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覚えのない罪で国外追放されたブラコン令嬢は、盲目の兄と新生活を謳歌する  作者: 朝倉 ねり


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38 ロノヴァン王国視点(2)

 豪奢で優雅な白亜の城。

 ロノヴァン王国の王城はその麗しい見かけとは裏腹に、今とても殺伐としていた。


 ダンッ!!!

「なんであの子はまだ見つからないの……!?」

「も、申し訳ございませんっ!」

 王城の中でも最奥にある王妃の私室に続く応接間で、王妃は苛立っていた。


 第二王子フィリップが新たに連れてきた、メーニャとかいう女性を1週間で見限ってから早3週間。

 王妃は国外追放に処したシャロン・スノーリナベルの行方を秘密裏に探らせていたものの、全く行方が掴めていなかった。

(せっかく陛下に頼んで正規の騎士団ではなく、私兵として動かせる禁軍を動かしたというのに……!何故こんなにも情報が出てこないの?)


 そうこうしている間にも、メーニャは沢山の失敗を重ね、甘え倒し、王室の顔に泥を塗り続けている。

 ついこの間など、「わぁ!メーニャ、このドレス可愛いから着てみたいですぅフィリップ様!」などと言って、他家の令嬢が仕立てていたオーダーメイドのドレスを横取りしたばかりだ。

 倫理観どころの話ではない。

 人間性に難ありだ。



 ところで禁軍とは、他国では『影』と呼ばれていたりする隠密特化の国王直属兵のことである。

 ロノヴァン王国直属の騎士団は下手に動かせば目立ってしまい、更に他国に派遣すれば侵略行為と見なされる恐れがある。

 その点、一般人に溶け込める禁軍は一見して兵士には見えないため、秘密にしておきたい何かがある時に動かしやすいのだ。

 普通の騎士とは違う訓練を受けているため、シャロンの情報もすぐに掴んで連れ戻してくれるだろうと思っていたのに。

 こんなに時間がかかるなど、とんだ見込み違いだった。


「ああもう、情報すら掴めないってどうなっているの?今までお前たちを信頼していたけれど、ただのマヌケの集まりだったみたいね!」

「……っ……、申し訳、ございません……」

 青筋を立てて目の前の禁軍長を怒鳴りつける王妃。

 そうすることで、心の中のストレスやむしゃくしゃした気持ちを吐き出した。


 対する禁軍長。

 彼は震えながら小さく謝ったが、内心では王妃を侮蔑し、怒りに震えていた。

(そもそもはお前の息子が馬鹿な失態を犯したからだろうに……!何故私たちが理不尽に叱られなければならないのだ、本当に情報が掴めないというのに、あのシャロンとかいう女は……!!)


 そう、シャロンは足取りが全く掴めないのだ。

 サダルカマド立憲王国のグランバートン辺境伯領の検問を通ったあと、数日間滞在したことは分かっている。

 だが、その後どこに行ったのかが分からない。

 領民に尋ねても「北に行くって言ってたような……」「南行きの馬車に乗ったのを見たぞ?」など、本当に適当なものばかりだ。

 禁軍の近衛兵達は数が少ないため、しらみ潰しに探す訳にもいかず、調査に時間がかかるのは必然だった。


「これ以上遅くなったら困るのよ!シャロン嬢を取り戻して、フィリップの目を覚ましてあげないと……そうだわ、尋ね人として告知すれば良いじゃない。何故今までしなかったのかしら!?」

(王妃様が「大々的に探すな」と仰ったからですが!?)

「王妃陛下、王室がシャロン嬢を探していると分かってもよろしいのですか?」

 禁軍長はあまりの理不尽さに心の中で目をひんむきながらも、冷静に尋ねる。


「そんなの、ダメに決まってるでしょ!?」

(ハァ???)

「ほら、家族が探してるとか何とか……そういうのを考えるのが仕事でしょ!それくらい自分の頭で考えなさいよ!」

「……はっ。申し訳ございません。……失礼致します。」

(あ゛ーーーー死ね。この国など呪われてしまえ)

 禁軍長は元々あまり無かった忠誠心もマイナスになり、心の中で毒を吐きながら退出した。

 一刻も早く、王妃から逃げるために。


 この国は、本当に腐っている。

 はぁ、とため息を隠すことなく吐きながら禁軍長は遠い目をした。

 感情的になると手のつけられない王妃、彼女に言いなりの国王。第一王子は病弱で表に出てこず、第二王子は色にうつつを抜かしているときた。

 これなら自分たちが真面目に仕事をしなくても良いだろう。

 むしろする方が馬鹿らしい。



 そう、シャロン達の行方は分からないのではなく、ちゃんと調べていなかったのだ。

 単純に面倒だし、上司はウザイし、自分から追い出した人間を連れ戻してこいとか、イカれてるとしか思えない。

「……今回も、形だけやってれば良いか。はぁ、ポスターを多く書かせて、予算を今年も使い切れるようにしないとなぁ。」

 ポスターを見た領民達が気づいて、禁軍の代わりに仕事をしてくれれば解決する。

 それを王妃の前に突き出せば、済む話なのだ。


「早く見つかってくれよ、シャロン嬢……。」

 禁軍長はダルそうに首を回しながら、指をポキポキと下品に鳴らした。



「禁軍長!シャロン嬢とその兄を発見しました!」

 そうやって、副官が慌てて息を切らせながら走ってくるまであと2週間。


「シャロンッ!離せ、このっ……待ってくれシャロン!!」

 シャロンが新しく買った家でのスローライフを邪魔されて、兄と引き離され王妃に元に突き出されるまで、あと1ヶ月。

閲覧いただきありがとうございます。

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