07
本日1話目
昼食を終え、早速山にあるという不死鳥を祭る祠へと向かうことになった。祠までの道は整備されている上に一本道のため、特に迷うといったことはなかった。
「着きました。ここが不死鳥様の祠です」
山の中にも関わらず、そこは少しひらけた場所で、目の前には高い崖が切り立っていた。木々の間からは太陽の木漏れ日が降り注いでいて、その照らす先には歴史を感じさせる祠が建ててある。
木製で出来た決して小さくはないその屋根には、アーリアを模した不死鳥の像が乗せられていて、祠の中には、族長が戻したのであろう霊石が鎮座していた。
「とても神秘的な場所ですね。昔からこうなのですか?」
「はい。この場所はとある男を始めとし、代々村の者が維持し続けてきました。そのため、長い歴史があります。お聞きになられますか?」
「是非聞かせてください」
祠についての歴史を説明してもらうことにした。
案内役の女性から、この祠について話を聞かせてもらった。
要約すると、昔この場所で大怪我を負った男をアーリアが助けたそうだ。男は感謝を込めて祠を作り、不死鳥の姿を刻んだ石を祀って食料を供えるようにした。すると、時折食料がなくなっていたから彼女が食べてくれたと知り、大層喜んだ。それから男は、この地を神がいる場所として噂を広めると、一人、二人と集まっていき、最終的には村となった。祠へのお供えは、村の住民で行われるようになっていて、中には山で怪我をする人もいたらしい。そんな人たちの前にアーリアは現れ、怪我を癒していたそうだ。
「これはどのくらい前の話なんでしょうか?」
「およそ五百年ほど前となります」
「大体神聖歴になった頃ですか……」
確かそのぐらいから、神を崇めるという習慣が生まれだしていた。
「アーリアは当事者だけど、実際にはどうだったの?」
と聞けば、アーリアは目を泳がせて必死に当時のことを思い出そうとしているようだった。
「も、もちろんにゃ。あー、えーっと……」
落ち着かない様子をしていたが、急にすっきりしたような顔に変わった。
「そうにゃ、思い出したにゃ! 確か痛そうな姿してて可哀そうだったから、気まぐれで治してあげたにゃ」
「じゃあお供え物の話は?」
「あ、あれは食べ物が腐っていくのがもったいないと思ったにゃ……。どうせなら食べてしまおうかにゃー……と」
「ふーん。それで食べ物のお礼に自分の力を石に込めたと?」
あの霊石には、アーリアの魔力が込められていた。
「貰うばかりじゃ悪いと思ったにゃ……。ただの石より力を持つ石の方が、ありがたく感じると思ったにゃ」
アーリアに確認を取ったところ、概ね事実のようだ。それに、今もこうして霊石と崇められていることからも、ありがたく感じているのは確かなのだろう。
「てっきりアーリアは、昔から人を苦手に感じているのかと思ってたよ」
「アタシが人を苦手になったのは、あの出来事のせいにゃ。それまでは、目についた人を助けるぐらいしていたにゃ。そもそも――」
アーリアが会話を続けようとしたところ、慌ただしくこの場へと駆けてくる人物が現れた。
「ここにいましたか不死鳥様、とその主様」
「そんなに急いでどうしたにゃ?」
「大変です。村に大軍が現れました」
その人物は、村に突如訪れた危機を知らせてきた。
急いで村へ戻り、詳細について聞いた。どうやら大軍は、この村から少し離れたところにある王国らしい。現在は族長が対話を試みているらしいが、向こうの用件としては我が国の商人を解放しろというものだった。
商人という単語を聞いてもしかしてと思ったハヤトは、アーリアへ少し待っているように告げ、急いで牢屋へと向かう。
牢屋の場所に入ると、檻の中に商人はいた。ハヤトは見張りの者に話を通し、商人と会話する許可をもらう。
「わざわざ不死鳥の主様が一体どうしたんですか?」
牢屋へと近づくと、ドミニクはこちらへと視線を向けながらそう問いかけてきた。
「今、この村の近くにある王国から大軍が来てるそうだ。向こうとしては自国の商人を解放しろと言っている。――ドミニク、あんた何か心当たりはないか?」
すると、ドミニクは肩をすくめホッとした様子を見せた。
「やっと来ましたか。思ってたよりかは遅かったですね」
「……あんた、このことを知っていたのか?」
「ええ。元々あの霊石を取ってくるよう依頼してたのはあの王国なんです。予定の時刻を過ぎても到着しない場合、この村に来る手筈になっていたんですよ。だから、私を解放しないと大変なことになりますよ」
ドミニクは、先ほどとはがらりと変わって、態度を大きくしていた。この村程度では、襲われればひとたまりもないため、解放せざるを得ないと思っているのだろう。
確かにそれは事実ではある。けれど、自分だけで牢から出す判断を下せるはずもないので、ひとまずアーリアの所に戻り、族長が帰ってくるのを待つことにした。
暫くして族長が帰ってきたので話を聞いた。最初に話を聞いた通り、向こうの要望としては商人を解放しろとのことだ。
その上、解放しない場合は商人を探すため、この村を蹂躙すると言っていたらしい。抵抗すれば殺し、大人しくしているなら奴隷にしてやるとも。
対応をどうするのか聞くと、族長は商人を解放して平和的に解決したいと話した。一応自分も戦う準備はあると告げたが、大軍を相手には無謀だと言われて諭された。
こうして、王国と平和的な交渉を行うため、商人を連れて村の外へと向かうこととなった。




