第24話:悪女、メカにも強い
ヴェロニカは家へ戻ると、屋根裏部屋に駆け上がった。
「モルス!」
『きゃんきゃん!! きゃん!』
せわしなく吠える理由が、ようやく分かった。
檻のカギを開けると、怒り心頭の様子で仔犬が飛び出してくる。
「お前、シグルドから悪魔の瘴気を感じていたのね?」
『きゃんきゃんきゃん!』
言葉が通じなくても分かる。この態度、絶対にYESだ。――『そうだと言っているだろうが、愚か者!』と罵倒しているのだろう。
「……まさかシグルドが、あんな状態だったなんて」
シグルドが悪魔と契約していたこと自体は、ヴェロニカも知っていた。原作が、そういう設定だったから。
でも、まさか末期だったとは。
(このままだとシグルドが『悪魔の苗床』になっちゃう! 原作では、ヴェロニカが暴走したあとだったのに)
原作でシグルドが悪魔の苗床になるのは、街が滅んで居場所を失い、王都に逃れたあとだった。だから街さえ無事ならば、まだまだ時間があると思い込んでいた。
いずれ原作とは違う形で、聖女に悪魔を祓わせれば大丈夫、と。
(手遅れになる前に、シグルドを助けなきゃ……!)
『きゃんきゃんきゃん!』
モルスが何かを言っている。
「……分からないわ、モルス」
会話できれば、助言をもらえるかもしれないのに。
「ねえ、元の姿に戻れない?」
『きゃん!』
きっと戻れないのだろう。自力で戻れるなら、いつまでも仔犬姿でいるはずがない。
「……死なせるものですか」
ヴェロニカは、ぎゅっと拳を握りしめた。
推しが死ぬなんて、許さない。自分は何ができるだろう?
ふと、聖女アリアの姿が脳裏をかすめた。
――『聖女の役目は悪魔を退け、人々を幸せにすることです。だからわたしには、悪魔の匂いが分かります!』
卒業パーティで、ヴェロニカを断罪してきた聖女アリア。悪魔を祓える人間はこの世で唯一、聖女だけ。
「……使えるモノは、どんなモノでも使いましょう」
もちろん、それが聖女でも。
「そのためにはまず、アリアと接触しなければなりませんわね」
ヴェロニカは、サイドテーブルの引き出しを開けた。そこには、分解途中の『罪人の腕輪』をしまってある。
「ようやく、これの使い道が決まりましたわ」
ヴェロニカはそれをテーブルの上に置くと、工具を握りしめた――。








