失望と嫉妬-4 全てを失った男
タカノの武術の師であるディンワンの弟であり、
タカノの直属の上司でもあるディンサンはお酒を飲みながら、グンウ卿について話をしながら...
世間話もの方が多い気がしたがーーーー
今回はタカノが連れてきた料亭は、
都人の中でも大きな店を構えるような豪商がよく足を運ぶ街でも割と上流階級がくるような店を選んだ。
ディンサンはこの店の料理とお酒を気に入ったようで、上機嫌になりながらも。タカノが熱心に仕事する姿勢を感じて...
そこまで羽目を外すこともなく、話をしていた....
タカノはディンサンとの食事をおけて、
家に帰らずに義禁庁の自分の執務室へと戻ってきた。
執務室の椅子に座り、過去の資料を探し始めた。
グンウ卿に関わる書類を探すためだったーーーー
ディンサンの話から聞いたグンウ卿とは....
グンウ・ガイは陽都郊外の郎津という街出身で、
父グンウ・クウは叩き上げの緑旗軍将校で元は農民の三男坊だったが、一代限りの準貴族階級にあった。
家は豊かとは言えんかったが、一般の家庭を育ったようだった。父の職業柄ではあるが愛国心の強い家庭だったらしい。
17歳の時に兵役で陽都の緑旗軍へ入隊しその後、任期継続し下士官になった後、武官科挙に合格したので貴族階級の仲間入りを果たした。
西域付近の甘門省の緑旗軍将校を経て義禁庁の義禁大尉となった人物だ。
経歴だけを見れば、どちらかと言えば優秀な分類に入るはずの人物であったが....
本格的に義禁庁での任務についてから、
何かが狂い始めたようだった。
ディンサン曰く、だんだんと暗い表情をすることが多くなり、
言動もディンサンに反論するような人物ではなかったが、事件の処理に関してで対立することも多くなり。
「この国を変えるべきだ」とか「この国はおかしい」という事を言い始めていたらしい。
その頃に失態が続き始め部下が離反し始めていた。
そんな時に妻が息子2人と共に無理心中をした。
それが直接の原因なのかはわからないが、
例の妓楼街の地下に出来た転移魔法陣の作成を阻止することができず。自らを鍵として封印したが...
捜査情報が錯綜し逆に魔法陣作成の手引きに加担したとされて、外患誘致の疑惑が出たらしい。
そんな時に謀反事件の取り調べの際に無実の人を何人も酷い拷問にかけて死なせた事が発覚しその責任を問われ義禁大尉の職を更迭され、都を追放されてどこかの離島で行政官に任命されたらしが...
移動中に魔物の襲撃を受けて命を落としたと報告を受けた。
という事らしいーーー
タカノは資料を閉じて、大きくため息をついて窓の外から朝日が部屋を照らしていたことに気がつき。
机の上に置いてあった、
部下が用意してくれた饅頭を手に取って食べた。
「死んだ人間が生きてるのか.....
とりあえず、魔法陣について調べないとなーーー」
ーーーー
タカノは久々に冒険者ギルドに足を運んで、
妓楼街の地下にあるとされるダンジョンの探索依頼をすることにした。
部下を使って、魔法陣を調べにく事を考えたが...
魔術に関して詳しい部下がいない事を思うと冒険者であるエミリかアデルの姉妹か、そのほかの魔術師に頼む他に無いようだった。
タカノは自身がスポンサーをしているパーティであるアルスとエミリは、
大火の際の魔王軍幹部との戦いでアルスが大怪我を負って動けないらしくその看護でエミリはつきっきりで、クエストに出てるような状態ではない。
そして、
もう一つのパーティであるショウタとアデルのパーティはアデルこそは動けるらしいが、ショウタは別件で都を離れてるらしくパーティとして頼めはできないと考えていた。
なので、ギルドにクエストを張り出しその魔法陣を調べる魔術に詳しいパーティを募集することにした。
タカノは冒険者ギルド内にある食堂で朝食を食べていると、アデルが隣の席に座ってきた。
「ショウタンはまだ戻ってこないけど、あのクエスト受けるわよ。
流石にダンジョン探索となると魔術師一人じゃ怖くて行けないけど...
パーティを組めれば問題ないわよ」
タカノはそれを聞いてうんと頷いてこう言った。
「ありがとうアデル。俺も同行しようと思うから、あともう二人ぐらい揃えばといいと思う。
噂なんだがその魔法陣は本来だと魔術師4人係で動かす大規模らしく調べるにもそれなりには人はいるらいいからな...」
「どんな魔法陣なのか気にはなるけど...魔王軍のものならかなり強力な魔法を使用してると思うわ。
私一人でもいいけど、あと一人くらいはお手伝いとして魔法使いの子が欲しいわね」
「あのータカノ様....ボクじゃダメでしょうか?」
そう、
会釈をして小さく手をあげながらシュリムが席に座ってきた。
「今日はミミ様とお嬢様方は家にいるそうなので...お暇を頂いておりまして...」
タカノはそれを聞いてシュリムに聞いた。
「いいが、魔術は?」
「あ、全く持ってです....」
「そうか...」
タカノはそれを聞いて、うーんと腕組みをして考えていると背中から肩をポンと叩かれた。
「タカ兄。魔術はなら俺大丈夫だよ!」
肩を叩いたのはシンだった。彼はタカノの横の座りタカノの前に置いてあった饅頭を手に取った。
「おいおい。アルスの治療は大丈夫なのかよ?」
シンはそれを聞いて親指を立ててこう言った。
「問題ないよ!傷はバッチリ。あとは心のケアだけ。そこは俺の専門じゃない」
タカノはそれを聞いて、微笑してこう言った。
「おいおい。それでも、水神の使いなのかよ...
まあ、いいか。クエスト始めるか。
掲示した報酬は冒険者登録をしてる俺とアデルで山分けーー」
タカノがそういうとシンが唇を尖らせ、シュリムは少し不満そうな顔をした。
「話を最後まで聞けよ。俺の分の報酬はシンとシュリムに分ける。アデルとの開きは俺のポケットから出すから...
一応、お前ら戸籍上俺の家の家来だから俺が金を出さないといけないだろう」
シンはそれを聞いてガッツポーズをして、シュリムは笑みを浮かべた。
「はい!タカノ様。僕頑張りましす!」
シュリムはそう言って、キラキラした目をしながら嬉しそうな表情を浮かべて席から立ち上がった。
臨時ボーナスみたいな感じになるので、彼女にとっては嬉しい話なのだろう。なんせ、故郷の一族に仕送りしてる身だからだろう....
ーーーー
4人は支度を整え、都の地下にある魔法陣へ向かうため都の地下水道の入り口に集合した。
都の地下には昔からある下水道が迷路のように張り巡らされて、遺跡もあればと焔帝国きっての巨大ダンジョンと言われている場所でもある。
時折、
下級モンスターが大量発生したり、遺跡の調査で冒険者向けにクエストが組まれる定番の場所だった。
義禁庁の捜査でも魔王軍の実働部隊の潜伏先に使用されることもあって時折入る事がある場所でもあった。
ダンジョンをパーティを組んで進んでいくなんて、義禁大尉になってからは滅多になったのでどこか新鮮な気分だった。
目的地まで、時々魔物との遭遇がったが、こっちが格上なのをわかっているのかすぐに姿を消していった。
「この大きな扉の向こうに、古代に使われた祭壇があるみたい」
アデルはそう地図を見ながら、目の前にある石造りの大きな扉を指差してそう言った。
扉を自体は半分空いているような形になっていて、奥には祭壇らしく石で作られた舞台が見えて上に2mほどの姿鏡が置いてあった....
シンがその部屋に入り込もうとした瞬間、
タカノは足元が黒く焦げているのを確認して、扉に触ろうとしたシンの襟を掴んで引き寄せた。
するとその瞬間だった、大きな音を立てて赤い光線が飛んできて地面にあったのが見えた。そして光線がやんだ後、焦げ臭い臭いが当たりに立ち込めた。
「これって、トラップだよね。しかも焼き尽くす系の...まる焦げにならなくてよかった...
ありがとう、タカ兄」
シンはそう言ってホッと息をついた。
それを見て、アデルが地面にあった石を部屋の中に投げ込んだ。
すると光線は石を照らして、真っ黒に焦がした。
「タカノさん。これ、結構高度な術式見たいね....
魔王軍がよく使う、防衛用の設置術式見たい。これを解かないと、この部屋には入れなさそう...」
タカノはそれを聞いて、腕を組んで考えてみた....
シュリムは矢筒から矢を取ってこう言った。
何かいい案でもあるのだろうか、少し得意げな顔をしていた。
「タカノ様。以前、この感じの魔導具を兄が破壊した話を聞いたことがあります....
光線が出てる魔導具があるらしいのでそれを壊せば....」
アデルがシュリムの提案を聞いて、ポンと手を叩いてこう言った。
「確かにそうね...ただ、この装置は剥き身で出してる筈だけど、どこに設置してあるかがわからないから...」
シンがそれを聞いてニッコリと笑みを浮かべてこう言った。
「千里眼使えるがあるから大丈夫だよ〜」
アデルはそれを目を丸くし驚いた表情を見せた。
シンは得意げな顔をして目を瞑り手を空に伸ばした。
「ちょうど、この扉からちょうど影になってるけど...どうするの?弓じゃ射れないんじゃ....」
「ボクの弓の腕を舐めないでよ〜」
シェリムはそう言って弓を弾き、矢を捻らせた。
「詳細な場所をお願いします!」
ミミ「あら、シュリムが大活躍してるじゃない」
シュリム「あ、ミミ様照れちゃいますよ...」
リン「シュリムカッコいいですわ」
メイ「ですわー」
マオ「ですわー」
リン「クゥーお嬢様方かわいすぎですぅーぎゅううううっ」
リンメイマオ「「「にゃ〜」」」
ミミ「あのシュリム...告知をぉーー」
リン「あー!!やばい!!うーん最高、よーしよしよしよしよし、あーすはすは...いい匂いだなぁ」
ミミ「あの調子だと...聞こえてなさそうね。次回、迫りくる影!あ、タカノ様ですわぁー!
あーギュッとバンとして、逃しませんわ!」
シン「あ....うん...大丈夫かな、あの2人」