第24話 手すりの役割
集会所へ集まった悠斗達は、入口の段差を見つめていた。
掃除は終わった。
建物も綺麗になった。
だが、まだ安心して使える場所とは言えない。
「それで、今日は何を作るんだ?」
レオンが聞く。
「手すりです」
悠斗は迷わず答えた。
その言葉にエドが苦笑する。
「本当に手すりが好きじゃのう」
「好きというより必要なんです」
悠斗は真面目だった。
「それに今回は一種類じゃありません」
「一種類じゃない?」
村長が首を傾げる。
悠斗は入口へ歩いていく。
「まずはここです」
入口の段差を指差した。
そして木の棒を立てる。
「これは縦手すりです」
「縦?」
リナが不思議そうな顔をする。
「手すりって横じゃないの?」
「そう思いますよね」
悠斗は笑った。
「でも立ち上がる時や段差を越える時は、縦の方が使いやすいこともあります」
ハナが近付く。
「どうやるんだい?」
「試してみますか?」
悠斗は木の棒を支える。
ハナはそれを握った。
そして身体を支えながら一歩踏み出す。
「おや」
少し驚いたような声が漏れる。
「楽かもしれないねぇ」
「そうなんです」
悠斗は頷いた。
「掴まり立ちをする時は縦の方が力を入れやすいんです」
村人達も感心していた。
その時だった。
カイルが縦手すりを掴む。
「すごい!」
「登れそう!」
「駄目だよ」
ミリアが即座に止める。
「これは遊ぶ物じゃないんだから」
「えー」
カイルは不満そうだった。
周囲から笑い声が上がる。
「次はこっちです」
悠斗は入口から壁沿いを指差した。
「横手すりです」
エドが頷く。
「こっちは分かるな」
「歩く時の支えですね」
「その通りです」
悠斗は壁沿いを歩く。
「立つ時は縦手すり」
「歩く時は横手すり」
「そうやって使い分けることもできます」
レオンも実際に触ってみる。
「なるほどな」
「思ったより理にかなってる」
その言葉に悠斗は少し嬉しそうだった。
認められることが増えてきたからだ。
最初は手すりの話をしても不思議な顔をされていた。
今は違う。
話を聞いてくれる。
試してくれる。
それだけでも大きな変化だった。
「じゃあ作るか」
エドが腕をまくる。
「木材は足りるぞ」
ガンツも頷く。
「縄も使える」
「力仕事なら任せろ」
トーマスも前に出る。
子供達も負けていない。
「運ぶ!」
カイルが元気よく手を上げる。
「私もやる」
リナも続いた。
ノアは既に小さな木材を運んでいる。
ミリアはそんな子供達をまとめ始めていた。
気付けば全員が動いていた。
誰かに命令された訳ではない。
この場所を良くしたい。
そんな気持ちが少しずつ広がっていた。
夕方になる頃には、入口に縦手すりが取り付けられていた。
壁沿いには横手すりも設置されている。
まだ完成ではない。
だが形になってきていた。
ハナが試しに使う。
縦手すりを握る。
身体を支える。
そして横手すりへ手を移す。
「これは良いねぇ」
自然と笑顔になる。
トーマスも使ってみる。
「確かに楽だな」
ガンツも頷いた。
「安心感がある」
その言葉を聞いて、悠斗はほっと息を吐いた。
介護の仕事をしていた頃もそうだった。
手すりは目立たない。
だが使う人にとっては大きな支えになる。
派手ではない。
それでも意味がある。
だから作る価値がある。
「これで終わりか?」
レオンが聞く。
悠斗は集会所の中を見回した。
入口。
椅子。
休憩場所。
まだ気になる場所はいくつもある。
「いえ」
その一言にレオンが額を押さえた。
「やっぱりな」
周囲から笑い声が起こる。
悠斗もつられて笑った。
集会所作りはまだ始まったばかりだった。




