第十一話 狂科学者医師 其の二
少し残虐なシーンが言葉で綴られます。
お気をつけください。
桜町燐斗もとい龍音寺燐斗は代々、巫女を襲名する家柄に生まれた。
姉は当代の巫女で、母親は先代の巫女で父親も先代の代の花の守護者だった。
そんな両親から生まれたため期待されたが、燐斗は魔力が少なかった。
そのためあまり周りから期待されずに育った。
しかし、燐斗は諦めず勉学に励み、医学部を卒業し、魔法警察本部の医療班としてその技術で警察本部に重宝されていた。
ことが起きたのはある雨の日だった。
燐斗には最前線で魔物や妖魔と戦う親友がいた。
その親友は家柄ではなく燐斗として仲良くしてくれる数少ない親友の1人で明るく元気な人だった。
しかし、その日親友は利き手を失った。
魔物と一騎打ちをした際、魔物の攻撃によって失ってしまったのだった。
この世界の魔法は万能ではない。
失ったものを生やしたりする事はできないのだ。
その失った腕があれば繋ぎ合わせ修復することはできたかもしれないが魔物や妖魔が大量にいた現場ではその腕を探すのも困難だった。
何とか一命を取り留めた親友も元気を失い笑わなくたってしまった。
そんな親友に何とかしたかった燐斗は古書や文献を探しひとつの可能性に気がついた。
それは『魔道義手』という義手だ。
魔法石を埋め込み、自身の持っている魔力と繋ぎ合わせることによって、通常の義手とは違い魔力と神経または筋肉が共鳴することによって以前と全くおなじように手を動かせる事が出来る義手のことだ。
普通の義手ではできない、重い荷物を持つことも、剣を持つこともそして繊細な手の動きも脳から伝達されること全てが魔法石によって可能性となる仕組みだ。
しかし魔道義手や義足、義眼といった魔道義肢 や装具は造り手が居なくたってしまい失われてしまった技術だった。
そんな技術を燐斗は古い文献や論文などを読み漁り再現することに成功したのだった。
そしてそれを発表し、親友に送ったのだった。
以前と同じように使えるようになった手に親友はすごく喜び周りも燐斗を褒めに褒め持ち上げた。
燐斗は一夜にして有名な魔道医師となった。
しかし、あまりにも高度の技術で作られた義手は本物と遜色のないものだったためかある噂がではじめたのだった。
それは……
『あの義手は本当に物で出来ているのか』
『本物は死体からとったものに魔法石を埋め込んで作られた物ではないだろうか』
『まさか、あの義手を作るために人の腕を切断している狂科学者医師なのでは!』
そんな無いことばかりが噂として流れ始めたのだ。
誰が言い始めたかわかるわけがないのだか1度噂されたことは瞬く間に拡散されてしまった。
最初は燐斗の事庇う者もいたがそれもあまりにすごい速さで広がる噂に庇い切れる者が居なくたっていく。
そしてついには義手を作った親友も燐斗を守るどころか、距離を置き始めたのだ。
その親友に言われた言葉は燐斗の心にまだ傷を残している。
「ごめん、お前の事は信じてる。だが、もう俺はお前を庇い切れない……ごめんもう話しかけないでくれ」
そう言われた燐斗に追い打ちをかけるように状況は悪化していく。
燐斗の同期や、家族、燐斗の姉である巫女の守護者達までもが燐斗を疑い始めたのだ。
その中には千颯の母親の龍月雪那もいた。
雪那は前に言ったように燐斗の初恋の女性だった。しかし、その時には龍月颯助と結婚していた為叶わぬ恋だったが。そんな彼女も最初は燐斗を信じてくれたが……
「ごめんなさい。燐斗くん。颯ちゃんがもうあいつとは関わるなって……ごめんなさい。本当に……」
燐斗の事を信じる者が居なくなっていく状況に絶望した燐斗は影化しかかっていた。その影響からか死を選ぼうとしていた。
それを救ったのは意外にも燐斗の姉である龍音寺桜子だった。
桜子は親友である千夏に弟をお願いっと言って頼んだのだ。
千夏の母が月音村の神主であり影化にも詳しかった為かまた影化する恐れがある弟を見守ってあげて欲しいと頼み込んだった。
「私が救ってもこの場所にずっと入ればきっとまたすぐ影化してしまう。だったらこの場所から離れた場所で穏やかに過ごして欲しいの。私が燐斗の傍にいればまた誰かが彼を責めるかもしれないから」
唯一燐斗をかばい続けてくれた後輩の手を借り、燐斗は千夏の住むこの都会とはかけ離れた月音村に来たのだった。
そして千夜子と夏吉の介抱もあってか回復し、今に至るのだった。
あれから10年以上経ったが、されど10年だったのかもしれない。
未だに連絡を取るのはその後輩と姉の桜子だけだ。
*
「なんだそれ……」
そんな話を聞いた千颯は怒りに震えるしかなかった。
千颯もとい祐希もバンドという芸能活動していればアンチや良くない噂に踊らされたこともあった。
たが、そんな祐希を支えてくれたのはバンドメンバーと妹の美希だった。彼らが居たから祐希としてバンドを続けることができたのだ。
でも、燐斗は親友にも裏切られ、姉以外の家族にも見捨てられている。支えてくれる人はいても信頼していた親友の一言は祐希もとい千颯としても許せない言葉だった。
(変わらないんだな。結局の所……知らない噂に踊らされる。己で見たものではなくとも……この子も影の能力だからと使えないとして捨てられてた。そんなに偉いものなのか巫女というのは……嫌、巫女と言うよりもその周りにいる老害どもかもしれんな。色々ありそうだなこの世界も……)
そんな考え事をして黙っている千颯に燐斗は頭を優しく撫でながら口を開いた。
「ありがとうな。そうやって怒ってくれるだけで俺は救われる。でもお前の母親や父親を悪く言うなよ。あいつらは特にお前の父親の颯助はああいいながらも俺の噂が所からでたのかとか調べてくれてるんだ、今でも」
「え?」
「距離は置く。でもそれは俺と親しげれば親しいほど親しい者が調べた物として信用度かぐっと減るんだ。だから第三者として調べる。あいつはそう言う奴だから。不器用ででも正義感に溢れてる。そういう所は千颯もそっくりかもな。言葉足らずで何を考えるか分からない所も」
「……言葉足らず……」
(そうかもしれんが目の前の子供にいうか普通)
その様子をかたらわで見ていた氷室は笑いをこらえていた。
「だって、お前少し思い出していた事今の今まで黙ってただろ?それに、少し大人びてるからな喋り方とか、かと思ったら感情的に子供みたいに泣くし、そういう所はあいつに似てんだよ。」
(まあ感情的に泣くのは千颯の気持ちの問題だろうし、黙ってたのも事実だし、大人びてる喋り方は……まあ祐希として35歳だったのがあるかもしれんが……なんか嬉しくねえ……ただ、魔道義手か、もしかしたら……)
そんな事を思いながら千颯は口を開いた。
「そうかもしれない……ただ、燐斗先生が居なくならなくて良かった」
「え?」
そんなことを言う千颯に燐斗は首を傾げた。
「こんなことわざがあるんだ。『虎は死して皮を留め、人は死して名を残す』獣の王者の虎は、死んでのちに立派な毛皮を残すように、人は死んだあとに優れた名を残すように努力せよっていう意味。すごくいい言葉だし、私もそうなりたいなって思った。でも、それが見つかったのがその人がなくなった後だった場合と生きてるうちに見つかった場合で変わってくると思うんだ」
「どういう意味だ?」
燐斗は千颯に聞く。
それをほかの大人たちも静かに聞いていた。
「だって、有名な人で死んでから後の発見で有名になる人はいる。有名な科学者でも画家でも音楽家でも。でもそういう人って生きていた時代や、周りとの関わりでそれが上手く評価されなかったり、研究半ばでやめてしまったりするわけでしょ。もしその人が生きている時に評価されてればもっとはやく技術が進歩したかもしれないのに、いいものがもっと生み出されてたりするのに。だからまだそうならなくてよかったって思って。生きていれば何にでも挑戦できるし、何にでもまだやり直せるから。それに……」
そういい終わり何かをいい留まる千颯に燐斗は質問する。
「それに?」
「それに……燐斗先生がつくったのって魔道義手だったよね?」
「ああ、そうだが……」
「それって事は……魔道義眼ってのも作れないかなって思って。難しいなら諦めるし、その、材料がないなら諦めるんだけど……もし、もしも作れるなら欲しいなって思って……片目だけだとやっぱり距離感掴めきれないし、何より両目で見える景色見てみたい。図々しいかな……」
そう言う千颯に燐斗は千夏と目を合わせて千颯に微笑みかける。
「なんだ、そんなことか!いいぜ作ってやるよ。俺は天才医師…だからな!」
「……ありがとう!」
「しっかし、本当に小学生か?よく知ってるなそんなことわざ!」
「あ、えっと、その本で読んで……」
「ハッハッハ!……たくうちのバカ息子にも教えてやりたいぜ本当に」
(とんだ子供だ……全くすごい子だよ)
そういうと燐斗は立ち上がり千颯の祖母である千夜子と夏吉に目を向けた。
「俺、また研究始めます。こういう奴らのために」
そういうと夏吉が嬉しそうに口を開いた。
「そうか。ならわしも協力するしかないな」
そう言ってまた研究が始まるのだった。




