05
本日1話目
指導者然とした男に話を聞くと、やはり盗賊ではなく、この近くにある村の住民とのことだった。そして、彼はその村の族長をしているそうだ。どうしてこのようなことになったのか経緯を聞いた。
すると、どうやらドミニクはその村で一晩過ごしていたという。その翌日、ドミニクが去った後に不死鳥を祭る場所に行くと、例の石が無くなっていたそうだ。
そして石が盗まれたと気付き、急ぎ数人で追ってきたが、敢え無く撃退される。仕方なく、今日は再び人数を連れて来たというわけだった。
族長はドミニクが盗んだ犯人だと判明すると、拘束して村に連れていくと言った。ハヤトとしては、一応食料を分けてもらったこともあるので、殺しはしないように一言添えておいた。
「よかったら我らの村に来ないか?」
後は村に戻るだけとなったところで、族長がそんなことを言ってきた。
「いいんですか? 僕はあなた方に敵対していたのですよ?」
「だが最終的には我らの言い分を信じてくださり、こうして取り戻すのに協力してくださった。これこそ神の思し召し。そんな人を何もせず帰したとあっては、神に見放されます」
確かに不死鳥様のおかげだけどね、と一人でボソッと呟く。
「折角こう提案してくれてるけどどうする、アーリア?」
「行くにゃ!」
隣にいるアーリアに確認すると、彼女はそう答えた。
「彼女はアーリアという名前なのか?」
「ええ、そうです」
会話を聞いていた族長は、アーリアという名前に反応した。彼はアーリアをまじまじと見ていたが、次第に顔が青ざめていった。
「そ、そのお姿……。文献で拝見したことがございます。もしや、あなた様が不死鳥様であられますでしょうか?」
恐る恐る問いかけると、アーリアは顔いっぱいに笑みを浮かべ、胸を張って偉そうな態度を示した。
「よくわかったにゃ。アタシが不死鳥アーリアにゃ。褒めて遣わそうにゃ!」
傍から見ているとふざけていることがすごくわかるが、彼らにとっては大まじめで、ははーと言って村人全員が地面に平伏していた。
「苦しゅうないにゃ。頭を上げるにゃ。これからアタシたちを村へと案内するにゃ」
こんな経験は初めてのため、少し楽しそうなアーリアは、上機嫌な様子で為政者ごっこをしていた。
「承知いたしました。ほらお前ら、不死鳥様の馬をすぐに準備しろ! 後は不死鳥様の従者様の分もだ!」
と急に気になる単語が飛び出してきた。
「不死鳥様の従者様?」
疑問に思っていると、彼らはさも当然だとでも言うような顔をしていた。
「はい。不死鳥様にお仕えされているのですから、従者様であられましょう。もしかして、違われるのですか?」
その問いに何て答えようか迷っていると、
「その者はアタシの主様にゃ! アタシよりもっと偉いと心得るにゃ!」
なんて答えるものだから、彼らの中で勝手に守護神様より偉い立場になってしまった。
そして待っていると、神とその主様のために二頭の馬を用意してくれた。
「わざわざ用意してもらって悪いんですけど、僕らは二人で馬に乗るから一頭で大丈夫です」
アーリアは自分一人で馬に乗れないから片方だけでいいと告げたが、目の前の男はそう捉えず、何て謙遜されるお方なのだと勝手に評価を上げていた。
「主様、諦めて崇め奉られるにゃ」
「……承知いたしました、不死鳥様」
「にゃにゃ!?」
そうして用意してもらった馬に乗り、彼らの村へと向かった。暫く馬に乗って進み続けていると、時間も夕方となる頃ようやく彼らの村に着いた。
「ここが私たちの村となります」
族長がそう告げた先には村があった。その村は外敵から身を守るため、人の高さほどのしっかりとした柵が切れ間なく配置されてた。柵のせいで村の中をはっきりと見ることは出来ないが、ここから柵の終わりが見えないことから広大な村であることは想像できる。
村の入口に案内され通り抜けると、そこには背後を山々に囲まれた、予想通り広大な村があった。村の中には木造の住居が多く散在しており、長閑な田園風景が広がっていた。
族長に指示され、村人によってドミニクは牢屋へと連れていかれた。
一方ハヤトたちは、族長の後に続いて田畑の間を進んでいくと、村の広場へと辿りついた。恐らく村の誰かが連絡したのだろう。暫く待っていると、族長が帰ってきたことに気付いた村人たちが、続々と広場に集まってきた。
そして、これ以上人が増えないのを確認すると、族長は村人に向かって声をあげた。
「皆の者。奪われた不死鳥様の霊石だが、無事取り戻すことができた。そして、犯人である者も捕らえ、現在牢屋に閉じ込めてある」
広場に集まった村人は、その報告に歓声を上げた。
「そしてその犯人だが、とあるお方より傷つけないよう申しつけられた。故に、危害を加えることは禁じる」
族長のその言葉に、村人たちは何故とか、どうしてといった疑問を浮かべていた。
「皆の気持ちもわかる。私に申し付けるような人物とは誰だと。安心せよ、今からその人たちを紹介する」
村人たちにそう告げた後、ハヤトとアーリアにここへ来るようお願いした。
アーリアが楽しそうに進むので、ハヤトは仕方なくその後をついていった。
「紹介しよう。こちらの少女はアーリアという。我らが守護神、不死鳥アーリア様そのお人である! 皆の者、頭を下げよ!」
村人たちは最初半信半疑だった。けれど、一人が文献で見たことがあると言い出したのを皮切りに、次々と頭を下げ始め、次第にその場の全員が頭を下げることとなった。
するとその光景にアーリアは満足したのか、胸を張り、一生懸命尊大な振る舞いをしようとしていた。
「皆の者、頭をあげるにゃ。アタシが不死鳥アーリアにゃ。今日はこの村に泊まることになったからよろしくお願いするにゃ」
村の人々は、あれが不死鳥様かとか守護神様は我らを見捨ててなかったなど口々に言っていて、感涙を流していた。
「そしてもう一方。こちらは、我らが不死鳥様の主となられる方だ。皆の者、不死鳥様以上に敬意を持って接するように!」
そう告げられたが、村人はハヤトの覇気のない様子に戸惑っていた。
「どうもよろしく」
その上、このように軽い一言だけを返され余計に混乱していたが、族長の叱咤によりアーリアの時と同様に頭を下げていた。
「さて。今夜は宴だ! 我らが守護神、不死鳥アーリア様とその主ハヤト様がこの村に来られたのだ! 皆で祝おうぞ!」
その言葉が終わるとひと際歓声が上がり、村人たちは散り散りになって、一斉に宴の準備を始めた。
「アーリア様、ハヤト様。すみませんが、宴まで少々お時間がかかります。我が家にて暫し休息なさってください」
二人は了承すると、再び族長に先導されて彼の家へと向かうこととなった。




