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覚えのない罪で国外追放されたブラコン令嬢は、盲目の兄と新生活を謳歌する  作者: 朝倉 ねり


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18 ジェシャートヴァ大公領・カラユイ

「じゃあね、おねーちゃんとお兄ちゃん!」

 そう言って手を振ってくれた、シャロンに建国神話を教えてくれたジェレミー親子と別れてから3日後。

 シャロンとオルフェウスは、当初の予定より1日遅れの7日で、ジェシャートヴァ大公領の主都「カラユイ」に到着した。


 2人は今、道中の宿屋で知り合った商人から買ったモコモコの上着を身につけている。

「カラユイへ行くのかい?ならそんな薄着じゃ凍え死ぬよ!うちの防寒服を買っていきな!」

 と半ば押し付けるように売られたコートは、軽いのにとても暖かい。

 その分値段が張ったが、いい買い物をした……はず。

(ハワードや宝飾品店の店主の時も思ったけれど、商売上手な人が多いのね。それとも、わたくし達が良いカモになっているの……?)

 どこか釈然としない気持ちを抱えながらも、寒さは本当だったので、シャロンはありがたく思うことにした。



 乗合馬車から降りると、そこは極寒の地だった。

 ジェシャートヴァ大公領・カラユイ。

 ここはいつからか『銀雪の都』と呼ばれることとなった。


「寒いな。シャロン、大丈夫かい?」

「お兄様こそ!9月も終わりとはいえ、この寒さは真冬並みですわね!…くしゅっ」

 幸い雪は降っていないが、いかんせん寒すぎる。

 本当はここだけ12月なのではないかと錯覚するほど、本当に寒い。

「シャロン、早めに宿屋に行こう。まさかここまで寒いとは思ってなかったな。……冬に外に出るとこんな感じなのだろうね。」

「お兄様……」

 オルフェウスはずっと部屋の中にいたから、冬の外を知らない。

 窓を開けたことくらいはあるだろうが、全身に寒さを感じたことがないのだ。

(お兄様が外に出たら、お兄様がランドルフ(義弟)に殴られてしまうから出さなかったけれど、そんな顔をなさるなら無理にでも外に行くんだったわ。)


「すまない。さぁ、宿屋を探そうか。」

 そう笑った兄の顔は冷たい大気も相まって、どこか寂しげに見えた。



「身分証をご提示ください。はい、ありがとうございます。」

「今回は宿泊ですね?お二人の一泊二食付き・1部屋で銅貨60枚です。ごゆっくりお寛ぎくださいませ。」


「はぁ、暖かい……!」

 ありがたいことに、宿屋はすぐに見つかった。

 グランバートン辺境伯領で泊まった宿屋より大きく、どちらかと言うと裕福な者が泊まる場所のようだ。

 白塗りで城のような造りのホテルは、発熱や保温の魔道具のおかげで温かさを保てるらしい。

(やっぱり魔道具って本当にすごいわ。サダルカマド立憲王国内での独占なのがもったいないくらい。)


「お兄様、脱いだコートはこちらへ。暖炉の前に置いておきますね。」

「うん、ありがとうシャロン。……すごいな、暖炉から遠い所でも全身が暖かいままだ。暖炉だと背中が寒かったりして、均一な温かさじゃなかったのに。」

「そうですわね。保温の魔導機械のおかげ、とホテルの従業員が言っていましたが、本当に素晴らしいですわ。」

「ふふ、シャロンはこの間から魔導機械に興味津々だね。そんなに気に入ったのかい?」

 私よりも。


なんでもないように吐き出された爆弾発言に、シャロンは目を見開いて固まったあと、両手と首を降った。

「ちちち違いますわ!わたくしの1番はお兄様だけですもの!」

(お兄様どうしちゃったの!?外に出られるようになって、性格が変わったとしか思えないわ!)

 今まではアンニュイで儚げな雰囲気を持つ「妹がいないと何もできないね……」系お耽美お兄様だったが、今はすっかり「君は私の奥さんだろう?」系の積極的にシャロンのハートを撃ち抜きにくるお兄様である。

 心なしか、依存心をくすぐる言動が多くなってきた気がする。

「ふふ良かった。……らしくもなく嫉妬してしまったな。」

 ごめんね?とこちらに向かって全く反省する素振りが無い笑顔で謝ってきたオルフェウスは、それはもう破壊力抜群であった。


「し、嫉妬。嫉妬ですか。え?嫉妬!?」

「うん、嫉妬。私にはシャロンしかいないのに、君は色々なことに興味を示すから少し寂しくなってしまった。でも、私が一番だってシャロンが言うのなら良しとしよう、ね?」

(嫉妬だなんて、やっぱりお兄様が壊れちゃったわ。でも好き。大好き。どんなお兄様でも一生そばにいて、面倒見て、同じお墓に入るわ。来世だってその次だって、永遠に一緒なんだから。)

 シャロンは滝のように降ってきた供給に耐えきれず、頬を真っ赤に染めて、目を大きく開いたまま明後日の方向に考えを飛ばし始める。


 そしてフリーズしていたシャロンは、オルフェウスが「私には君しかいないし、君には私しかいない……」と仄暗い恍惚的な表情で呟いたことに気づかなかった。

閲覧いただきありがとうございます。

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