表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覚えのない罪で国外追放されたブラコン令嬢は、盲目の兄と新生活を謳歌する  作者: 朝倉 ねり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/47

12 兄・オルフェウス視点(1)

お兄様視点です。

 私の妹は、本当に純粋で可愛らしい。

 オルフェウス・スノーリナベルは、閉じた瞳の裏で妹の姿を想像しながら、うっとりとした笑みを浮かべた。


 オルフェウスは、シャロンの3つ年上の実兄だ。

 シャロンと同じ銀色の髪を背中の中ほどまで伸ばして1つくくりにし、紫の瞳を持つ線の細い美男。

 そんな彼は9歳の時に熱病にかかって失明し、10歳で継母達がスノーリナベル伯爵家を牛耳るようになってからはほとんど外に出ていない。

 それでも彼は満足していた。


 トタトタと廊下に軽い足音が響く。

(シャロンだな。)

 オルフェウスは視力を失ってから残りの四感が発達し、特に聴力が特に良くなっていた。

(シャロンの足音は軽やかで、猫みたいな音がする。)

 思い出の中のシャロンを思い出す。

 銀髪は同じだが、湖のような青い目は猫のようにつり上がっていて、オルフェウスは密かにシャロンを猫のようだと思っていた。

(可愛い、私の妹。シャロン、シャロン……)


 シャロンは気づいていないが、オルフェウスも相当なシスコンだった。

 シスコンと言うには余りにもドロドロしていて、表には出せないような、そんな感情ばかり抱いていたが。

 父に顧みられず、継母や義妹、後にできた義弟にいじめられるたびに、オルフェウスはシャロンと一緒に孤立していくのを感じていた。

(私と、シャロン。私たちにはお互いしかいない。シャロン、もっと私に依存して?世界に私しかいないと言って?)

 オルフェウスは、2人だけの部屋でシャロンに世話される日々に満足していたのだ。

「お兄様……わたくし、フィリップ殿下の婚約者になるのですって。」

 最愛の妹から、そう言われるまでは。


「婚約……?ああ、シャロンもそんなに大きくなったんだね。」

 冷静にそう返したが、正直嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。

「シャロンには兄しかいない」「オルフェウスには妹しかいない」と長年植え付けてきたのに、今更横取りされる?

(そんなの、到底許されることではないのに。)

 幸いなことにシャロンはフィリップのことが嫌いらしく、二人で会ったあとは必ず愚痴を言うためにオルフェウスの部屋に来た。


「フィリップは派手好き」「変に露出度の高いデザインのドレスを贈ってくる」「また違う女性を連れていた」


 シャロンの愚痴が増え、オルフェウスに慰めてもらいに来る度に、オルフェウスは優越感を覚えていた。

「それは酷いね。君の婚約者だというのに、君のことを何も理解してくれないなんて。」

「わたくしのことを理解してくださるのはお兄様だけですわ!メーニャ達もわたくしをいじめてくるし……」

「君に世話をしてもらわないと、私はまた毒を盛られてしまうかもしれない。」

「そんなこと絶対にさせませんわ!お兄様は安心して、わたくしに頼ってくださいませね!」

 シャロンがそう言う度にオルフェウスは安心した。

「目が見えないオルフェウスの世話」をシャロンの日常に溶け込ますことが出来ているから。

(第二王子妃になっても私の世話についてヤキモキして、私を定期的に思い出させなければ……)


 自分でも歪んでいるのは分かっている。

 でも、愛しい妹が自分にかかりっきりなのがたまらなく可愛らしい。

 自分がこんなに重い感情をシャロンに向けているとも知らずに、「お兄様に頼って欲しい。世界にわたくしだけなんて、重いかしら……」と悩んでいる妹が可愛くて仕方ない。

 まさか兄の方が「シャロンがいないと何もできなくてすまない」などと申し訳なさそうにのたまって、その実、妹に責任感と依存心を植え付けようとしているなんて考えたこともないだろうから。


(シャロンの生活の一部になりたい、なんて我ながら酷いけれど。シャロンがフィリップ王子よりも先に私を気にかけるくらい、存在感を強めなければ。)

 私はそうすることでしか、君の一部になれないんだ。



 そうやって自分を納得させて、地道にシャロンを洗脳する日々を送っていたのだが。

(まさか、こんなに都合の良いことが起こるなんて……)

 隣には寝息を立てるシャロンがいる。

 2人はロノヴァン王国を追放された(シャロンが冤罪をかけられているのは不満だが)。

 ここではスノーリナベル家の人間ですらない、ただの「オルフェウス」であり「シャロン」だ。

 2人は髪色は同じだが、まとう雰囲気が全然違うので兄妹には見られにくい、と以前シャロンが不満げに言ったのを覚えている。


 それならば。

「ああ、その。……私達は駆け落ちしてきたんだ。」

(同情心を誘える上に、外見が似ていないのを逆手にとって夫婦を名乗ることができるなんて。)

 以前からシャロンは「お兄様と結婚したいですわ」と言っていた。

 その度に「兄妹だから」とシャロンにも自分にも言い聞かせてきたが、それが必要なくなるのだ。

 喉から手が出るほど欲しかったシャロンの隣が、オルフェウスで埋まる。

 夢でしかあり得ないと思っていたのに。


「ふふ、以前からの願いが叶って、私の可愛いお嫁さん(シャロン)は喜んでいるだろうね。笑顔のシャロンも愛らしいのだろうな。……大きくなったこの子の顔が見たかった、かな。」

 まさかシャロンが、兄妹という関係を急に断ち切られ、夫婦にすげ替えられたことを心細く思っているなんて思いもせず、オルフェウスはシャロンの願いを叶えられたことに満足して、2人の『新婚生活』に思いを馳せるのだった。

閲覧いただきありがとうございます。

もしよろしければ、☆評価やブックマーク、リアクション等頂けると大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ