第九話 影化
「何を言ってるんだ……」
(もしかしてハッタリか?。いや、転生者なんて言って信じてもらえるのか分からないし……たとえ神だとしても……)
そんな事を考えていると目の前にいた氷室が口を開いた。
「なるほどな、転生者か……それなら妙に落ち着きがあるのも頷ける。」
「!!!」
(こいつ、心を読めるのか?)
そういうと氷室は薄ら笑いを浮かべる
「あぁ、そうだ。すごいだろ」
「確かに凄い。だが、…少し距離が近い…離れろ!」
そういうと千颯は近くにいた氷室の顔面に蹴りを入れようとする。
咄嗟の攻撃に氷室は避けながら距離をとる。
「あぶねえじゃねぇか!貴様、足癖悪すぎだろ!」
「お前の距離が近すぎだからだ。このロリコンジジイ」
「誰がロリコンジジイだ!全く……というか貴様、さっきの千夜子といる時と態度違うくないか?千夜子にはおばあちゃん…みたいに甘えてたろ!」
その質問に千颯はベースをケースに直しがら答える。
「当たり前だろ。目上の人には敬語を使えって言われるだろ。それと一緒だ。後、そんなおばあちゃん…みたいな態度はしてない!」
「いや、俺も目上の人!しかも神様だぞ!」
「だから?…いきなり初対面で距離を詰めてくる人間?神?がいたら誰だって怖いだろ。それにおばあちゃんは私が転生者だって知らない。だったら子供みたいな態度でいるのが普通だろ!」
ベースを直した千颯は立ち上がり氷室に対して腕を組み、偉そうな態度をとる。
そんな千颯に対して氷室は小馬鹿にしたような言い方をする。
「じゃあ、千夜子にこのこと言ってやろう。そしたらどんな反応するかね〜」
「別に良いし、お前が初対面でセクハラしてきたって言ってやるし!おばあちゃんに泣きついてやる!」
「貴様!泣きつくのは卑怯だぞ!」
まさに売り言葉に買い言葉、子供のようなやり取りが続いた。
そんなやり取りをしていたからなのか少し落ち着いた二人は冷静になってベンチに腰掛けた。
「何やってるんだ。私たち……」
「まったくな………はあ、でさっきの質問に答えろよ。千颯ではないもう一人のお前は何者になんだ」
「それは………わかった。だがここでした話は他言無用だぞ。千夜子さんたちにもいうなよ。」
「わかっている」
(まあ、俺以外の神様たちは気づくかもしれんが、大丈夫だろ…)
千颯はこれまでの出来事を全て話した。
この世界が自分たりから見たらゲームの世界であったこと。
そしてこの先自分が闇堕ちしてしまうかもしれないこと。
この村自体がなくなってしまうかもそれないこと。
千颯の中にいるもう一人の魂が前の世界ではバンドをしたいたこと。
そしてこの世界に来る前に何が起こったのかも全て話したのだった。
千颯の話を聞いた氷室は考えるそぶりをしながら口を開いた。
「なるほどな…しかし千颯としての記憶は覚えてないんだよな。」
「あぁ、そうだな」
「しかし、闇堕ちか……もしかしたら貴様が言っている闇堕ちって影化のことかもしれんな」
「影化?」
千颯は聞き馴染みのない言葉に首を傾げる。
そんな千颯に氷室は説明する。
「影化っていうのは主に影魔法を使うものがなりやすいのが特徴だ。嫌な気持ちや悲しい気持ちになった時、人は影を落とすとも言われるだろ。それが由来なんだが、影魔法を持っているものが暗い気持ちや負の感情に支配されてしまうと影魔法が暴走してしまって自分の影に飲み込まれてしまうことがあるんだ。そうなったらしっかり浄化して元に戻すことができれば良いんだが………失敗するとな…」
「失敗すると……?」
氷室は真剣な表情で千颯を見る。
「『鬼化』または『妖魔化』し、人ではなくなってしまう。そうなってしまうともう殺すしか無くなってしまう。」
「そんな……どうにもできないのか?殺すしか本当にないのか」
「ああ。だが、方法はあるにはある。救える可能性があるのは光魔法(太陽魔法)を使える人間だ。光魔法の中でも強い光を持つものだけだ。」
「それって……」
何かを察した千颯は真剣な表情で氷室を見る。
氷室は頷き口を開いた。
「ああ。巫女として選ばれた者たちだけだ」
「それって……この都市でも5人しかいないってことじゃないか!そんなんじゃ……いくら強い魔法師でも足りないんじゃ……」
「ああ、だから影化のうちに食い止める必要がある。それが影魔法であり、月魔法でもある」
氷室は千颯の髪に触れるとなにか呪文のようなものを唱えた。
千颯の黒髪が触れた箇所だけ水色の髪色に変化した。
「え?……これは?」
驚いた千颯に氷室は微笑み答える。
「元の髪はその色なんだろう。まだ影を上手く使いこなせていないから髪色が黒くなっているだけだ。使えるようになっていけば元の髪の色になるだろうな」
「そういえば、妹がなんかそんなことを言ってたような……」
「おいおい、ちゃんと覚えとけよ。まあ、月魔法にも浄化の力はある。月は夜つまり暗闇を照らす光だからな。まあ、本当に闇に飲まれてしまえば、月の光だけでは照らすことは出来なかいから強い光が必要なんだがな」
千颯は何を思い出したように氷室に質問する。
「あのさ、影化になる前兆ってあったりするのか?」
「あ?前兆……確かにあるぞ。少し周りに黒いもやみたいなのが見えるんだ。」
「!!それって!」
千颯は急いで立ち上がった。
慌てたように氷室の方をみる。
氷室は不思議そうに千颯を見る。
「どうした?千颯」
「もしかしたらまずいかもしれない。二日前ぐらいに燐斗先生の周りに見えたんだ!黒いモヤみたいなのが!」
「何!?燐斗先生ってあの娘婿か!」
「うん……」
「チッ、急ぐぞ千颯!」
氷室は千颯の手を引くと飛び上がった。
「うわっ……」
(まさか………)
千颯は嫌な予感がする。
そんな千颯をよそに氷室は桜町病院に的を絞る。
「しっかり捕まっとけよ!」
「待て待て待て。」
「怖かったら目を瞑っとけ!いくぞ!」
氷室は猛スピードで桜町病院の方に飛んでいく。千颯は再び叫ぶしかできなかった。
「ぎゃあああああああああ!」




