヤトさんたちはこの村を出た後どうされるおつもりでしょう?」
「そうですね。とりあえずは、魔法都市マギステラを目標に旅を続けようと思います」
「……それは、例の方法を見つけるためですか?」
「そうなりますね」
ドミニクは念を押す意味も込めて確認する。
「以前話した通り、あくまで噂話です。本当に存在するかは誰も知りませんよ?」
「……それでも、今までは漠然と旅を続けていただけでしたので、真偽のほどは定かではないにしても一度行ってみようと思ってます」
「なるほど。でしたら私が止めるのも野暮ですか……。是非見つかるといいですね」
「ありがとうございます」
二人で会話している最中、相変わらずアーリアは村人に囲まれていた。昼間の武勇伝でも語っているのか自慢気な様子をしていたが、語り終わった途端に質問攻めされてたじたじしていた。困った様子のアーリアと目線が合ってしまったので、仕方なく重い腰を上げる。
「今回も無視したら、後から色々言われそうです。すみませんが、少し席を外します」
一言断りを入れてから、彼女の元へ向かう。
「主様ー、助けてにゃー」
「全く、調子に乗ってるから……」
そうして楽しい宴の夜は過ぎていった。
翌朝、旅支度を終えたハヤトとアーリアは村の入口にいた。
「お二人様のおかげで、この村は救われました。村の者一同、改めて感謝いたします」
族長と村の者一同に頭を下げられる。
「気にしないでください。僕も皆さんがアーリアの味方だと知って、助けることを決めましたから。それにアーリアも、自分の味方をしてくれる皆さんを守りたいと思ったから助けただけです」
「そうにゃ。頭を上げるといいにゃ」
アーリアの言葉を受け、やっと村人たちは頭を上げた。
「我々村の者一同、不死鳥様と主様の旅が無事であることを祈っております」
「ありがとう」
彼らに感謝を述べると、同じく見送りに来ていたドミニクに向き直る。
「ドミニクはこの後出発するんだっけ?」
「えぇ。あなた方を見送った後に発ちますよ」
ドミニクは続ける。
「あなた方とは色々ありましたが、最後には助けてもらいました。今後もし、どこかで出会うことがありましたら、その時は便宜を図らせてもらいますよ」
「それは助かる。僕らもドミニクを見つけたら、優先して商品を買わせてもらうよ」
こちらからもそう伝えておく。
「私もお二方の無事を祈っておりますよ」
「ドミニクの方もね。今回みたいなことにならないよう祈っているよ」
お互いに相手のことを気遣う。
「それじゃあ出発します。皆さまお元気で」
ハヤトが告げると、会話は終わったとばかりにアーリアは不死鳥へと変化した。そして背に乗ったのを確認すると、大空へ向かって羽ばたいた。
「お元気でー」
手を振る一同に向け、ハヤトも手を振り返す。そうして皆の姿が見えなくなると、正面に向き直し、アーリアへ確認をする。
「ちょっと寄りたい所があるんだけどいいかな?」
「にゃ? どこにゃ?」
そう問いかけるアーリアに、ハヤトは行き先を告げる。
「王国だよ」




