表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/36

第29話 頼られるということ

ロイドが集会所へ来るようになって数日が経った。


最初は見学だった。


次は子供達に縄の結び方を教えた。


そして今では、何となく毎日のように顔を出している。


本人は認めない。


「暇だったからだ」


と毎回言う。


だが誰も信じていなかった。


その日もロイドは朝から集会所にいた。


体操には参加しない。


だが見学はしている。


「やらないのか?」


レオンが聞く。


「まだ年寄りじゃない」


いつもの返事だった。


その横でカイルが笑う。


「昨日も同じこと言ってた!」


「うるさい」


ロイドは軽く頭を小突いた。


カイルは嬉しそうだった。


どうやら気に入られているらしい。


そんなやり取りを見ながら悠斗は少し笑う。


最初に会った頃より表情が柔らかくなっていた。


体操が終わった後。


子供達はいつものように遊び始めた。


輪投げ。


的当て。


鬼ごっこ。


最近は遊び道具も増えている。


その時だった。


バキッ。


嫌な音が響いた。


全員の動きが止まる。


見ると、的当てに使っていた木の支柱が折れていた。


「やばい……」


カイルが青ざめる。


「怒られる」


リナも困った顔をする。


ノアは折れた支柱を見つめていた。


ミリアはため息を吐く。


「だから無茶しちゃ駄目だって言ったのに」


「だって風が強かったから!」


「関係ないでしょ」


子供達の言い訳が始まる。


悠斗が近付こうとした時だった。


ロイドが先に支柱を手に取る。


折れた部分を確認する。


しばらく眺める。


そして呟いた。


「これくらいなら直せるな」


子供達の目が一斉に輝いた。


「本当!?」


「直せるの!?」


「多分な」


ロイドは折れた支柱と縄を持つ。


手際は良かった。


荷運びの仕事をしていた頃に覚えた補強方法らしい。


折れた部分を固定する。


縄を巻く。


余分な部分を切る。


作業はあっという間だった。


「すごい……」


ノアが呟く。


カイルは目を輝かせていた。


「ロイドすげぇ!」


「これくらい普通だ」


そう言いながらも少し照れている。


その様子を見ていたエドが近付いてきた。


「ほう」


珍しく感心したような声だった。


「なかなか上手いじゃないか」


「仕事で使っていただけだ」


「それでも技術は技術だ」


エドは頷く。


職人として認めたらしい。


ロイドは何も言わなかった。


だが少し嬉しそうだった。


昼過ぎ。


子供達は再び遊び始める。


修理した的当ても問題なく使えていた。


悠斗は木陰で休憩しているロイドの隣へ座る。


「助かりました」


「大したことじゃない」


「でも皆喜んでいましたよ」


ロイドは子供達を見る。


カイルは相変わらず元気だ。


リナは質問ばかりしている。


ノアは黙々と遊んでいる。


ミリアは小さな先生のようだった。


その光景を見ながらロイドは呟く。


「変な気分だな」


「何がですか?」


「感謝されるのが」


その言葉に悠斗は少しだけ考える。


「久しぶりなんですか?」


ロイドは頷いた。


「仕事を辞めてからはな」


誰かの役に立つ。


必要とされる。


当たり前だったことが当たり前ではなくなった。


その気持ちは悠斗にも少し分かる気がした。


介護の仕事を始めた頃、自分も何度も悩んだからだ。


「役に立ってますよ」


悠斗が言う。


「子供達も喜んでますし」


「エドさんも認めていました」


ロイドは苦笑した。


「あの職人は怖そうだからな」


「確かに」


二人は同時に笑った。


その時だった。


集会所の入口から一人の女性が入ってくる。


五十代半ばくらいだろうか。


背筋は伸びている。


活発そうな雰囲気だった。


ハナが真っ先に気付く。


「あら」


女性も驚いた顔になる。


「ハナじゃないか」


どうやら知り合いらしい。


二人は笑顔で近付いていく。


村長もその姿を見て目を丸くした。


「珍しい客が来たな」


悠斗はその様子を見ていた。


また新しい出会いが始まりそうだった。


集会所には今日も賑やかな声が響いている。


そしてその輪は、少しずつ広がり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ