第十五話 想い出の刀
穏やな雰囲気で2人は縁側で過ごしていると不意に千颯は思い出したように千夜子に話しかけた。
「あ、そういえば……おばあちゃん、これなにかわかる? この前の燐斗先生の出来事があった時に気がついたらベースを収納魔法で収納してたみたいで…自分なりに収納魔法のやり方を調べてたらこれが出てきたんだけど…」
千颯は一つの日本刀を千夜子に見せた。
その刀は収納魔法がどんな風に使えるか確認していた過程で千颯が誤って自分が所持しているものを全て出してしまった時にてできたものだった。
千颯の祖母である千夜子なら何かわかるかと思った千颯は千夜子の手があくのを待っていたのだ。
(しかし…数冊の本と日本刀しかないってどんな生活環境だったんだよ……)
千颯が持っていた日本刀を見た千夜子は驚いた顔し、懐かしそうにその刀を見つめた。
「…そうか…その刀お主に受け継がれておったか…」
「え?…おばあちゃんやっぱり知ってるのか?」
「知ってるも何も、その刀は30年以上前にわしが作らせたものじゃ。雪那の側を離れる時に守り刀としてあやつに渡したものじゃよ」
「守り刀…」
千颯から刀を受け取った千夜子は刀の鞘を抜き刀身を確認する。
「そうじゃ。わしの知り合いの鍛冶師にお願いして作らせたのじゃ。懐かしいのぉ…『雪月剣』この刀の名前じゃ。雪那の名前をもじってつけた名前じゃ」
「それがこうしてお主に渡っておるのはなんだか考え深いのぉ。それにここ、この刀紋の下にある打除けがあるのがわかるか? これが三日月のように見えるじゃろ。だからこの名に月という名前を入れたんじゃ」
そう言って刀紋を見せてくれる千夜子に千颯は興味津々で刀に顔を近づける。
そんな様子に千夜子は思い出したかのように慌てて刀との距離を取らせた。
「そうじゃった。千颯はとんがったものがだめなのであったな…すまん…」
「あ、いや…一応刃物は大丈夫なんだ……変かもしれないけど」
「え?」
「そうじゃないと剣道とかダメにならない? 私は針のように尖ったものがだめなんだ。お箸のとんがったやつとか注射の針とか裁縫道具の針とか…だからお箸も割り箸みたいに先がひらたいのだったら大丈夫なんだ」
(昔から料理はしてたし…まあ、裁縫は破滅的にできないけど…尖ったのがダメな理由は覚えてる。ただ、祐希としての出来事だしな…理由はいえないよな…)
千颯の言葉に安堵した千夜子はほっとしたように口を開いた。
「そうだったのか。まあ、ならよかったのじゃ。魔法を使うとき剣が必要じゃからな」
「え? そうなの? でも私無くても使えたよ。氷室に力は借りたけど…」
千夜子の言葉に千颯は首を傾げる。
そんな千颯の様子に驚きつつも千夜子は刀を見ながら答える。
「確かにわしら魔法師は刀や武器を使わずに魔法を使うことは出来る…たがな」
千夜子は刀に魔力を送るように手を添える。
すると刀が青白く光り始めた。その瞬間千夜子が立ち上がり刀を振るった。
「氷月龍剣技魔法『氷花月刃』」
千夜子が言葉を紡ぐと刀が光り始め、千夜子が庭においていた試し斬り用の巻藁に切りつけると切り口から氷の花が覆う。全て覆われると月明かりに照らされるように光り、光の粒が舞うと先程まであった巻藁が跡形もなく消えてしまった。
千夜子が刀を鞘に収めると千夜子が見せた魔法で固まってる千颯に向き直り、千颯に日本刀を返し、口を開いた。
「こんな風に刀を使えば、少ない魔力で的確に魔法を使える事ができるんじゃ。そしてわしのように氷と月魔法を使う者のことわしらは『氷月龍の使い手』と呼んでおる。まあ、千年前は使い手の部分が守護者だったようがな」
千夜子から刀を受け取った千颯は刀をしっからと持ち、千夜子をまっすぐ見つめる。
「氷月龍の使い手…それは私もなれる? おばあちゃんみたいに誰かを守るために魔法を使えるような魔法師に…」
「そうじゃな、お主がこの刀を持っている時点でお主はこの刀に選ばれたんじゃろうな。そうじゃ、お主はあの木の上て黄昏てる呑気な氷室が見えるか?」
千夜子の問いかけに千颯は木の上を見る。すると木の上であくびをして器用に寝ている氷室を見つける。
「うん、めっちゃあくびしてる…」
「フフフ。なら上出来じゃ。まあ、あやつが千颯に魔力を渡した時点でお主には氷月龍の使い手の才能があると氷室は見抜いておったんじゃろうがな」
「千颯よ、わしは出来るだけお主のことは甘やかしたいんじゃ。だが…それと魔法を教えることは違う。かなり厳しく行くぞ。それでも良いか?」
「うん。やる!」
千颯が力強く言うと千夜子は満足そうに笑って千颯が持っていた刀を取り上げる。そんな千夜子に千颯は驚いた顔をする。
「え?」
「まぁ、その前にこの刀所々鯖がついてるところがある。まずはこの刀の手入れからじゃな」
笑顔で言う千夜子に千颯は頷き、力強く答えた。
「はい!…ご指導よろしくお願いします!おばあちゃん」
「ハハハッ!任せろ!」
そう言うと2人は刀の手入れのため千夜子の作業場に向かっていった。
そんな2人の様子を見守っていた氷室は微笑みながら見つめていた。
(また、新たな氷月龍の使い手が引き継がれるか…あいつが言っていた出来事が起こる前にこちら側も手を打たないとな…そのために…千颯よ強くなれよ)




