幸せ
京太とは仕事の後に駅前のカフェで待ち合わせた。
本社への出張だからか、
やたらと荷物の多い京太は
私が到着するより先に着いていて、
アイスコーヒーは半分くらいなくなっていた。
慶太には京太と会う事を連絡しておいた。
「郁!久し振り、元気にしてる?
髪、切ったんだな。」
京太は変わらない笑顔でそう言った。
店員にアイスコーヒーを注文すると、
大きな紙袋を渡される。
「これ、今さら、だよな。
でも俺が処分するのはなって、
ほら一応、下着とかもあるわけだし…
郁は今どうしてんの?」
ありがとうと紙袋を受け取ると、
ちょうどアイスコーヒーが届いて、乾いた喉を潤す。
「うん、あのね、慶太と一緒に暮らしてる。
京太と会う事も、慶太に言ってきた。
あの、京太、本当にあの時はごめ…」
「ストップ、ストップ。
謝るのはなし。
慶太と付き合ってるのは、
何となく、そうならいいな、って、
最近思ってたんだ。
いや、そうなってるだろうなって。
俺さ、あの頃本当に郁が好きだったんだよ。
だから、慶太の事を想ってるって、
分かった時もなかなかすぐに受け入れられなくて。
俺こそ、悪かったなと、今は思ってる。
郁が幸せなら、良かったよ、
実はさ、俺も、すげぇ大切にしたい人と、
一緒に住む事になって。
出来れば、結婚したい、とも思ってる。」
京太はそう言ってはにかんだ。
ずっと、心の中に刺さっていた棘が抜けて、
すーっと傷が塞がっていく、そんな感覚がした。
駅から歩いていると、
茹だるような暑さは感じなくなっていて、
薄っすらと汗は滲むけど、
流れる程ではなくなっていた。
また季節が変わっていく。




