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覚えのない罪で国外追放されたブラコン令嬢は、盲目の兄と新生活を謳歌する  作者: 朝倉 ねり


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37 婚姻届(データ)

  翌日。

 ヤケにツヤツヤした表情のシャロンと、疲れているのか、いつもより更に退廃的な雰囲気がダダ漏れているオルフェウスは、昨日の事件現場であるギルドに再び向かっていた。


「えへへ、うふふ……!」

「た、楽しそうだねシャロン……」

「ええ!だってお兄様と両思いなのですよ!昨日はあんなになってしまいましたが、今日は堂々と魔導機械の前に立てますわ!……あの、少し独特な飾り付けでしたけれど。」

「飾り付け……?」

 見えないのだから当たり前なのだが、「何のことだろう」とこてりと首を傾げるオルフェウス。

(お兄様、かっわいい〜!なんですの、昨日から急に女子力を身につけたのですか!?そのまま可愛らしいままのお兄様でいてほしいわ。)

「いえ、何でもないですわ!うふふ……」

 それは無理な相談だろう。

 オルフェウスは妹への愛を拗らせすぎて、なかなか腹黒い、というか捻くれているのだから。


 ガチャッ、カランカラン。

「いらっしゃいませー……」

 昨日に引き続き貴族邸のようなギルドのドアを開けると、受付嬢達の機械的な挨拶が聞こえ……2人の姿を目に留めて尻すぼみになっていった。

(わ、昨日の痴話喧嘩ップルだ)

(なんか機嫌よさそう……?仲直りしたっぽいな)

 昨日もいた受付嬢や冒険者達がザワザワとしだす。

 その中には、昨日からシャロン達の護衛をしているイヴェットの姿もあった。


 が、そんな噂話ごときでは百戦錬磨の元・第二王子の婚約者を動揺させることはできない。

 こんなに無害なもの、微風レベルである。

 貴族達の蔓延(はびこ)る社交界なら、あんな醜態を晒したら即社会的死を迎える。

 更に笑顔を深めながら、シャロンは自然と割れる人波の中心を突き進み、ダサ……独特な飾り付けの魔導機械の元に行く。


「うわ。……ぁ、いえ、こんにちは。ご結婚おめでとうございます。データ化でよろしいですか?」

(うわって何よ。聞こえてるのよ、全部。)

「ありがとう、ええそうよ。この魔導機械でできると聞いたのだけど。」

 シャロンは笑顔で額に青筋を浮かべながら、腕を組む。

 冴え冴えとしたシャロンの美貌に、担当の魔導師の男がごくりと唾を飲み、冷や汗が吹き出た。

「は、はいっ!出来ますよ奥方!最短1分です!」

 その言い方では、まるで街頭アンケートだ。

 そんな軽いものではないだろう。


 シャロンは改めて、目の前のポインセチアのような花で飾られた魔導機械を見つめる。

 赤色がチカチカして、縁起がいいというより毒々しい見た目である。

「ふうん。オルフェウス様、やりましょう?」

「うん、そうだね。……シャロン、昨日みたいに拒否しないかい?」

「昨日のは、オルフェウス様がマトモにプロポーズもしないまま事実だけ作ろうとしたから、拒否しただけですわ。ちゃんと言葉は受け取りましたし、今更拒否など致しません。そちらこそ、今からやめる事は出来ませんわよ?」


(この人たち、もっとちゃんと纏まってからこっち来てくれよ……)

 魔導師は半目になって、明後日の方向に向かって意識を飛ばす。

 密かにこのカップルの行方を見守っているギルド内の人々も、死んだ魚のような目をしながら魔導師の考えにウンウンと頷いていた。



「もちろん、私がシャロンから離れることは一生無いからね。死んでも追いかけるよ。」

 そんな彼らの視線などとっくに気づいているだろうに、オルフェウスは花が綻ぶような笑顔を浮かべて呑気に話を続けた。

 シャロンの目が泳いで耳が赤くなり、体をモジモジさせる。

「わ、わたくしもオルフェウス様と同じ棺桶に入りますわ……!もしわたくしの方が先に死んだら、一緒に入ってくださいませね!」

(怖い怖い、この2人怖いよっ!)


「あのっ!魔導機械を発動させてもよろしいですか!」

 お互いテレテレしてバカップルの雰囲気を全方向に飛ばしている割に、内容が不穏なシャロンとオルフェウス。

 そんな彼らにとうとう耐えきれなくなった魔導師が、大きな声を出して2人の意識を現実に引き戻す。

「あ、ええ!お願いするわ!」

 シャロンがハッと気づいて、頬を染めながら負けない大きな声で返す。

「ではお2人で手を握って、魔導機械に手を入れてくださいー」

(ボーナス、欲しいな。)

 不憫な魔導師は憂さ晴らしに、ギルド長にボーナス支給を強要しようと思ったのだった。


「……はい、これで、データが入力されました。中央がデータを受理すれば、公的に夫婦として認められます。受理すると言っても、拒否されるケースは結婚詐欺などの事件しかありませんから、大丈夫と思っていただいて結構ですよ。では、ご結婚おめでとうございます。」

 魔導機械に手を繋いで入れる時も、「恋人繋ぎがいいです……」とか何とかイチャイチャしたものの、つつがなく魔導は発動し、シャロンとオルフェウスは晴れて夫婦となった。


「シャロン、私の奥さんになってくれたんだね。ふふふ。」

「えへへ、お兄様が旦那様……」

 2人はすっかり甘々で新婚な雰囲気である。

 ギルドの冒険者達も苦笑いをしながらも拍手をしてくれ、受付嬢に花を贈られる。

 シャロンとオルフェウスの関係が認められたことで、2人は幸せの絶頂にいた。


「新婚……うふふ、えへへ……」

 ニヨニヨとだらしない笑顔が止まらないシャロン。

 彼女の左手には、変わらず美しいプラチナとアメジストの指輪が光っている。

 そんなシャロンを優しく見守るオルフェウス。



 2人の関係は、正式に兄妹から夫婦に変わったのだった。

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