スミレさんのお漬物①
休日の朝早くショウの部屋は一段と騒がしかった。
「わぶぅ!がうぅ!!」
「ケルさん、少しだけ散歩に行くだけでしょう。何でそんなに嫌がるの?」
大暴れのケルに悪戦苦闘するショウ。
見ての通りケルは散歩が大嫌い。
こっちに来てからケルは「食べたら寝る」のループ生活をしていた為、ブクブクに太ってしまったのだ。
更に、年に1回あるケルの健診で専属(あの世)の獣医に来てもらった時に「ちょっとケル君太りすぎだねー」っと言われていたのをショウは何とか運動させようとしていたが………
「がうぅ!がうぅぅ!がぁ!!!」
ケルは断じて拒否の態度。
そんなケルにショウは冷たい声でひと事。
「このままだと、姉ちゃんに嫌われるよ。「ブクブクのケルさん嫌い!!」って」
「がぁ!!?……………ばぅぅん………」
断じて拒否の態度が徐々にしょぼーんっと悲しげな表情になったケル。
暴れる事を止めて渋々、散歩に行くことを了承した。
「(やっぱ、姉ちゃんには嫌われたくないんだなぁ……)」
しょぼーんっとしているケルを見ながらドアを開けると、一人の初老の女性と目があった。
隣の部屋に住んでいるスミレさんだ。
「ショウ君、おはよう。これからケルちゃんの散歩?」
「おはようございます。ケルさん最近太りすぎたんで……」
「がぶぅぅん………」
「あらあらー。でもケルちゃん、太り過ぎは良くないからねー」
落ち込んでいるケルの頭を優しくスミレは撫でる。
スミレに撫でられ嬉しそうに尻尾をふるケル。
「(基本的に女性は好きなんだよねぇ…老若関係無しで)」
現金な犬っとショウは思った。
そんな事をショウが思っているとは知らず、スミレはショウに話しかけた。
「あ、そうだ。ショウ君。ぬか漬けの胡瓜さんがあるんだけど食べる?」
「本当ですか。是非、いただきたいです。スミレさんのぬか漬胡瓜さん、大好きなので嬉しいです」
感情を表にあまり出さないショウが嬉しいそうに微笑んだ。
お隣さんという事もあり回覧板を渡す時や挨拶など、しゃべる機会がある。
更にスミレも料理好きで、お互いに作りすぎた煮物やら炊き込みご飯やら色々とおすそ分けしている。
「そう言ってもらえると、私も嬉しいわー♪じゃあ、タッパに詰めておくわね」
「ありがとうございます。それじゃあ、行ってきますー」
嫌がるケルを引きずりながら、ショウとケルは散歩に行った。
1人と1匹の後ろ姿を嬉しそうに笑いながらスミレは見送った
「行ってらっしゃいー」




