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第14話 遊びと世界

体操が始まってから数日が経った。


今では朝になると自然と人が集まるようになっている。


エド。


ハナ。


トーマス。


子供達。


そして少し離れた場所にはレオン。


相変わらず参加はしていない。


だが毎日来ている。


「それじゃあ今日も始めますよ!」


悠斗の声で体操が始まる。


肩を回し。


首を回し。


足踏みをする。


子供達は元気いっぱいだ。


ハナも以前より動きが軽くなっている気がした。



体操が終わると、子供達が一斉に駆け寄ってきた。


「終わったー!」


「次は何するの?」


「遊ぼう!」


「鬼ごっこ!」


「かくれんぼ!」


次々と声が飛ぶ。


悠斗は思わず苦笑した。


「元気ですね」


「子供はそういうものじゃ」


エドが笑う。


その時だった。


ふと悠斗の頭にあることが浮かんだ。


「そうだ」


「みんなで遊べるものを作りましょうか」



その日の午後。


悠斗はエドの工房を借りて作業をしていた。


板を切る。


穴を開ける。


大きな穴。


小さな穴。


いくつも並べていく。


そして穴の周囲へ数字を書く。


100点。


50点。


30点。


10点。


「何を作っとるんじゃ」


エドが聞く。


「遊び道具です」


「遊び?」


「はい」


悠斗は笑った。


「子供も大人も遊べるやつです」



翌日。


広場にはたくさんの人が集まっていた。


体操を終えた後。


悠斗は完成した板を立てる。


「何これ!」


「的当てです」


子供達が目を輝かせる。


布を丸めた玉を投げる。


穴へ入れば得点になる。


簡単な遊びだった。


「まずはお手本です」


悠斗が投げる。


30点。


微妙だった。


子供達が笑う。


「下手!」


「うるさい」


悠斗は苦笑した。



次はハナ。


投げる。


10点。


「入った!」


本人が一番喜んでいた。


エドも挑戦する。


50点。


「おお!」


周囲から拍手が起きる。


トーマスは30点。


意外と上手かった。



そして。


「レオンもやって!」


子供達が騒ぎ始めた。


「やらん」


即答だった。


「やるの!」


「やらん」


「やってってば!」


「……」


レオンは深いため息を吐く。


「面倒なやつらだな」


そう言いながら前へ出てきた。



玉を持つ。


狙う。


投げる。


100点。


静かになる。


もう1球。


100点。


さらにもう1球。


100点。


「ずるい!」


子供達が叫ぶ。


レオンは鼻で笑った。


「実力だ」


「大人げない!」


「知らん」


少しだけ得意そうだった。



遊びは思った以上に盛り上がった。


子供達は高得点を狙う。


高齢者達は無理せず大きな穴を狙う。


それでも笑顔が絶えない。


悠斗はその光景を見ていた。


体操もそうだ。


遊びもそうだ。


身体を動かす理由は色々ある。


楽しければ続く。


それも大切なことだった。



休憩中。


子供の1人が聞いてきた。


「今度はどこで遊ぶの?」


「どこで?」


「もっと広いところ!」


その言葉に悠斗は考える。


そういえば。


「この辺ってどこまでが村なんですか?」


今更な質問だった。


周囲が少し笑う。


「知らなかったのか」


レオンが呆れる。


「知らなかったです」


「お前、本当に異邦人だな」



エドが説明してくれた。


「ここはリーベル村じゃ」


「アルス王国の西にある小さな村じゃな」


悠斗は頷く。


初めて聞く村の名前だった。


「アルス王国は人族の国じゃ」


「農業が盛んで平和な国じゃな」


「へぇ」


「北へ行けばドワーフ領もある」


レオンが話に加わる。


「鍛冶職人ばかりの国だ」


「酒好きも多い」


「最後の情報いります?」


「大事だ」


レオンは真顔だった。



「東にはエルフの森もあるぞ」


ハナが言う。


「長生きで綺麗な人ばかりじゃ」


「会ったことあるんですか?」


「若い頃に1度だけねぇ」


どこか懐かしそうだった。



「南は獣人達の草原だな」


トーマスも続ける。


「足が速くて強い」


「商人も多いぞ」


悠斗は驚いていた。


思っていた以上に世界は広い。



「平原なら比較的安全だ」


レオンが言う。


「ホーンラビットくらいしかおらん」


「散歩ならできるかもしれんな」


その言葉に悠斗は少し考える。


広い平原。


綺麗な景色。


安全な場所。


みんなで行けるかもしれない。


そんな考えが頭をよぎった。



夕方。


遊び疲れた子供達が帰っていく。


高齢者達も笑顔だった。


エドが呟く。


「最近賑やかじゃな」


「そうですね」


悠斗も笑う。


ふと見ると。


レオンも少しだけ笑っていた。


その顔を見ながら悠斗は思う。


体操。


遊び。


会話。


どれも特別なことではない。


それでも。


誰かが笑顔になれるなら。


きっと意味がある。


そう思いながら、悠斗は夕暮れの空を見上げた。

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