第22話 みんなで作る場所
翌朝。
集会所の前には多くの村人が集まっていた。
子供達もいる。
高齢者達もいる。
村長まで来ていた。
「今日は掃除だー!」
真っ先に声を上げたのはカイルだった。
「まだ始まってないでしょ」
ミリアが呆れたように言う。
「早くやりたいんだよ!」
「まず説明を聞きなさい」
「はーい」
返事だけは立派だった。
その横でリナが悠斗の服を引っ張る。
「何からやるの?」
「掃除です」
「それは分かる」
「どこを?」
「全部です」
「全部!?」
リナの目が丸くなる。
ノアは静かに箒を持っていた。
どうやらやる気は十分らしい。
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悠斗は集会所を見上げた。
昨日よりも大きく見える。
だが。
近付けば近付くほど問題も見えてくる。
窓は汚れている。
床には埃が積もっている。
椅子は壊れている。
天井には蜘蛛の巣。
「これは大変そうですね」
悠斗が苦笑すると。
「今更気付いたのか」
レオンが呆れた。
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扉が開く。
中へ入る。
予想以上だった。
「うわぁ……」
リナが顔をしかめる。
「埃だらけだ」
カイルも鼻を押さえた。
「まずは窓を開けようかね」
ハナが言う。
その一言で自然とみんなが動き始めた。
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エドは椅子を確認する。
ガンツは壊れた棚を見ている。
トーマスは重たい荷物を運び始めた。
子供達は箒を持つ。
村長は何故か雑巾を持っていた。
「村長もやるんですか?」
悠斗が聞く。
「言い出したのはわしだからな」
そう言って笑った。
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掃除は思った以上に順調だった。
ミリアは子供達をまとめている。
「そこは後で」
「先にこっち」
年齢の割にしっかりしていた。
カイルは相変わらず落ち着かない。
掃除していると思ったら次の瞬間には別の場所へいる。
「カイル!」
「今度は何だよ!」
「ちゃんと掃除しなさい!」
「してるって!」
していない。
誰が見てもしていなかった。
その様子を見た悠斗は思わず笑う。
どこの世界も子供は変わらないらしい。
昼前。
窓の掃除をしていたリナが声を上げた。
「あれ?」
「どうした?」
悠斗が近付く。
壁の奥から木の板が出てきていた。
どうやら何かが挟まっていたらしい。
取り出してみると古い絵だった。
「これは……」
村長が目を細める。
若い男女が描かれている。
祭りの様子らしい。
大勢の人が笑っていた。
「懐かしいねぇ」
ハナが笑った。
「え?」
リナが首を傾げる。
ハナが絵を指差す。
「これ私だよ」
全員が固まった。
「えぇっ!?」
一番大きな声を出したのはカイルだった。
「本当!?」
「本当だよ」
ハナは楽しそうに笑う。
若い頃のハナは今よりずっと髪が長かった。
表情も少し違う。
「若い!」
「そりゃ若い頃だからねぇ」
周囲から笑い声が起こる。
その横でトーマスが少し気まずそうな顔をしていた。
「こっちの人は?」
ミリアが聞く。
沈黙。
そして。
「トーマスさん?」
悠斗が言った。
「違う」
即答だった。
だが、若い頃のトーマスにしか見えなかった。
「似てる」
「似てるね」
「そっくり」
子供達が口々に言う。
「違う」
誰も信じなかった。
集会所は笑い声でいっぱいになった。
気付けば。
埃だらけだった建物もかなり綺麗になっている。
窓から光が差し込む。
風も通る。
悠斗は少し離れてその光景を見ていた。
誰かが指示した訳ではない。
みんなが自分のできることをやっている。
それが少し嬉しかった。
「何を見てるんだ」
レオンが隣へ来る。
「良い場所になりそうだなと思って」
レオンは周囲を見回した。
笑う子供達。
話す高齢者達。
働く村人達。
「まだ掃除しただけだぞ」
「そうですね」
悠斗は笑う。
「でも始まりです」
その言葉に。
レオンは小さく笑った。
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集会所はまだ完成していない。
手すりもない。
段差もある。
椅子も足りない。
問題は山ほどある。
それでも。
ここは少しずつ。
誰かの居場所になり始めていた。




