野良猫
タイトルにもなった野良猫の詩です。野良猫も野良犬もいなくなった、そのうち人間も。自由でおおらかで優しい心を失った現代への一言です。
野良猫
野良猫がいた
そういえば最近野良を見かけなくなった
「まあ可愛い。」
猫好きの女の子が言った
都会の野良猫、珍しいのだろう
子供の頃は猫ばかりでなく
野良犬もいた
あちらこちらに野良がいた
狂犬病や人を襲うのでない限り
何となく地域で飼っていた
地域猫じゃなくて地域犬
野良犬が主人公の物語まで大ヒット
野良猫、野良犬
空き地に集合していた
子供だったから
お菓子をやったりかまっていた
身近に広場があったんだ
でも、今では空地もない
空き地はすぐに売地になる
猫どころか人間様も入れない
仕方がない山にでも行こうと思ったが
行くべき山もありゃしない
昔の人は会社の経営者でも、芸術家でも、武闘家でも山籠もりした
人々もたいして気にもせず
「あの人は今籠っているんだよ。」
人生の休息、充電をしているってみんなそれとなく悟っていた
今じゃ山にこもれば
不法侵入、住所不定、ホームレスと呼ばれる
仕方が無いから家に居れば
「引きこもり」と冷たい目
野良猫と野良犬と、人間様の居場所が無い
僕は当てもなく歩く時
余所行きのきれいな服を着る
でないと徘徊老人にされる
人は動物も人間も追い出しているんだな
俺は心の野良猫で歩いて行く
2026年抒情文芸夏季号詩入選




