第六話 お出かけ
────美希、なんでお前、泣いてるんだ……────
────だって〜、このストーリーが涙無しには見れなくてさ〜。あ〜推しを幸せにしたい。なんでこんな目に合わなきゃ行けないの〜────
────そりゃストーリーに引き込むためだろ。何も無かったら面白くないだろうしな────
────お姉ちゃん、本当に冷めてるよね。はぁあ、私の推しなんてね、やっと見つけた居場所を無くしてるんだよ!『月音村』って言うだけどさ〜……────
「はっ! ゆ、夢か……」
千颯は勢いよくベッドから飛び上がった。
懐かしい夢を見た千颯はさっきの夢を思い出していた。
それは千颯、もとい祐希が妹の美希と話していた時の話だ。
(もしかして、千颯の闇堕ちの理由って月音村がなくなることか?……でも、それだけで?……)
千颯はもう一度ベッドに寝転び、考える。
(もし、それを阻止できたら私が闇堕ちする事も月音村が無くなることもないかもしれない。もうあの日には戻れないのなら、今を生きるしかないしな。)
そう納得すると千颯は時間を確認する。
「まだ、深夜3時か……よし、寝よう」
どうやらまだ起きているには早い時間だった千颯はもう一度寝ることにした。
*
「うわぁぁぁぉぁぁ!むりむりむりむり!降ろしてーーーー!」
「やっほーーーーい!じいちゃんいけーー!」
千颯は絶叫していた。
そんな千颯を後目に慧斗が笑顔で叫んでいた。
「ははは!大丈夫だ!これでもこの魔道車で30年は乗りこなしておる!さ!行くぞお主ら!!」
そう夏吉が言うとそれにづづいて千夜子がこう告げた。
「大丈夫じゃ!夏吉の運転はわしより上手いからな!」
そういう千夜子に千颯は青ざめるしか無かった。千颯の気もしれず、車はどんどん山道を越えていく。千颯は心の中で叫ぶしかなかった。
(これが上手い方ってなんだんだよこの車!……ていうか本当にむり!……誰か助けてくれーーー!)
なぜこんな事なっているかと言うと、遡ること数分前……
「暇だ……」
千颯はベッドの上で安静にしてるよう言われたため寝るしかなかった。
(あー、なんかやりたい。ベースがあればなぁ……この世界にも楽器あるかな……いや、現代に近い設定だしあるか…)
そんな事を考えていると病室のドアが勢いよく開いた。
開いたドアの方を見ると慧斗笑顔でこちらを見ていた。
「おーーーい! 出かけるぞ!」
「は?、安静にしてろって言われたんだか?」
「大丈夫だ、燐斗には許可を得ておる。千颯の必要なものを買いに行こうと思ってな。やっぱり自分で使うものは自分で選びたいじゃろ?」
そう言ってこちらに来たのは2人の祖母である千夜子。
そんな2人に連れ出されるように病室を出た千颯達を待っていたのは義理の祖父の夏吉だった。
「おーい、こっちだー!」
待っていた夏吉は見たことない車に乗っていた。
魔道車と呼ばれる自動車に似た車はハンドルの所に魔法石が組み込まれておりそこに魔力を送り込むと普通の車のように動くものだそうだ。
「よし、じゃ出発するぞ!」
「レッツゴー!!!」
普通の運転を想像していた千颯を他所に、車はとんでもないスピードで発進する。
「え?」
(ちょっと待て。なんだこれ!!!早くないか?というか時速150kmって交通違反じゃ…)
心配をする千颯を他所に、カーブに差し掛かった車は某車漫画のようにドリフト走行をしてカーブを曲がる。
そんな運転に千颯以外2人は楽しそうに声をあげる。
そんな2人を他所に千颯は叫ぶしか出来なかった。
「むりむりむりむり、ぎゃああああ!!!!」
*
「はあはあ……怖かった……」
到着したのは千颯も前の世界で見たことある某大型ショッピングモールだった。
しかし、着いたはいいものの当の本人は予想だにしない車の運転でヘロヘロだった。
そんな千颯に慧斗は声をかける。
「おい、大丈夫か?魔道車に乗ったの初めてだったのか?」
その言葉に千颯は頷く。
そんな千颯に申し訳なさそうに、夏吉が声をかけた。
「そうだったのか、それはすまんかったな……。一応あれが最低速度だったんだが、その様子じゃ、普通の車の方が良かったか…」
(あれが最低速度!?ていうか普通の車あんのかよ!……ならそっちの方が良かったな)
千颯は心の中でツッコミながら顔を上下に動かし、何度も頷いた。
そんな千颯の様子に千夜子はほれみたことかという表情で口を開いた。
「ほら、だから言ったじゃろ。全く……」
「だって喜んでくれると思ったんじゃよ〜慧斗は喜んでおったから。それにこっちの車の方が燃費もかからんし、早く行けるから」
「だからってな、ワシに任せておけとあれほど……」
「いや、千夜子さんの運転はちょっと……」
「なんじゃ、わしの運転になんか文句あるのか……」
「えっと……」
そんな痴話喧嘩をしてる2人に呆れながらも千颯は心に決める。
(……しばらく2人の車には乗らないでおこう…)
そんな千颯に慧斗は小さい声で千颯に話しかける。
「ばあちゃんの方が運転やばいから……あんま乗んない方がいいぞ。」
「え、まじで」
「おう」
千颯は人はやっぱり見かけによらないなと思った日だった。
まだ、痴話喧嘩をしている2人に慧斗が呆れながら声をかける。
「もう、ばあちゃんもじいちゃんも早く買い物行こうぜ。千颯も落ち着いたみたいだしさー。じゃないとゲームセンターに行く時間無くなっちゃうだろうー!」
その声に2人は慌てたように喧嘩をやめ、千颯たちの方に振り向く。
「あ、そうじゃったそうじゃった。行こう行こう」
「うむ、そうじゃな。まずは服屋でどんなのがいいか選びに行くぞ。千颯」
「うん」
その声に待ってましたと言わんばかりに慧斗が千颯の手を握り引っ張っていく。
「よし、行くぞーー!」
「うわっ、そんな引っ張るなって!……」
「ははは、可愛いなうちの孫たちは」
「そうじゃな」
そんなこんなで4人の買い物が始まるのだった。




