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第20話 居場所

朝の体操が終わった後だった。


子供達はいつものように走り回り、高齢者達は木陰で休憩している。


最近の広場は毎日賑やかだった。


ガンツの縄作り教室も続いている。


ハナは子供達へ簡単な料理を教えていた。


トーマスは畑の話をしている。


エドは木工の相談を受けていた。


悠斗はその光景を眺めながら笑う。


「何か不思議ですね」


隣にいたレオンへ話しかける。


「何がだ」


「最初は手すりを作っただけだったのに」


レオンは鼻で笑った。


「今は騒がしい」


「ですね」


悠斗も否定しなかった。


その時だった。


ポツリ。


頬に冷たいものが落ちる。


空を見上げる。


黒い雲が広がっていた。


「雨じゃな」


エドが呟く。


その直後。


ザーッと雨が降り始めた。


「うわぁ!」


「雨だ!」


子供達が慌てる。


高齢者達も急いで屋根のある場所へ向かった。


悠斗達もエドの工房へ避難する。


工房の中はすぐに人でいっぱいになった。


外では雨が強く降り続いている。


「せっかく遊んでいたのに」


ハナが残念そうに言った。


「縄作りも途中じゃ」


ガンツも苦笑する。


子供達も退屈そうだった。


工房は広くない。


全員が集まるには少し狭かった。


悠斗は窓の外を見る。


もしこれが何日も続いたら。


体操も遊びも。


みんなの集まる時間も無くなってしまう。


「どうした?」


レオンが聞く。


「屋根付きの場所が欲しいなと思って」


悠斗は素直に答えた。


「屋根付き?」


「みんなが集まれる場所です」


レオンは少し考える。


そして。


「ああ」


とだけ言った。


どうやら言いたいことは伝わったらしい。


その時。


工房へ村長がやって来た。


「おお、みんなここにいたか」


びしょ濡れだった。


「村長さん」


「随分賑やかになったな」


村長は工房を見回す。


子供達。


高齢者達。


縄を編むガンツ。


料理の話をするハナ。


何かを作るエド。


笑い声。


会話。


以前の村ではあまり見なかった光景だった。


「そういえば」


村長がふと思い出したように言う。


「村外れに古い集会所があったな」


「集会所?」


悠斗が反応する。


「昔は祭りや集まりに使っていた建物だ」


「今は?」


「ほとんど使っとらん」


村長は肩を竦めた。


「雨漏りもしとる」


「椅子も壊れとる」


「掃除もされとらん」


悠斗の目が少しずつ輝き始める。


その様子を見たレオンが顔をしかめた。


「嫌な予感がする」


「俺もじゃ」


エドも同意した。


「どうしたんですか」


悠斗は首を傾げる。


「その顔だ」


レオンが言う。


「何か思い付いただろ」


図星だった。


悠斗は少し笑う。


「みんなが集まれる場所になるかもしれません」


工房の中が静かになる。


ハナが目を丸くした。


ガンツも手を止める。


トーマスが腕を組んだ。


「雨の日でも?」


「出来るかもしれません」


「体操も?」


「出来ると思います」


「縄作りも?」


「もちろんです」


子供達が歓声を上げた。


村長は楽しそうに笑う。


「面白そうじゃないか」


「まずは見てみましょう」


悠斗は立ち上がった。


まだ何も決まっていない。


建物も古い。


使えるかどうかも分からない。


それでも。


みんなが集まれる場所がある。


それだけで何かが変わる気がした。


「明日、見に行きませんか?」


悠斗が言う。


エドは笑った。


「また始まったのう」


ハナも笑う。


トーマスも笑う。


村長も笑う。


レオンだけが深いため息を吐いた。


「絶対に面倒なことになる」


その言葉に全員が笑った。


外ではまだ雨が降っている。


だが工房の中は不思議と温かかった。


悠斗はそんな光景を見ながら思う。


みんなが集まれる場所。


笑える場所。


誰かの居場所になる場所。


いつか作りたいと思っていたものに。


少しだけ近付いた気がした。

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