第21話 古い集会所
翌朝。
雨はすっかり上がっていた。
広場ではいつものように体操が行われている。
「いち、に、さん!」
元気な声が響く。
その中心で一番大きな声を出しているのはカイルだった。
8歳の男の子で、とにかく落ち着きがない。
走るのが好き。
遊ぶのも好き。
そしてレオンに構ってもらうのが好きだった。
「レオン!」
「何だ」
「勝負だ!」
「嫌だ」
「逃げるな!」
今日も朝から騒がしい。
その様子を見ていたミリアがため息を吐いた。
9歳の女の子。
同年代の中ではしっかり者で、少しお姉さん気質だった。
「馬鹿なんだから」
「何だと!」
「事実でしょ」
すぐに言い合いが始まる。
その横ではリナが悠斗へ話しかけていた。
7歳の女の子。
好奇心旺盛で質問が止まらない。
「ねえねえ」
「何ですか?」
「集会所って何?」
「何するところ?」
「広いの?」
「椅子あるの?」
質問攻めだった。
「まだ見てないので分かりません」
悠斗は苦笑する。
その少し後ろではノアが静かに縄を編んでいた。
6歳の男の子。
人見知りだが手先が器用で、最近はガンツによく懐いている。
「上手くなったのう」
ガンツが言う。
ノアは嬉しそうに頷いた。
体操が終わる頃には、みんな自然と集まっていた。
今日は集会所を見に行く日だった。
村長も来ている。
エドもいる。
ハナもトーマスもいる。
「それじゃあ行きますか」
悠斗が声を掛ける。
「待ってました!」
カイルが飛び跳ねる。
「走るなよ」
レオンが即座に釘を刺した。
「はーい!」
返事だけは良かった。
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村の外れまで歩く。
しばらくすると古びた建物が見えてきた。
木造の平屋だった。
壁は少し傷んでいる。
窓も汚れていた。
屋根の一部は歪んでいる。
「思ったより大きいですね」
悠斗は驚いた。
「昔は祭りもやっていたからな」
村長が答える。
扉を開ける。
中は薄暗かった。
机や椅子が積まれている。
埃も多い。
長い間使われていないことが分かる。
「うわぁ」
リナが目を丸くする。
「汚い」
ミリアが正直な感想を言った。
「確かに」
悠斗も否定できなかった。
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だが、建物自体はしっかりしている。
広さも十分だ。
高齢者が集まる場所にもなる。
子供達が遊ぶ場所にもなる。
雨の日の体操もできる。
悠斗は少しずつ想像し始めていた。
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その時だった。
カイルが勢いよく走る。
「おっ!」
転びそうになる。
だが。
寸前でレオンが首根っこを掴んだ。
「危なっ!」
「走るなと言っただろう」
「ごめん」
珍しく素直だった。
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悠斗は建物の中を見回す。
入口。
段差。
通路。
窓。
椅子。
そしてトイレ。
自然と視線が向いてしまう。
「また見てるな」
レオンが呆れたように言う。
「何ですか?」
「段差だろ」
「はい」
即答だった。
「あと手すり」
「椅子」
「トイレ」
「休憩場所」
レオンが頭を押さえた。
「やっぱり始まったな」
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エドはそんな2人を見ながら笑う。
「悪いことではないじゃろ」
「そうだな」
村長も頷く。
「実際、この建物は使えると思うか?」
その問いに悠斗は少し考えた。
そして答える。
「使えます」
全員が悠斗を見る。
「ただし」
その一言にレオンが嫌そうな顔をした。
「絶対続きがある」
「あります」
悠斗は笑った。
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「掃除が必要です」
「椅子も直したいです」
「段差も減らしたいです」
「出来れば手すりも」
「トイレも確認したいです」
言い始めたら止まらなかった。
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気付けば。
村長も。
エドも。
ハナも。
トーマスも。
子供達も。
みんな笑っていた。
「面白そうじゃないか」
村長が言う。
「やってみるか」
エドが頷く。
「掃除なら手伝うよ」
ハナも笑う。
「力仕事なら任せろ」
トーマスも続く。
「やるー!」
「掃除するー!」
子供達も大騒ぎだった。
悠斗は少し驚く。
気付けば1人じゃなかった。
みんながいる。
みんなが協力してくれる。
古びた集会所を見上げる。
今はまだただの古い建物だ。
だが。
ここが。
誰かの居場所になるかもしれない。
そんな予感がしていた。
そしてその隣で。
レオンが大きなため息を吐く。
「絶対に面倒なことになるな」
その言葉に全員が笑った。
集会所には久しぶりに賑やかな声が響いていた。




