バケーション休暇は温泉旅行!-3 アルスとエミリの仲
「おーいアルス。何寝てるのよ……行くわよ」
アルスはそう女性の小さな声が聞こえて寝ているところをポンポンと頭を叩かれて、目を覚ました。
広い畳部屋の中で無造作に敷かれた布団の上で寝ているのに気がつき、
目の前にむすっとした顔をするエミリがアルスを見下げていた。
くらくらする頭を抑えながら、起き上がるとさっきまでばか騒ぎしていた後のように大の字に寝ころびイビキをかいて寝ているシンと、一升瓶を抱えてむにゃむにゃと寝言を言っているショウタが寝ているのが見えていた。
ぼーとしながらアルスは部屋に入ってきていたエミリを見つめた時にふとあることを思い出した。
ーーーそうだ、エミリとこっそり。家族風呂に行く約束してたんだた!ーーー
アルスは、エミリにごめんごめんというように、頭を下げてエミリの手を取って一緒に静かに男部屋を後にした。
海宿には、海がきれいに見える貸し切りの家族風呂がVIP専用に用意されているらしく
エミリの提案でラシュト卿の伝手を使いその家族風呂を利用しようと計画をしていたからだ。
すっかり、
シンとショウタと一緒に大騒ぎになって男の品評会をしていたせいでそのことを忘れてしまっていた。
エミリは今日の事を少し怒っているのだろうか、一緒に歩きながらどこか不機嫌そうな感じを感じとれた。
ちなみにこの宿のVIPエリアは、
焔帝国でも指折りの高級旅館で
流石は皇帝陛下のお気に入りの武官と名高いラシュト卿だけあってか、ラシュト一行様ということで貸し切りだったのだ。
意外とそのVIPエリアが広大で、いつもクエストを受注して遠征の時に泊まる街の宿屋とは違い貴族屋敷並みの広さを誇っていた。
海宿の海はきれいで、テラスから見える景色も普段見ている景色とは違い壮大でどこか美しいと心から思えるものでった。
二人はそのテラスのベンチに腰掛けて、ゆっくりと景色に見入ってしまっていた。
「ほんと、あの時タカノさんに命を救われてから…いろいろあったけど、俺たちすごいところに来ちゃったな~。
こんなところ、普通に冒険者してたら泊まれないよ」
「ある意味、これも私たちがご褒美何かもしれないわね。て言っても、今回は幸運の女神様であるメイのお陰なんだけどね……」
「な、エミリ?こんな遠い国に来て、住みついちゃったけど...俺たち今後どうする?」
「ど、どどど、どうするってなによ?」
アルスがそう聞くと、エミリは少し恥ずかしそうな顔をしてアルスから目線をそらした。
何かを期待しているような雰囲気を感じたが、アルスはふと故郷の事を思い出してこう言った。
「俺たちの故郷。東ロムルスに帰らなくていいのかな~って……」
エミリはそれを聞いて、大きくため息を着いてまた少し不機嫌そうな顔に戻ってこういった。
「私は、帰りたくない。戻る場所はなし……
魔導学院だって飛び出して中退しちゃって、家族はお姉ちゃんだけだし。アルスは帰りたいと思ってるの?」
アルスはそれを聞いて首を振ってこういった。
「いいや、今すぐは帰りたくない。
俺は魔王を倒す勇者になるんだ!って大手を振って村を飛び出したけど……伝説の勇者みたいにまだ成れてないから帰れないよ」
アルスはそう言って大きくため息をついた。
まだ、B級冒険者。焔帝国ではB級でもトップクラスに数えられるほどの小さな冒険者ギルドしかないーー
伝説の勇者にようになるには、まだまだ道は遠い。
そんな事を考えているとエミリが袖を引っ張ってきてこう言った。
「じゃあさ……もう大人なんだし、冒険者としても安定してきたから...少しだけ先の話しない?」
「少し先ってーー」
アルスはエミリが何か恥ずかしそうに顔を赤くしていた。それをみてアルスはエミリが何を考えているのか何となく分かったので聞いてみた。
「ごめん。間違ってたら悪いんだけど……俺たちって一応、恋人同士なんだよな?」
「一応、って何よ!!」
エミリはアルスの言葉をお聞いて眉を潜めて怒りの表情を見せた。
「ごめんごめん、わかった。少し先の話をしよう……」
アルスはエミリの手を掴み握りしめ見つめながらこう言った。
「エミリ。俺……エミリのことが好きだ。エミリじゃないと思ってる……だから」
「だから……?」
エミリはちょっと期待しているのか嬉しそうな顔をしはいじめたが、顔を赤らめて少し恥ずかしそうな雰囲気も感じられた。
「今後とも。よろしく頼む。冒険もエミリがいないとダメなんだ!」
アルスはそう笑みを浮かべていうとエミリは急に不機嫌そうな顔をして……
「あーもう!なんで、そうなるのよ!!!このヘタレ童貞!!」
エミリはそう言ってアルスの手を払い除けて、胸に拳を打ち付けた。
「へへ、ヘタレっていうなよ!」
アルスはそう言って、立ち上がった。
するとエミリも立ち上がって、アルスの頬を平手打ちして涙を流し始めた。
アルスは叩かれた頬を手で押さえて黙って涙を流すエミリを見ていた。
ーー俺、何かダメだったけ?ーー
「私も。アルスとずっと今後も一緒にいたいよ。でも、そうじゃないの!」
エミリは怒鳴っていった。アルスもそれに感情が上書きされて彼女の両肩をつかんで思わず怒鳴って返してしまった。
「何がそうじゃないんだよ!ハッキリ言ってくれよ!」
怒鳴ってしまったことにアルスは反省しようになったが、エミリはもう一度アルスの頬を叩いた。
パンと高い音が周りに響き渡ったあと、
「違うの……」
エミリはそう小声で言って、ぽろぽろと涙を流していた。
「私の事も考えてよ……」
アルスは、どこか彼女の悲しそうな顔を見てそっと彼女を抱きしめてどことなく彼女が言って欲しいことが分かった気がしてこう言った。
「ずっと一緒にいよう。何があっても……でも、俺まだ自信がないんだ。
タカノさんみたいに立派になれた気もしないし、エミリをミミさんみたいに幸せにできる自信がないんだ……
でも、俺頑張るよ。もっと強くなって、A級に冒険者になって……
その時にエミリに今言って欲しいことを言おうと思う。その時まで待ってくれる?
絶対、俺がエミリを幸せにするから……」
アルスの胸の中から、エミリが小さな声でこういった。
「分かったわよ。待つわよ……一緒にがんばろ、私もアルスがその伝説の勇者になるように支えるから」
そっと、腕を緩めるとエミリは笑みを浮かべてアルスを見つめていた。そして、エミリは唇を尖らしてこういった。
「絶対よ言ってよ。でも、間違ってたら、また黒焦げにさせるからね。待ってるんだからね」
アルスはそれを聞いて、エミリの頬を伝う涙を指でぬぐって彼女を見つめながらこういった。
「ああ。でも、もうあれは勘弁かな…」
アルスはそう言って、エミリに笑顔を見せると。ふと近い距離でエミリと見つめ合ってる事に気が付いてアルスはドキッとして急に脈が速くなって心臓の鼓動が体を伝って感じられるようになった。
思わず、顔をそらすとエミリがアルスの頬に手を置いてこういった。
「ヘタレ……」
エミリはそういて、少し不機嫌そうな顔を見せてアルスをからかうように少し微笑しながらそう言った。
アルスは顔を赤らめながらすこし、恥ずかしくなって思わず、
「し、慎重なんだよ!」
そう言って、アルスはエミリの方に顔を向けなおした。
エミリはそっと目を瞑ったので……アルスは少し周りが気になって周りを見渡した。
ーーよし、誰もいないな……これならーー
すると近くの物陰に隠れている、シンとショウタがいるのに気が付いてしまった。
二人は、思わずアルスと目が合ってしまい。驚いた表情をしながらも表情はアルスをからかうようににんまりとした下心丸出しの笑みを浮かべていた。
「あっ、やべ!」
シンの声が聞こえて、思わずアルスは叫んだ。
「もー邪魔すんなよ!!」
それを聞いて、エミリは顔を真っ赤にしてアルスから距離を取った。
アルスはエミリの手を引いてこういった。
「あっち行こうぜ……」
アルスはそう言って、予定していたところに逃げる様にエミリを引っ張って向かっていった。
エミリは終始恥ずかしそうに顔を赤らめたままだった。
アルスとエミリは、家族風呂の入り口のところで思わず顔を真っ赤にして硬直してしまった。もしかすると恥ずかしすぎて熱が上がり、湯気でも出ているような感じになっていた。
なぜなら、入り口のところで風呂上りと思われるタカノとミミがいるのに気が付いたのだが……
二人は抱き合いながら激しくキスを交していたからだ。
アルスとエミリにとってはあまりにも刺激が強すぎてもうこれ以上何も頭に浮かばなくなっていたのだ。
アルスとエミリはとりあえず近くの物陰に隠れて二人が立ち去っていくのを見送っていた。
その間もあの夫婦の熱い会話が二人の脳内に焼き付いてしまっていた……
あれが、大人のカップルなのかと二人は感じたのであったーーー
ラブラブすぎる二人を見送った後、アルスとエミリは声を合わせてこういった。
「「また、次の機会にいしましょ」」
二人は頷いて、手をつないだまま家族風呂を後にしていった。
アルスとエミリにばれてからも、後ろをつけていたシンは遠くからカチカチに緊張しきって動きすらぎこちなくなったアルスとエミリを見ながらため息を着いた。
「二人ともヘタレてるじゅんーーー」
アルス「な、な、エミリ……」
エミリ「な、なによ……まさか、あれをしたいとか言わないでよ。外でなんて恥ずかしいわ」
アルス「ご、ごめん。タカノさん達に大胆にで、ででででできないよ」
エミリ「とりあえず、落ち着きましょう。まだこの旅行は後何日もあるわけだしね?」
アルス「そ、そうだよな。段階を踏んでいこう」
エミリ「え、そうしましょう……」
シン「なるほどな、どっちもうぶすぎるからなかなか関係が進まないわけか。てかさ、ヘタレすぎせしょ中学生じゃあるまいし……」
タカノ「おいおい、シン。それはお前が言えたことか?思春期の学生みたいなノリで楽しんでたじゃねーかよ」
シン「え、タカ兄!?あれ、ミミの姉御とは?」
タカノ「本編終わってるだろ?R-18作品じゃないから続かねーんだよ。
おっと、それは裏事情で……ミミなら先に部屋に戻ったよ。それよりも次回の告知をよろしく」
シン「次回。タカノとショウタだって~まさかと思うけど……お腐れ系話か?」
タカノ「あのなぁ~。二次創作とか出される分にはオッケーって。おい、俺はそっちの趣味はねー!!」




