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覚えのない罪で国外追放されたブラコン令嬢は、盲目の兄と新生活を謳歌する  作者: 朝倉 ねり


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13/47

13 ギルド

 ギルド。

 そこは、平民の身分を保証する組合と職業斡旋所を兼ねた共同体である。


「まぁ、こんなに大きな建物が……!」

 宝飾品店を出たシャロンとオルフェウスは、近くの青果店の店主に教えてもらって『サダルカマド立憲王国立ギルド・グランバートン辺境伯支部』と書かれた建物にやってきていた。


「声もたくさん聞こえるね。活気を感じられるよ。」

 シャロンに手を繋いで先導してもらっていたオルフェウスが、瞼を閉じたまま微笑みを浮かべる。

「あ、そうだ。お兄様に外観を説明して差し上げますわね。とても大きな丸太小屋……ログハウス、というのでしたっけ。恐らく二階建てで、商人や冒険者っぽい方々がひっきりなしに出入りしていますわ。こういうのを庶民的というのかしら。変に飾り立てていないところが好感を持てますわ」

 シャロンは周りの声にかき消されないように少しだけ声を張り上げて、オルフェウスの耳元に近づくように爪先立ちになって説明する。

「ふむ。説明ありがとう、シャロン。入ってみようか。」

「はい、おにい、オルフェウス様!」


 カランカラン。

 シャロンが大きな一枚板で作られた分厚い扉を開けると、内側の喧騒がより大きくダイレクトに聞こえてきた。

 同時に目からも膨大な情報が入ってくる。

「いらっしゃいませー!」

 ギルドの受付嬢達が一斉に声を張り上げ、今入ってきたシャロン達を機械的に出迎える。

 ギルドの中にいた人々も、一瞬だけこちらに視線を向けたがすぐに興味が失せたように各々のやるべきことに戻っていく。

(おお……。慣れない感覚ですが、悪くありませんわね。)

 今までスノーリナベル伯爵令嬢として、そしてフィリップ第二王子の婚約者として注目を集めてばかりだったシャロン。

 『自分に注目が集まらない』という新鮮な経験が心地良い。


「うーん。まずは受付に行くのが良いでしょうか……」

「そうだろうね、何をするにも私達は初めて尽くしだ。聞けることはどんどん尋ねるのが早いだろうね。」

「では、受付嬢を待つために並んでいる列があるようですから、そこへ並びに行きましょうか。」

 シャロンはオルフェウスの手を繋ぎ直し、片時も離れないようにギューっと握って列に並び始めた。


 そもそもこのギルドに何をしにきたかというと、身分証の発行だ。

 シャロンとオルフェウスは、この国では異邦人だし家から追い出されたからハッキリした身分もない。

 何かあった時に身分証も何もないというのは怪しすぎるので、早めに自分たちを確固たる存在にしておこうという話だ。

 ちなみに平民は皆ギルドで身分証を作るが、貴族は必要ない。

 それは「爵位」という信用があるからである。

 貴族は身につけるもののどこかに必ず家紋が入っており、それが証明書代わりになるのだ。

 だから貴族でなくなったシャロンとオルフェウスは、「身分証も何もない不審者」でしかないのだ。

 ハワードや国境の衛兵達が何も言わなかったのは奇跡に近いと言える(見た目が貴族だったからだろうが)。



「はーい、お次の方ー」

「あ、呼ばれましたわ。進行方向に4か5歩ですお兄様。」

「うん、ありがとう()()()

(あっっぶない!歩いている途中じゃなければ、不意打ちの初「奥さん」呼びに倒れているところだったわ……!)

 心の中で悶えつつ、多分間違えて兄と呼んでしまったから釘を刺したのだな、と冷静な思考も働いたシャロン。

 2人はゆっくりと歩き、カウンターの受付嬢に向かって切り出した。


「こんにちは。今日はどのようなご用件でしょう?」

 ニコニコと営業スマイルを見せてくれた受付嬢。

 彼女はオルフェウスの美貌と退廃的(たいはいてき)な雰囲気に一瞬呑まれかけていたが、横からの鋭い眼光に正気を取り戻し「受付嬢」に戻った。

「わたくし達、身分証を作りたいのだけど。」

 受付嬢を目線で牽制しながら、シャロンが声をかける。

「身分証ですね、かしこまりました。……では、あちらに置いてある魔導機械でお二人の情報を読み取りますので、そちらの担当の指示に従ってください。」


「魔導機械?」

 シャロンが首を傾げると、受付嬢が簡単に説明してくれる。

「魔導機械というのは、あちらに置いてあるガラス板のことです。馴染みが無い、ということはお客様は外国の方ですね?我がサダルカマド国では魔導が盛んで、あちらの道具に手をかざすだけで、お客様の情報を一瞬で読み取ってくれるのですよ。他国だと書類を提出したりと煩雑な手続きが必要ですが、認定魔導士がいるこのギルドでは、簡単に身分証の発行が可能です。」

「魔導……。話には聞いていたけれど、そんなにすごいのね。ありがとう、あちらへ行くわね。」

「分かりやすい説明をどうもありがとうお嬢さ……シャロン?」

「行きますよ!」

(もう!完璧なお兄様が話しかけたら誰でも惚れてしまうわ!そんなのはダメ、絶対にダメなんだから……)

 シャロンはオルフェウスを会話に入れないよう独占しよう、と決意するのだった。

閲覧いただきありがとうございます。

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