第15話 外出の準備
体操と遊びが日課になってから数日が経った。
朝の広場は今日も賑やかだった。
子供達は元気に走り回り。
ハナは体操を続け。
トーマスは文句を言いながら参加している。
そしてレオンは相変わらず少し離れた場所から眺めていた。
「今度はどこで遊ぶの?」
体操が終わった後。
子供の1人が聞いてきた。
「もっと広いところ!」
「走り回れる場所がいい!」
周囲も賛成する。
ハナも笑った。
「たまには外もいいねぇ」
その言葉を聞いて悠斗は少し考えた。
そして。
「すぐには行きません」
全員から不満の声が上がった。
「えー!」
「何でー!」
「行こうよ!」
悠斗は苦笑する。
「まず下見です」
「下見?」
子供達は不思議そうな顔をした。
だがレオンだけは納得したように頷く。
「お前らしいな」
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翌日。
悠斗はエドとレオンを連れて村の外へ向かっていた。
目的地は平原。
以前レオンが安全だと言っていた場所だ。
「本当に下見だけか?」
エドが聞く。
「下見だけです」
「面白くないのう」
「大事なんです」
悠斗は真面目に答えた。
レオンが笑う。
「こいつに何を言っても無駄だ」
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しばらく歩く。
やがて広い平原が見えてきた。
青い空。
揺れる草原。
遠くには森と山が見える。
風が気持ち良い。
「おお……」
悠斗は思わず声を漏らした。
想像していた以上に綺麗だった。
「確かに良い場所じゃな」
エドも頷く。
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すると。
草むらの向こうで何かが動いた。
白い影。
耳が長い。
「兎ですか?」
「ホーンラビットだ」
レオンが答える。
角の生えた兎。
確かに兎だった。
だが次の瞬間。
近くの木へ勢いよく頭突きをした。
ドゴッ。
鈍い音が響く。
「馬鹿ですね」
「馬鹿だな」
悠斗とレオンの意見が一致した。
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その後。
悠斗は周囲を見回し始めた。
木陰。
地面。
周辺の様子。
「何を見ている」
レオンが聞く。
「休憩場所です」
「休憩場所?」
「高齢者を連れて来るんですよ」
悠斗は当然のように答える。
「疲れたら休める場所が必要です」
木陰を確認する。
大きな木が数本ある。
日差しを避けられそうだった。
「ここなら座れそうですね」
「石も少ない」
「転倒もしにくそうです」
悠斗は頷く。
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さらに周囲を歩く。
今度は少し離れた草むらを見る。
「今度は何だ」
「トイレです」
レオンが黙った。
エドも黙った。
「……トイレ?」
「大事です」
悠斗は真剣だった。
「高齢者は急に行きたくなることもあります」
「そんなものか?」
「あります」
即答だった。
介護職として何度も見てきた。
だからこそ分かる。
「村まで戻るのにどれくらいかかるか」
「途中で間に合うか」
「隠れられる場所はあるか」
全部大事だった。
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草むらへ近付く。
周囲からは見えにくい。
だが十分とは言えない。
「布が必要ですね」
「布?」
「目隠し用です」
悠斗は指を折る。
「あと紙」
「スコップ」
「水」
「替えの布も欲しいです」
レオンは呆れた顔をしていた。
「そこまで考えるのか」
「考えます」
悠斗は頷く。
「外出先で困るのは本人ですから」
その言葉にレオンは少し黙った。
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しばらくして。
悠斗は平原全体を見渡した。
木陰もある。
休憩もできる。
村からも近い。
魔物も少ない。
「良い場所ですね」
「だろうな」
レオンが答える。
「でも準備は必要です」
「分かってる」
「水も持って来ます」
「分かった」
「休憩もします」
「分かった」
「無理はしません」
「分かったから黙れ」
レオンは深いため息を吐いた。
エドが笑う。
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帰り道。
夕日が平原を赤く染めていた。
「どうじゃった?」
エドが聞く。
悠斗は少し考える。
そして笑った。
「行けそうです」
「ただし準備してからです」
「やっぱりそれか」
レオンが呆れる。
だがどこか楽しそうだった。
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村が見えてきた。
その光景を見ながら悠斗は思う。
景色の良い場所へ行く。
それだけなら簡単だ。
だが。
誰かと一緒に行くなら。
安全に帰って来るまでが大切なのだ。
それは元の世界でも。
この世界でも変わらない。
そう思いながら悠斗は村への道を歩いていった。




