第十三話 慧斗の幼なじみ
前の方から千夜子が2人に気づき声をかける。
「おー、こんなところに居たのか!……氷室また私の孫をからかったりしてないじゃろうな……」
千夜子はジト目で氷室を見る。
「いや、してねえよ……たくっ孫馬鹿が……」
「え?なんだって?」
「なんでもないです!!」
千夜子と氷室がやり取りをしている横で千颯は呆れ顔をする。
最近は、孫を氷室に取られて悔しいのか千夜子は氷室への八つ当たりが少し酷いようだ。
千颯は氷室に助け舟を出した。
「おばあちゃん、用事があったみたいだけど……どうしたの」
「あ、そうじゃった。今から夏吉と慧斗が剣道の稽古するんじゃか、千颯もどうじゃ?やってみないか?」
「剣道!……やる!」
嬉しそうにする姿に千夜子は驚くが千颯はやるき満々だった。
実は祐希の時に剣道をやってたことがあり、最終段位は六段だった。
全国大会でも1位に入ったことがあったのだ。
バンドが人気になり始めてから趣味で触れる機会っが減ってしまい剣道に触れるのは久しぶりだった。
だからこそ久しぶりに触れる剣道は千颯にとって嬉しいことだったのだ。
そんなこととはつゆ知らず、孫が剣道に興味を持ってくれたと思った千夜子は嬉しそうに千颯を稽古をしている道場に連れていくのだった。
*
「おーーい!こっちだぞー千颯!」
剣道場に着くと夏吉と慧斗が千颯を迎え入れてくれた。
特に慧斗は嬉しそうだった。
そんな慧斗の横には千颯が見たことない3人の子がいたのだった。
そのうちの青緑の髪にピンクのメッシュが入っている触覚のところが三つ編みになっているポニーテールのきつめ女の子が千颯を睨みながら見ていた。
(なんだ……めっちゃ睨まれてる…)
千颯も目を逸らしてはいけない気がして睨んでる女の子を見つめる。
そんな様子を見守っていた紫の髪に前髪を編み込んで紫色の小さな菊の花のアクセサリーをつけてサイドテールしているタレ目の灰色の目のおっとりした女の子が微笑みながら千颯に話しかけてくれた。
「うふふ、ごめんなさいねぇ。なーちゃんはけーくん取られてちょっと拗ねてるだけなのぉ。気にしないであげてね」
「はあ!?べ、別に拗ねてねーし。ただ慧斗が最近よく千颯、千颯うるさいからどんなやつか知りたかっただけだ!」
そう言うとなーちゃんと言われた女の子は千颯に近づき腕を組みながら仁王立ちで口を開く。
「あんたが月神千颯よね。私は桜崎南雲。別に仲良くするつもりもないから、稽古一緒にするのはいいけど邪魔するなら追い出すからな!」
「わかった。邪魔する気はないがまだ体力があまりないから迷惑をかける事もあるかもしれない。よろしく頼む。桜崎さん」
(なるほど……南雲という子は慧斗に気があるのか。恋愛事情は色々あるし、あまり相手を刺激しないようにしよ。)
自分よりも大人な態度をとる千颯が不満なのか少し悔しそうな様子で千颯を睨む南雲。
そんな二人のやり取りを側から見ていたもう一人の女の子はクスクスと笑って二人の間に割り込む。
「もう。そんな態度だから誤解されちゃうのよ、なーちゃんはぁ。えっと千颯ちゃんだっけぇ。うーん…ちーちゃんだと千夏さんや千夜子さんと誤解されちゃいそうだしぃ…ねえお誕生日はいつ?」
「え、なんで急に…確か2月22日だが……」
「2月22日………じゃあ猫の日だしぃ…にゃんちゃんだねぇ。それにツンツンした警戒心の強い猫ちゃんみたいだし!よろしくねぇにゃんちゃん」
「にゃ、にゃんちゃん?」
(なんで猫?なんだこの子……)
嬉しそうに話す女の子は千颯の頬を指でつつきながら話す。
そんな女の子の距離感とあだ名に困惑している千颯にさっきまで黙って傍観していた白髪の癖っ毛で青目の少年が眠そうなゆったりした口調で声をかける。
「はぁ〜。燎香は、変なあだ名をつけるのが癖なんだ〜。いちいち気にしてたら疲れるよ〜。あ、僕は菊市蒼。さっきの変なあだ名をよくつけるのが菊ノ宮燎香一応僕の従姉妹なんだ。よろしくね〜。ふぁぁ……ねむっ」
「はぁ……えっとよろしくです。菊市さん、菊ノ宮さん……」
「変なあだ名ってあおくんひどくない?可愛いじゃないにゃんちゃん。ねぇ?」
「えっと……私はどっちでも…」
反応に困ってると慧斗が口を開いた。
「お前ら、あんまり困らすなよ!お前らが気になるって言うから幼なじみのよしみであわせてやってるんだから!……っていうか早く、稽古しようぜ!やる時間なくなっちゃうだろ!」
それに続いて夏吉も口を開く。
「そうじゃな。ほれ、千颯この道着に着替えておいで。他のものは稽古始めるぞ」
「わかった……」
「「「「はい!」」」」
千颯は急いで道着に着替えに向かった。
そして着替えた千颯を含めた5人の剣道の稽古がはじまるのだった。




